二十九話 かわいい子が赤面すると世界は平和になる
八重さんとの話し合いも終わり、その後自由になれるはずだったのに何故か強制的に格ゲーに付き合わされボコボコにされながら時間は過ぎ。時刻は六時を回った。
もうそろそろ遅いので、帰る八重さんを見送るために俺は一人で見送りに来ていた。お嬢様は今自室、『あとはよろしく』という事らしい。ハァ…
「じゃ、また来るわね」
「はい、八重様。おとといきやがれください」
「なんかいった?」
「いえ! 何も!」
あぶねぇ、一瞬首と胴体がさよならバイバイする走馬灯を見たぜ…
「ふーん、まぁいいわ。光のことよろしく、手ぇ出したら容赦しないからね?」
「分かってます」
すごい、怒ってるより笑ってる方が怖い人初めて見た。一周回って頭冷静になったわ。
「ならよし、じゃまたね」
そういって八重さんはクールに去っていった。かっこいい…いっ!?
なぜか急に脇腹に鈍い痛みがって…
「お嬢様? どうしてここに?」
痛みの正体は星影さんだった。なんかめっちゃ不機嫌そうに腕を組んで隣に立ってる。
「流石に見送りまで啓一人にさせるのはどうかと思って、降りてきたら誰かさんが鼻の下伸ばしてたってわけ」
おぉ、まだお嬢様にも良心というやつが残っていたらしい。ってそこに感心してる場合じゃない。
「いや鼻の下なんて伸ばしてないですけど」
「別に誰も啓がなんて言ってないでーす」
「いや今私とお嬢様しかいないですよね」
「マジレスはお断りでーす」
めんどくせぇ…しかしジト目がかわいいのでモーマンタイである。
「私というものがありながら他の女に鼻の下を伸ばすなんてねぇ?」
一転ニヤニヤしながら脇腹をうりうりしてくる星影さん。かわいいけどウゼェ…いや可愛いんだけどね。
「いや別に私とお嬢様付き合ってませんよね?」
言いながら悲しくなってくる…
「そうかもだけどさ、三年間好きだったのにそんな簡単に心変わりするの?」
本人の前で言うかそれ? 星影さんが振ったのに? いやまあめっちゃニヤニヤしてるから悪気がないのはわかるけど。流石に心に来ると言うか……
「そんな簡単に冷めるわけないでしょ。大好きなんだから」
やべっ、つい語気が強くなっちまった。…あれ? なんか顔赤い?
「どうしました?」
「えっと…そんな照れ無しの純粋な好意はちょっと……」
パシャ
「ってなんで撮ったの!?」
「…ハッ!」
お、俺は何を?
いつ誰が撮ったのかわからんがこの表情の星影さんは最大カラープリントして壁に貼っておかなくては!(義務感)
「け、消して! 消しなさい!」
「嫌です。いくらお嬢様の命令でもこればっかりは聞けません!」
「だーめ! 消して!」
「いーやーでーす!」
そうやって起こった争いは『予定がある時は事前に言う』という約束を条件に俺が写真を消す事で終結したのだった。
あれ、それって当たり前じゃね?
主人公の無自覚カウンター万歳!(まじで時間ないからこれで許して(>_<))




