二十六話 白飯×ルー=この世の神秘
「この匂いは…カレー?」
「はい、あたりです」
昼食を食べるためにリビングに入ったら、すぐ八重さんが聞いてきた。まぁわかり易いしね。
そう、今日の昼食はカレーにした。どうせ買い出しに行くなら多めに作っても問題ないやつにしたかったからね。カレーだったら作り置きしても問題ないし、なんなら一日置いたほうが美味しい場合もある。
あの現象ってなんで起きるんだろうか…?
そしてなにより一番重要なことは『ハズしにくい』ことだ。
大好きな給食ランキングで一位になっても不思議じゃないポテンシャルをカレーは秘めている(統計に基づいているような偏見)。
あと俺の得意料理でもある。まぁカレーって比較的簡単な部類だし、初めて作った料理がカレーの人も多いだろう。なにしろ切って煮るだけだからね。
俺もそうだし、作った回数が多いから自然とうまくなったって感じだ。
そんなことを考えながらカレーをお皿に盛っていく。軽くサラダも作ったし、文句を言われることはないだろう…いや別に褒められたくてやってる訳ではないが。
「はいどうぞ」
『いただきます』
そう言って三人で食べ始める。今まで二人だったから少し新鮮だなぁ。
「このカレー美味しいわね」
「そうでしょ! 啓の作る料理ってなんでも美味しいんだよ!」
「なんで光が得意げなのよ…」
やっぱり自分の作った料理を褒めてくれるのは嬉しいし、作ってよかったってなる。そして本当になんであなたが得意げなんですかお嬢様……かわいいから許します。
ってあれ?
そんなことを考えながらお嬢様の方を見ると何故かカレーの一口目を食べてそのままスプーンを口に入れたまま真剣な顔をしていた。
「お嬢様、どうかなされましたか?」
一瞬絵面が面白くて笑いそうになったが堪え、とりあえず聞いてみる。…口に合わなかったのかな?
「ねぇ啓」
「はい」
「啓がここにきてからカレー作るのって初めて?」
「はい、そのはずですが…」
「なんかね」
「はい」
「デジャブを感じる」
「はい?」
どういうこと?
「つまり、前にこのカレーを食べた気がするってこと?」
「そういうこと」
紛らわしいな…というより八重さんがきてからすごい会話が自然に進む。ツッコミもしてくれるし…シンプルにありがたい。
「調理実習でカレー作る時あったし、その時じゃない?」
「うーん…そうかも」
確かに俺と星影さん三年間クラス一緒だったから全然有り得るけど…その時班一緒だったけ? なにしろ一年生の時の事だったから記憶が曖昧だ。
「ご馳走様。食器洗おうか?」
「お粗末様です。シンクに置いておいてくれたら十分ですよ。」
最初に食べ終わったのは八重さんだった。俺は食べるスピードはゆっくり目だし、お嬢様は実は結構な大食いだったりする。まぁ美味しそうに食べてくれるのは嬉しいしね。あとかわいい。
そして八重さんの気遣いが心に染みる…人との会話ってこんなにあったかかったのか。
別にお嬢様が冷たいとかそういうにではないが、いかんせん心が鎮まらないのでこういう何気ないやりとりが貴重に感じるのだ。
そんな感じで俺が一人和んでいると…
「そうだ、後で話があるからあんたの部屋集合ね」
「ハイ!?」
どうやら和やかな時間が去るのはあっという間らしい……
夜中にご飯の描写すると夜食が食べたくなる定期。
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では、またね〜。




