十一話 電車に揺られて(前編)
星影邸に向かう電車の中で、俺と星影さんは会話を弾ませていた。
「ねぇ、引越しの荷物ってどうしたの?」
「今日の朝業者に取ってきてもらったよ」
「向こうについてちょっとしたら届くはず」
そんな他愛のない会話をしているが、俺と星影さんの間には拳三つほどの間が空いている。
「もうちょいこっちきたら」
「無理です」
「即答かつ敬語......」
できるわけないんだよなぁ。もうね、好きな人と隣で電車に揺れている時点で俺の理性は蒸発寸前、これ以上近づこうものなら鼻血が出て出血過多でお陀仏だ。
「まぁそういうところがあるから安心できるんだけどね」
「なら良かったです」
「敬語続けるんだ......」
姉上の英才教育を受けてますからね。基本同い年もしくは年上の女性には基本敬語。しみついちゃってて意識しないと外せないことが多い。
「あのさ......なんでもない」
「急にどした?」
「いや、大丈夫」
うん、下手くそすぎない?誤魔化すの。
もうちょっとないのかね、別の話題降るとか。まぁ星影さん育ち良さそうだし、嘘つくの下手なんだろうな。それは一緒に暮らす上ではだいぶやりやすい。でもそのままだとちょっと気持ち悪いな。
「ハッキリいってくれた方がありがたいかな」
「う、うん。そうだね。......白原君は、ご両親とはそんなに似てないね」
「確かにね〜」
星影さんの言った通り、俺と両親はそんなに似ていない。
顔つきが似ていないだけならまだわかるが、両親が茶髪なのに比べ、俺は黒髪。言われないと親子とは絶対に気付けないだろう。というより、血が繋がってるか怪しいレベルで似ていない。
姉はお母さんそっくりだから尚更だ。
会話の流れで聞いてみようと思ったけど、その話題が俺を傷つけるかもしれないって思ったって感じかな?
「別に養子ってわけでもないし、隔世遺伝じゃない?」
「へー」
そういうと同時に星影さんはどこかホッとした様子。
だが、俺は両親とは血が繋がってはいないんじゃないかと思っている。根拠は俺にだけ超能力があること。
このことについて姉と話したとき、姉は持っていないと断言した。嘘の可能性もなくはないが、姉は基本嘘をつかないし、何よりあの場面で嘘をつく理由がない。
両親からも特になにも言われていないことからも、そうだと思われる。
ま、別にそうだからと言って何か他の家庭と変化があるわけではない。両親の愛情に俺と姉で差があることもないし、能力のことを知ってからも姉は変わらず優しい。なんなら家族の絆は一般家庭より深いまである。
え、じゃあなんでそんなに父に冷たいのかって?
いや、父と息子のイチャイチャとか需要ある?そういうこと。
「白原君はこれからのことどう思ってる?」
「急だね」
「役得とか思ってる?」
ゴフッ!
え、なにこの人。しんみりした空気の中でストレート打ってきたんだけど?
「まぁ、思ってはいる」
「正直だね〜」
「ここで嘘ついてもしょうがないしね。」
「ラッキースケベとか起こるかな?」
「だからそれあんたのセリフじゃないって」
なんなの、この人。学校と全然違うじゃん。
「例えば......白原君が間取りを把握し切れてなくて、廊下でばったりとか」
「うん......うん?」
「他にも、私たちの部屋って隣じゃん?どっちかが寝ぼけて相手の部屋に入ってベッドに潜り込むとか」
いや解像度が高い!
「やけにリアルだけど、なったことあるの?」
「いや、ラノベに書いてあった」
「いやそっちかい」
そういや星影さんが隠れオタクなの頭から抜けてた......部屋でついてたのも4年前くらいのゲームだったし。
「というより、星影さんは不安とかないの?」
「どうして?」
どうしてって、さっき自分で言ってたじゃん。
「いやだからラッキーs、スケベとか?」
「前々から思ってたけど、白原君ってだいぶ初心だよね」
あなたが初恋ですからねえええぇぇぇ!?
「不安はないよ」
「なんで?」
「信頼してるから、白原君のこと」
あっ(昇天)
初の前後編構成です。書きたいことが多すぎるんじゃあ!
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