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青春狂想曲  作者: 伸近藤
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8

親から弁当を作ってもらった事の無いジンは、周りの行動に驚いた。

ジンは流しで、真理にもらった弁当箱を洗っていたが、誰一人洗う者はおらず、周りは律儀なヤンキーにおどろいていた。


「ジン、弁当箱を洗うやつ初めてみたよ!」


トビが後ろから話しかけてきた。


「おう!トビ!」

「てかよみんなそのまま持ち帰ってるのか?菌繁殖しちゃうべ!」


トビが腹を抱えて笑い、廊下で膝をついた。


「勘弁してくれよ!」

「ヤンキーのくせに真面目かよ!」


トビは、笑ながら合間合間呼吸を整えながら話していた。


「みんな、汚ねぇな!」


その言葉にトビは、さらに笑った。


「てか、ジンが弁当とは珍しいな!」


ジンが自慢げにトビに話す。


「よくぞ聞いてくれた!さすがトビ!俺の彼女候補、立花真理が作ってくれたんだぜ!」


トビが息を呑み、笑っていた顔をしまい込む。


「お、お前、この学校のトップ5女神に…」

「さすが、英雄…」

「俺が、知っているのは3女神…」

「佐藤麻由子、原田恵理子、立花真理…」


そんなに有名だとはジンも思っていなかった。

昼休みの終わりを告げるチャイムで2人の会話は終わり、また退屈な授業にジンは参加した。

退屈な授業が終わり、ジンは入学して初めて掃除の時間を体験する。

各クラスが割り振られている掃除場所を掃除する決まりになっていた。

ジンは特別学級の廊下が担当だった、同じクラスメイトはジンに声をかけることもなく、ジンは気だるそうにホウキを片手に廊下をはいていた。

特別学級のヤスくん、胸元には手書きのネームにやっちゃんと書いてある。

歩き方はびっこをゴミ箱を一所懸命に持ち、ゴミ捨て場まで運ぼうと歩いていた。

「ちょっとどいてぇ〜」

「ちょっとどいてぇ〜」

と繰り返しながら歩くやっちゃんに同じクラスの男子が足をかけた。

鈍い音と同時にやっちゃんがゴミ箱と共に廊下に横たわる。

男子も女子もクスクスと笑い、担任の奥山が見て見ぬふりをする…


ジンがホウキを片手にやっちゃんのこぼしたゴミをゴミ箱にいれ、やっちゃんの肩を持ち、立て直す。

やっちゃんが驚いた様子で「ありぃがぁとぉ」とおぼつかない言葉で感謝していた。


「おい!コラ!タコ!」

「テメェが足かけたんじゃろ!」

「詫びろや!」


九州出身の父のなまりでクラスメイトの男子にキレるジン。


「僕じゃ無い!僕じゃ無い!」


ととぼける男子にジンは、拳を強くにぎり、左頬に思い切りその拳をねじ込んだ。


「やめろや!産まれつき個性を強く持って産まれた人間に嫉妬してんなや!しゃべーことすんな!」

「学校で何を学んでんだよ!」

「先生は何を教えてるんですかぁ?」


ジンが見て見ぬふりをする奥山をキツく睨む。

言葉を失う担任と、左唇から血を流す男子、掃除中弱者を笑者にしていた周りが息を呑む。

そんなジンに関わることも無く、やっちゃんはゴミ捨て場にスタスタと向かっていた。

担任の奥山が自分の立場を守る為に、「ほらみんな掃除、掃除!」

とその場をごまかす。


ジンの中ではやっちゃんも自分も同じ存在に思えていた。

周りと溶け込めず、はみ出し者の自分とやっちゃんは同じだった。

力もなく、上手く自分を表現できなくても懸命に生きているやっちゃんの強さにジンは敬意を抱いていた。

そしてそんなやっちゃんを小馬鹿にする周りがあまりに惨めで、やっちゃん以下に見えて仕方なかった…


「じんちゃん!」


後ろから甘い女神の声と共にジンの怒りが消え去る。


「やっぱ君は素敵だね!」

「私の彼氏になってください!」


ジンがポトっとホウキを落とし、女神を見つめた…


「俺、真理さんにふさわしいですか?」

「俺で後悔しないですか?」


短いスカートと初恋の風がスカートを揺らす。


「どっちなの?」

「私初めての告白何だけど…」

「ちゃんと答えてもらっていいかな?」


孤独だったジンの世界に光が差し込む


「出会った時から毎日真理のこと考えない日は無かった。」

「今日から俺の女、彼女になって下さい。」


真理がクスクス笑い「はい!」とかえした。


「まさか告白したのに、告白で返されるとわな〜やっぱじんちゃん最高だよ!」

「特別学級の前をたまたま通りかかってよかった!」

「本当の強さは力だけじゃなく、他人と違う道をちゃんと持って無いとね!」

「私の方がじんちゃんに夢中になりそうだよ!」


女神が彼女になるきっかけをくれたやっちゃんに心から感謝するジンがいた。


「これからよろしくっす!」


ジンの言葉に真理がムスッとする。


「敬語なしね!」

「私の彼氏でしょ!」

「今日デートしよう!」

「今日部活サボるから終わり次第校門前ね!」


ジンがニコリと笑い、頷く。


「わかった!校門前で待ってるわ!」


ジンはホウキをぶん投げ、教室にカバンを取りに向かった。

まだ生徒が掃除する中、ジンはカバンを片手に校門前で真理をまっていた。

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