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アウグスト戦記   作者: 青い眼の兎
序章
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初めての眷属


「眷属化・・・・そんなスキル聞いた事がない・・でもアイリ-ンが治るなら・・・」


「確かに魔族には状態異常の魔法は効かないと聞いた事はあるけど・・・・」



暫く彼女達にも考える時間は与えないとな



「さて、そこの娘さん聞いていたか?」


この部屋にいるもう一人の重病者に俺は眼を向ける。


その寝台には、まだ幼いと言っても良い瘦せこけた小柄な灰色の髪の少女が横たわっていた。

頬はコケ、顔色は死人の様に青い、そして何より顔には無数の灰色の歪んだ花のような痣が出来ている。

おそらく身体中にそんな灰色の痣が出来ているんだろう。


石花病

魔力の高い人間が罹りやすい病気とされている。大きな魔力を持って生まれた人間が稀に発病する、大きな魔力が内蔵の機能不全を起こす事が原因と考えられている。発病すれば徐々に手足が動かなくなり末期には灰色の痣が身体中に現れその痣がまるで石花のように見える為その名が付けられた。発病数年で死に至る。未だ特効薬は発見されていない。


彼女が罹っているいる病気は恐らくこれだ。何故俺が知ってるかと言えば以前プレイした君主でその病気に罹っている患者に会った事があるからだ。

その患者と全く同じ症状が彼女にも出ている。


もう身体が動かないのだろう、彼女は懸命に首だけを動かしてこちら観た


少女の瞳からは諦めと僅かばかりの生への執着がみえた。


「君の名前を聞いてもいいかい?」


「・・・・・ル・・な・・・」


「そうかルナか、いい名前だ。」


俺はルナの小さな手をそっと握ってその手を見る

細くてささくれだって、マメだらけの手だ


「働き者の立派な手だね。君は随分と頑張って生きてきたんだね。」


「僕はね、君の様に頑張ってきた子がその頑張りが報われずに不幸になるのが大嫌いなんだよ。」


「だって、頑張って来たならその人は幸せになるべきだと思わないかい?僕は何よりハッピーエンドが好きなんだ。」

瞳から涙を零れさせながら、少女が少しだけ微笑んだように見えた


「だからさ、僕と一緒においでよ。君の頑張りがちゃんと報われるように僕も頑張るからさ。」


「僕の眷属に為れば君の病気は良くなる。ただ忠誠という形で君の自由を縛る事となってしまう。それでも君が生きたいと言うなら僕は君にこの力を使うよ。返事を聞かせてくれるかい?」


少女の涙溢れる瞳には迷いは無かった


「あ・・・なた・・・・と・い・きた・・・い!」


途切れ途切れに言い切った、その少女のか細い声には確かな熱量と生への執着が感じられた。


「判ったよ・・・・」


俺の体内から、魔力がゴッソリ彼女の手を通して抜き取られるのを感じた


その変化は劇的だった見る見るうちに、淡い光に包まれながら彼女の血色の悪かった顔色が良くなり、顔中に在った痣が消えていく、枯れ枝の様だった手足も肉付きが良くなり女性らしい柔らかさと潤いを感じる。


「あぁぁん・・・・」


顔を朱に染めて恍惚とした表情を浮かべる少女


表情や声からは苦しい思いはしてないようだ。


それどころか若干女の表情をしているような・・・・眷属になるのって気持ち良いのか?


まぁ『地獄の苦しみ』とかよりはいいですけど・・・子共にそんな女の表情させるのは罪悪感が・・・



やがて光が収まると其処には、小学生位の見た目から高校生位の見た目になった銀髪の俺と同じ赤い眼をしたとんでもない美少女がいた。


「・・・・・・・まるで別人・・・だな」

「・・・まさかこれ程の変化が・・・・これなら姉さんも・・・・」


恐る恐る寝台から起き上がる少女、身体の調子を確かめる様に手を握ったり開いたり顔に触れたりしている。


「・・・・・・・・・・これが・・私?」


そして部屋に有った鏡をエイリ-ンに渡され、若干戸惑いながらも鏡をみた彼女はしばし呆然としていた。


「ええ、間違いなくあなたよ。とっても美人さんになったわ。良かったわね!」


「うん。とっても綺麗になったね。見違えたよ。」


「ルナ身体の調子はどう?」


「くぅぅぅぅぅぅ~~」


俺の質問に答えたのは彼女の可愛らしい腹の音だった。

まぁ暫くロクな物食べてなさそうだし、さっきまで病気で先程の食事でもほとんど食べてないみたいだからな。まぁ食欲が出てきたって事は良い事だろう。


「ハハハ、調子はよさそうだ。ちょっと遅い時間けど食事にしようか。」


顔を朱に染めて恥ずかしがるルナの近くにあった机に幾らかの食料を収納から取り出し並べていくのだった。





「・・・・・で、君のお姉さんはどうする?」


ルナを眷属にした後、俺達は椅子や寝台に腰をかけて穏やかな時間を過ごしていた、先程迄の悲壮感はなかった。俺達の視線の先には・・・・・

幸せそうに俺の出した食料をがっついているルナが、余程お腹が空いていたのだろうかなり多めに出した食料がもうほとんど残っていない。


「こんな奇跡を見せられたら・・もう答えは決まってますわ。ただ・・・・」


優しい眼でルナを見ていた、エイリ-ンが俺に真摯な眼を向ける


「ラルフさん・・・いえラルフ様、1つだけこれは条件ではなくお願いなのですが・・・・姉と一緒に私も貴方様の眷属にして頂けませんでしょうか?」


「出来る事なら私もお願いしたい。」


そういって頭を下げる2人、その眼には確かな決意と覚悟が込められていた。


「ん?眷属にするのは構わないけど、さっきも話したと思うけど君主と言っても領民1人もいないし領地も最果ての森の中んんだけど。保護するにしても別に眷属にならなくてもちゃんとここまで関わった以上はちゃんと面倒はみるよ?」


「ラルフ様、私と姉の家は元々は中原でラルフ様と同じく君主をしておりました。メリッサは家に仕えていてくれた家臣の娘です。家は代々女神様を信仰し民に優しい統治を行ってきたとの自負は持っております。ですがこの戦乱の時代には抗えず、我が家は滅びました。私達は危険を予期していた父が予め領外にに逃がしてくれた為に命だけは長らえる事が出来ました・・・・ですが父や母は・・・・」


彼女の美しい瞳に涙が滲む


「苦しいなら無理に語る必要は無いぞ。」


「いえ貴方様には聞いて置いて欲しいのです。その後国という寄る辺を失った私達は、生きる糧を得る為に冒険者となり中原からここまで逃れてまいりました。何処かに居を構えようとも考えましたが追手の事を考えると恐ろしくて、それも出来ませんでした。これでも国を失ったばかりの頃は両親の仇を討つことや、国の再興なんて事も考えていたんですよ、人々の為に私達にも出来る事があるはずだと。それが、次第に逃げ延びる事や生き残る事しか考えられなくなって、最後には小さなプライドも尊厳もそして最愛の姉すらも・・・・・」


エイリ-ンは一度言葉を止めてゆっくりと眼お閉じる、まるで自分の想いを再度確かめるように


「・・・先程のルナとのお話心打たれました、私達は此処まで逃れる道至において様々な不幸を見てまいりました。理不尽にその日の糧を奪われる者、家族を奪われる者、住む家土地を追われ命すらも容易に奪われる者、この世界には理不尽が溢れております。頑張った物がちゃんと報われる世界ではありません。ですが貴方様がこんな世界を変える為に働かれると言うのなら、ちゃんと頑張った者が報われる世界を目指して頂けるというのなら、、、私はそのお手伝いをさせて頂きたいと思います。一度は野盗の奴隷にまで堕ちた身です、貴方様の理想の果てに無残に屍を晒そうが悔いはありません。どうか私も貴方様の眷属の1人として迎えて頂けるようお願い致します。それに・・・・・この姉破天荒ですけど、意外と寂しがりなんです、自分だけ違う種族に変わっていたらきっと少し寂しがると思うんです。」


最後にそう言って彼女は微笑んで頭を下げた。


その微笑みは一瞬ドキリとしてしまうぐらい魅力的なものだった。


彼女達の決意と覚悟は受け取った、ならば後は俺がそれに応えるだけだ


今日は朝に施設を建設して以来大きな魔力を使う施設は造ってはいない、先程ルナを眷属にする前にはほぼ魔力は全回復に近い所迄回復していた。ルナを眷属にすのに必要だった魔力は1300、残り3人を眷属にするには少し魔力が足りないが魔力ポーションを飲めば魔力はなんとかなるだろう。


問題は意識の無いアイリ-ンの同意をどうするかだ、眷属化するには双方の同意が必要だ、ルナは身体は動かせなかったが意識があり俺の眷属化にちゃんと同意してくれた。

しかしアイリ-ンには意識が無い、俺の問いに同意する事も出来ないのだ。


ただ俺の感覚ではいけると思っている。今更出来ません共言えんしな


俺はアイリ-ンの下に向かう、その眼は相変わらず虚空を見つめるばかりで意思は感じる事は出来ない


「アイリ-ン オールポート汝の願いにより其方を我が眷属に加えん。了とするならば沈黙を持って我はそれを答えとする」

俺の向かいで真剣な眼差しで儀式を見つめていた、エイリ-ンとメリッサが

それでいいの!?それって詐欺じゃない!?って顔で俺を見て来るが・・・無視だ。


これしか方法が無いんだ、少々インチキは仕方がないだろ。現に数秒の沈黙の後に俺の身体からゴッソリと魔力が抜かれるのを感じアイリ-ンの身体が淡い光に包まれる。


意思を感じさせなかった瞳に徐々に意思が宿っていき瞳が赤味を帯びていく、やがて光が収まると数回瞬きした後にゆっくりと辺りを見渡す。

そして枕元に立っていたエイリ-ンとメリッサに気が付くと


「アラ、どうしたの2人共そんな顔をして、相変わらず泣き虫なんだから。」

そう言って2人に優しく微笑んだ。


「あの・・・・思わず膝を付きたくなる程のオ-ラを纏っていらっしゃる貴方はどちら様でしょうか?」


泣きながら抱き着く2人を優しくあやしているアイリ-ンを静かに見守っていると

アイリ-ンがおずおずという感じにで俺に声をかけてきた。


「初めましてだな。ラルフという、よろしく頼む。事情は・・・いろいろあるが詳しい話は彼女達から聞いてくれ。」


特に眷属云々という話は俺からは説明しずらい、しかも本人の同意も実質無しだったしな。

それにキャンセルは不可能なんです。すみません。


落ち着いた2人に、これまでの過程を聞くアイリ-ン時折苦し気に顔を歪める事もあったが、取り乱す事も無く落ち着いて話を聞いている、記憶喪失では無く一時の記憶の欠如なのだろう。

やがて話を聞き終えると彼女は寝台から降り俺の前に優雅に膝を付いた


「先程は失礼致しました。アイリ-ン オールポートと申します。この度は妹達を助けて頂き誠にありがとうございました。しかも野党に穢され心を壊され、最早妹達の重しにしかなり得なかった情けない私まで救って頂いた御恩は一生忘れません。この御恩はこの一生を掛けて返していく所存で御座います。どうか末永くお仕えすることをお許しください。」


未だ眷属では無いエイリ-ンとメリッサにアイリ-ンに習い共に膝を付く


俺の横では食事を終えたルナが『私もしたほうがいいの?』と問う様な視線を向けて来るので


視線で『お願いだから止めて!』と伝えておいた


その後エイリ-ンとメリッサににも約束通り眷属化を行い、長かったこの世界3日目が終わった。




思えば今日俺、初めて人を殺したんだな。


その事に眠る直前まで思い至らない自信にビックリだわ・・・やはり精神がこの身体に引きずられてるのか?まぁ嫌というよりも必要な変化とも感じるが・・・眠い・・明日も忙しそうだ・・寝るか・・・


☆3日目終了時点国内状況


領名:最果てのの森

君主:ラルフ【平民】 眷属:4人

人口:0→4人

金貨:0 (0/月)→10077(0/月)

食料生産:252(275/月)→355(275/月) 

兵士:0人

防御施設:無し

各種施設:◆女神の祠×1◆住宅(風呂付)×1◆倉庫(中)×1◆魔力ポーション製作所×1

     ◆ポーション製作所×1 

農業関連:◆農地×5 


※ 盗賊から奪った金貨と食料が増えています 食料+103 金貨+10077


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