ルナという少女
ルナのお話です。希望が多ければ今後他の娘も書くかもしれません。
私は魔境の森の近くの小さな村の貧しい農家に生まれた
物心がついた頃からいつもお腹を空かせていた事を覚えている
食べる為に一生懸命に働いた、働けば少しだけ食事の量が増えたから
私にも弟妹が生まれた一生懸命面倒を見た、弟妹の笑顔があまりにも可愛かったから
それからは弟妹の分もと姉の私が頑張らなきゃと今までより頑張った、夜明けから暗くなるまで働いた 毎日毎日動けなくなるまで働いた
そう頑張って来た 努力してきた 一生懸命生きてきた
そんな私が11歳になったばかりの頃私の身体に異常が起きた、
手足が震え力が入りにくくなってきたの
村の薬師が言うには石花病っていう病気らしい
両親は私に詳しい事は教えてくれなかったけれど、
悲しそうな両親の顔を見ると、きっと治る事はないんだろう。そう思った
手足が不自由になっても私は頑張ったんだ
鍬が持てなくなっちゃったから鍬と手を結んで振るったし
何度もこぼしちゃったけど水汲みも頑張った
杖を突きながら森で薪木を集めてきた
頑張った、自分でも本当によく頑張ったと思う。
でももうダメみたい、もう頑張れない、だって身体がどうやっても動かないんだもん。
13歳になった私はベットから起き上がれなくなり、、、そして売られた。
たまたま村に寄った奴隷商に、後から聞こえてきた奴隷商の愚痴は「半銅貨2枚でも高いわ。」と言うものだった。
どうやら私は半銅貨2枚で売られたらしい。
パン1つ買えるか買えないかぐらいの価値しか私には無かったらしい。
それでも奴隷商にはその価値すらなかったと言われた。
働く所か動く事も出来ないんじゃ仕方ない。。。そう思うようにしたけど
その日はとても悲しかった。
涙が止まらなかった。
頑張ってきたのに 必死に頑張ってきたのに
私は・・・なんの為に頑張ってきたんだろう・・・・
でも・・・・もう頑張らなくてもいいなら・・・・・・
もう・・・・・・いいかな。。
そんな風に考えてたら、私と4人の女性が乗った奴隷商の馬車が急停止した
外からは人の悲鳴や金属のぶつかり合う音が聞こえてくる
私はもう半ば諦めてたから怖くはなかったけど、他の女性達は不安そうな顔をしていた。
やがて外が静かになり見たことの無い粗暴そうな男達が私達の馬車に入って来た
どうやら私達の乗った馬車は盗賊に襲われたらしい。
私を買った奴隷商は死んだらしく、私達はこれから盗賊のアジトに向かう。
そう言って髭と垢に塗れた男が言っていた。
奴隷だろうが盗賊の戦利品だろうが、今更私にはどちらでもいいことだどうせ何もできないこの身体
一欠けらパンの価値すらない私なのだから。
ただ・・一緒に乗っていた他の女性達の事は心配だ、こんな私に気遣って色々世話をやいてくれた優しい人達だ。
どうか彼女達だけでも不幸が訪れませんように。
思わず長年の習慣で闘神様に祈りを捧げようとしたけど止めた・・・だって今まで散々お祈りしたのに私の願いを聞いてくれなかった闘神様に祈っても無駄だと思ったんだ。
盗賊達に連れて来られた地下の部屋はそれはもう酷い場所だった
ボロボロの女性達が裸で鎖に繋がれて粗暴そうな男の人達に酷い事をされていた。
みんな絶望した顔で震え泣いていたし、中には私より小さな妖狐族の女の子までいた。
私達がこの部屋に付いてから僅かなうちに過酷な環境に耐えられず死んでしまった人や心が壊れてしまった女性もいた。
そんな地獄の様な光景を私はただ見つめる事しか出来なかった
だってもう身体も指先すら動かせない、ただ殺すのも面倒だからと、ただ寝かせられてるだけの私なのだから。
それから2人めの女性が亡くなって、次こそ私の番だと思ったその日突然に事態が急変した。
いつもの通り皆に酷い事をしていた男達が突然消えたんだ
皆が何が起きたかわからず混乱してたら
知らない男の人の声が聞こえた
「驚かせてすまない。君達を助けに来た。」
とても澄んだ優しい声だった
何とかその声の主を探そうと必死に首を動かす
瞳に写ったのは漆黒の髪のとても綺麗な顔をした若い男の人だった。その深紅のまるで宝石の様な瞳は、ただとても優しそうな色を浮かべている。
その男の人を見た瞬間私は安心した、何故だかこれで皆助かると確信できたからだ。
私以外だけどね。
その私の確信は正しかった、そのラルフと名乗った男の人はたちまち悪い人をやっつけてくれて、私達を解放してくれて美味しい食事まで用意してくれた。
私はこんな身体だからあまり食べれなかったけど久々の食事は確かに美味しかった。
皆嬉しそうにしてたから私も嬉しい。
ご飯の後私は少し豪華な部屋の寝台に寝かせられた。
隣には蒼い髪の綺麗なお姉さんも寝かされている、あの心が壊れちゃったお姉だ。
何人かの女性達が私達を訪ねて見舞ってくれたが、私もお姉さんもろくに対応できない。
残念だけどしょうがない。
やがて隣のお姉さんと似た顔と髪をした綺麗なお姉さんと、凛々しい美人なお姉さんが見舞いに入って来て、寝てるお姉さんを見て悲しそうにしていた。
私は心はまだ何とかなってるけど身体が動かない、お姉さんは身体は大丈夫だけど心が壊れちゃってる、
どうしてこうなっちゃたのかな?
私もお姉さんもそんなに悪い事してないよね?
少なくても私はただ頑張って生きてきただけなのに・・・・
なんか考えてたらまた悲しくなってきちゃった・・
そんな悲観的な事かんがえてたら
あのラルフさんが見舞いにやってきてくれた
眼が合った私にも微笑んでくれる
何故かやけに嬉しい。
見舞いに来てたお姉さん達がラルフさんにお礼を言ってた、そして寝てるお姉さんがどうしてこうなったか話していた、うん確かに良い人だ、出来れば助かって欲しい。
でも話してるお姉さんはどこか諦めてる感じがする、なんとなく判る心が壊れちゃった人治すのってきっと大変なんだと。
話しながら泣き出しちゃったお姉さんにラルフさんが一つの提案した
それは心の壊れたお姉さんが元通り元気になるかもしれない。という信じられない提案だった
信じられないお姉さん達にラルフさんはラルフさんの持つスキルを丁寧に説明していた
そのスキルは眷属化というスキルらしい、なんでも契約するのに互いの同意とラルフさんの魔力が必要らしいが、契約するとラルフさんと同じ魔族になり魔族に成ればその特性である【状態異常無効】の効果によりお姉さんの心も治るだろうという事だ。その代わりに元の種族には戻れない事とラルフさんに忠誠を捧げてしまうようになってしまうとラルフさんは話していた。
あれ?それってあまりデメリットに感じないのは私だけかな
それに・・・・・もしかして・・・
魔族に成れば私の・・・・・・・病気も治るのかな?
でもラルフさん私なんか眷属にしたくないよね・・・・でも
「さて、そこの娘さん聞いていたか?」
ん?あれ?私?なんで?突然ラルフさんに話しかけられて混乱する私。
ラルフさん私の寝台のすぐそばで膝を付いてその綺麗な深紅の瞳で私を見つめる
あの・・・距離なんか近く無いですかラルフさん?
「君の名前を聞いてもいいかい?」
必死に声を絞り出してラルフさんに答える、それでやっと絞り出した声は蚊の鳴くような小さくて掠れた声だった
「・・・・・ル・・な・・・」
「そうかルナか、いい名前だ。」
やっぱりこの人良い人だな・・・私の名前を褒めてくれた
そして私のカサカサの傷だらけの手を優しく握りしめてくれた
とても暖かい手だった
私の手を握りしめたラルフさんは優しい声で話し出した
「働き者の立派な手だね。君は随分と頑張って生きてきたんだね。」
「僕はね、君の様に頑張ってきた子がその頑張りが報われずに不幸になるのが大嫌いなんだよ。」
「だって、頑張って来たならその人は幸せになるべきだと思わないかい?僕は何よりハッピーエンドが好きなんだ。」
自然と涙が零れてくる、ラルフさんの優しい声にその言葉に、そして今まで頑張ってきた事が無駄じゃなかったんだと思えて
「だからさ、僕と一緒においでよ。君の頑張りがちゃんと報われるように僕も頑張るからさ。」
「僕の眷属に為れば君の病気は良くなる。ただ忠誠という形で君の自由を縛る事となってしまう。それでも君が生きたいと言うなら僕は君にこの力を使うよ。返事を聞かせてくれるかい?」
あぁぁ生きたい!ラルフさんと行きたいです!迷いなんか微塵もあるはずは無い、私はラルフさんに出会う為に今まで頑張って来たんだとすら思える。病気も治って、頑張ったら報われる世界でこんな素敵な人と生きて行ける・・・・これ以上の幸せはきっと無い。
私はありったけの力を振り絞って叫んだ
「あ・・・なた・・・・と・い・きた・・・い!」
叫んだと言っても出たのはか細い近くのラルフさんにやっと届くかどうかの掠れ声・・・・でも良かった
ちゃんと伝わったみたい
「判ったよ・・・・」
ラルフさんはそう言うと握られたラルフさんの手を通して私の身体に何か温かい物が流れ込んで来るのを感じた。そして私は暖かい優しい光に包まれた。
それと同時に身体からずっと私を苦しめてきた、痛みや痺れ痒みが徐々に消えていくのが判る
身体が軽くなっていき手足の感覚が戻って力が入る様になってきている。でも・・・・
「あぁぁん・・・・」
思わず変な声でちゃった、だって身体が熱くて、なんかとても心地良いんだもん
やがて光が収まる頃には私を悩ましていた不快な症状は綺麗に身体から抜け落ちて、それに健康だった頃にも感じなかった程に身体が軽く感じる。
ホントに・・・・なんだか生まれ変わった?みたい・・・
恐る恐る手足を動かしてみる・・・・さっきまでは指一本動かせ無かったものが・・・・・あぁぁぁ・・・動く・・・ホントに動かせた!
「・・・・・・・まるで別人・・・だな」
、
「・・・まさかこれ程の変化が・・・・これなら姉さんも・・・・」
お姉さん達の驚愕した声が聞こえるが今はそれどころじゃない
これならきっと・・・私は全身に力を込めて寝台から起きようと決心して、そして私の試みはあっさりと成功してしまった。思った以上に軽い身体にビックリしていると、蒼い髪のお姉さんが私に部屋にあった鏡を渡してくれた。
う~~これだけ身体に劇的な変化が有ったんだから、やっぱり容姿も変わってるのかな?
勿論受け入れるけど、出来れば角が生えてたり、鱗塗れたなのは慣れるのに時間がかかるかも・・・
ラルフさん普通の人族に見えるし・・・大丈夫だよね?
若干戸惑いながら鏡を見ると、鏡に写ったその姿に私は唖然としてしまった
「・・・・・・・・・・これが・・私?」
鏡には涙と鼻水に塗れてはいるがそれを差し引いても十分に美しいといえる紅い眼をした美しい少女が写っていた。灰色の醜い痣どころか元々有った染みなども綺麗に消え去っている瑞々しい美しい白い肌に
ラルフさんに少し似てる美しい朱い瞳・・・・・まるで別人だ。
「ええ、間違いなくあなたよ。とっても美人さんになったわ。良かったわね!」
「うん。とっても綺麗になったね。見違えたよ。」
綺麗なお姉さん達がが褒めてくれるのは素直に嬉しいな
「ルナ身体の調子はどう?」
心配そうに聞いてくるラルフさんに私が答えるより先に私の身体が返事をする
「くぅぅぅぅぅぅ~~」
う~~ぅ、そんな風に健康アピールしなくてもいいじゃないの!せっかく身体が元に戻って感動してたのに、もう少し余韻に浸っていたかった。
「ハハハ、調子はよさそうだ。ちょっと遅い時間けど食事にしようか。」
笑わないでラルフさん!だってさ暫く真面に食べれなかったんだもん。お腹も空くよ~~
ラルフさんは笑いながら近くの机に沢山の食べ物を出してくれた。どうやって出してるのか聞いたら、もう私も使えるから後で教えてくれるって、なんか楽しみだ。
その夜の食事は私が人生で食べてきた中で一番美味しい食事だった。恥ずかしいけどガツガツと沢山食べちゃった。私が食事にガッツいてる間に寝てたお姉さんもラルフさんに眷属にして貰っていた。起き上がったお姉さんを見て他のお姉さん達が涙を流して喜んでいた、ほんと良かったね。
お姉さん達がラルフさんに膝を付いて御礼を言って、なんか忠誠を誓ってる
あれ?私もそうゆう事したほうがいいのかな?
ラルフさんを見ると眼が合った、その眼は止めてくれ!って言ってる気がする。
そうだよね、ラルフさん見掛けと違って結構気さくな人だもんね。
なんかそういうの苦手そう、私もだけど。でも・・・・さすがにラルフさん呼びは不味いかな・・・
うんラルフさんは私達にとって一応偉い人だから主と呼ばせてもらおう~~♪
結局他のお姉さん達もラルフさんの眷属となって、そして私は新しい家族を得た。
魔族に成ってから感じるのは、主はなんか特別な存在で私にとって使えるべき王で有り、尊敬すべき父で有りそして愛すべき・・・っ存在だ。その感情は主程では無いが同じ魔族となったお姉さん達にも感じる。なんか不思議よね、皆出会って間もないのに・・・今ではほんとの両親や弟妹達すらも超える親愛を感じてしまっている。
私って・・・こんなに薄情だったのかな?
うん・・・・・・・でも・・・・前の私は死んだんだ、きっと今の私は主の眷属として新たに生まれ変わった新しいルナなんだ。そう考えると心にストンと嵌って落ち着いた。
この先機会が有れば前の家族も助けたいとは思う、でも今はこの新たな主と姉達と一緒に頑張って生きていきたい。
私はこれからも精一杯頑張るから、主様どうかこれからよろしくお願いします。