クライド ダーフィールド
5日目
「・・・・・あれ・・・・に!」
「・・・っと・・・・来て!」
「・・んな・・起きて!」
「・・・ん?なに・・私頭・・・痛いのよ! まだ寝かせてよ!」
ん・・・・・・・・・・・・?
なんだか・・騒がしくないか?
昨日遅かったから・・・もう少し寝かせて・・・・
寝ぼけた頭でそんあ事を考えながら2度寝しようとしていた所に
「ラルフ様!起きてください!緊急事態です!」
凄い剣幕のアイリ-ンとエイリ-ンが、昨日の酒が残っているのか少し青い顔で、しかし真剣な表情をして部屋に駆け込んできた。
流石にその勢いに驚いた俺は、敵襲かと!眠気を吹き飛ばしマップを確認したのだが、拠点周辺に敵性存在は確認できない。
ん?マップに表示されない敵でも居るのかと思い急ぎ外に出たのだが・・・・
「主殿!あれを見てください!突然城壁が我々を囲んでおります!」
メリッサさん間違ってはいないけど
「きっと私達を逃がさない為の敵の罠!
」
ルナさんそんな大掛かりな罠オジサン見た事ないよ。
むむぅ、みんな大騒ぎだ、しまった正直こんな騒ぎになるとは思わなかった。
此処で『あぁあれ俺が造ったんだ!ビックりさせてごめんね。』なんて言ったら全員から白い眼で見られそうだ。
と言っても良い言い訳が思いつかない。。。。
ここはみんなの為に頑張った・・・アピ-ルその方向で行くか・・・
夜中に興が乗って
※防御塔※
必要魔力:300
・高さ50メートルの防御施設
50人の兵士を配置する事が出来る
効果
・バリスタ、投石器、魔法、弓などの遠距離攻撃の射程を2倍とする。
四隅に今の状況では意味の無い防御塔まで造ってしまったのは内緒にしておこう。
「いや、皆すまない。俺割と外に出掛ける事が多いからさ、俺が外に出てる時前から不用心かなって思ってたんだよ。それで昨日皆寝ちゃってて眷属化の魔力が余ったからさ、皆を護る為に必要かなと思って夜のうちに造って置いたんだ。割と凄くないかい?」
皆の為辺りを強調しつつ事情をしていく。
皆驚くような、呆れるような微妙な表情だ。まぁ怒って無さそうで良かったです。
「一夜で城を造ってしまわれるなんて・・・・流石に驚きました・・・」
気持ちはよく判ります。アイリ-ンさん
「ラルフ様、これからは先に行っておいて頂けると。でも私達の為にありがとうございます。」
おっしゃる通りですエイリ-ンさん。これからは一言声かけします。
まぁなんとか収まったようだ、良かった。
ただ昨日の酒が残っていて顔色の悪い娘が多かったのでせめてものお詫びにと、2日酔いに効くは疑問だったが。神剣の女神の祝福を皆に掛けて置いた。結果的には効果覿面でした、すっかり顔色の良くなった娘さん達が御礼を言ってきました。
いえいえこちらこそお騒がせしてすいませんでした。。
今俺の家のリビングにある複雑な装飾が施された豪華な机、どこぞの盗賊からの戦利品だが平民レベルの俺の住いには似つかわしくないその机に、俺を含めて7人の美女達が座っている。既に眷属と為ったアイリ-ン達とそして、今日此れから新たに眷属になる予定の3人だ。
「もう元の人種には戻れなくなるけど本当にいいのかい?」
「はい。勿論です、その力で早くご主人様にお仕えしたいと思います。」
「私もお姉ちゃんと一緒に頑張ってお仕えします!末永くよろしくお願いします!」
「もう後戻りするつもりはございませんわ。これより主様と一蓮托生、共に歩んでいきたいと思っております。」
髪をポニーテールにしたクールな美女がクラリッサ、ほんわかとした明るい笑顔の少女がその妹のティナ、そして落ち着いた知的な感じのする美女がヨナだ。
三人とも微塵も迷いは感じられない。
「そうか。では俺の新しい家族になってくれ。」
そうしてゴッソリと魔力が抜けた感覚と同時に3人を淡い光が包む、
「うぅ~~ん♪」
「あ・・んぅ~~♪」
「うぅぅ~~♪」
若干色っぽい声をだしながら体感で30秒程
光が収まった後に現れた彼女達は
明らかに以前よりも存在感を増していた
漏れ出る魔力も大きくなっており、美しさも増している、そしてなによりも俺の眼に近い赤色に近い朱色の眼が俺に近しい者となった証のように感じる。
名前:クラリッサ ブライト 女 レベル1 契約者ラルフ
・種族:魔族
・状態:正常
・㏋:102/102
・MP:525/525
・武力:35
・魔力:30
・知力;42
・統率:30
・敏捷:48
・防御:21
・魔法防御:17
・スキル
闇魔法:LV1 短剣術:LV2 家事:LV4
・装備 無し
家事のレベルが高い、確か以前はどこかの君主の家で一族で働いていたらしい、敏捷も高く戦闘もいける、この世界のメイドさんって戦闘もこなすんですかね?
名前:ティナ ブライト 女 レベル1 契約者ラルフ
・種族:魔族
・状態:正常
・㏋:115/115
・MP:500/500
・武力:38
・魔力:31
・知力;27
・統率:22
・敏捷:45
・防御:25
・魔法防御:18
・スキル
闇魔法:LV1 格闘:LV1 家事:LV2
・装備 無し
クラリッサ妹らしく家事が高い、そして何故か格闘術までどこで習ってるんだよ?まぁ家の事はこの姉妹に任せる事にしておこう。
名前:ヨナ ダドリー 女 レベル1 契約者ラルフ
・種族:魔族
・状態:正常
・㏋:92/92
・MP:653/653
・武力:28
・魔力:38
・知力;61
・統率:42
・敏捷:31
・防御:15
・魔法防御:32
・スキル
闇魔法:LV1 商人:LV1 鑑定:LV2
・装備 無し
元商家の娘らしいスキルを持っているな!あまり戦闘には向いていないが、商人や鑑定スキルは便利だ、一度盗賊からの戦利品の魔道具や美術品を是非鑑定してもらいたい。知力も高いし良い相談相手になりそうだ。
「眼がルナ達と一緒になった!」
「フフフ、歓迎致しますわ。」
「相変わらず不思議な光景だわ。」
「なんか不思議な感じだ、まるで肉親のような親近感を覚える・・・」
「調子はどう?」
「・・・身体が軽くなったきがします。」
「うん・・・なんか力が漲る感じがするかも!」
「確かに・・・以前とはかなり違う気が・・それにラルフ様も以前よりも・・何でもありません!」
「じゃあ予定通り森に行く?別に無理はしなくてもいいけど。」
今日は急ぎの用事も無かったので、先に眷属にした4人と新しく眷属にした3人のレベル上げに森に向かう予定だったのだ。特にルナと今日眷属にした3人はレベル1だ、早めに上げておきたいところだが・・
まだこの娘達は野盗の所から救出して間もない、本来はもう少し休養して心の傷を癒してからが良いだろうと俺は考えていたのだが、アイリ-ンを始めとして何人かに、何かお手伝いがしたい!働きたい!
暇です!との声を聞かされたので急遽予定を早める事にしたのだ。因みにルナが最も強硬に仕事をください!と主張してましたよ。
まぁ国の戦力UPにもなるので嫌はありませんがね。
この世界でも女性は強い!とは改めておもいましたが
「うん、ルナ魔法の練習したよ。がんばる!」
「眷属になって初めての戦闘です!なんか楽しみですわ。」
「姉さん色々出来る事増えてるから色々試してみたいよね。怪我したら治してあげるから皆安心しててね。」
「私が護るから心配しなくてもいいよ。」
「本格的な戦闘経験は有りませんので、皆さんの足を引っ張らない様に頑張ります。」
「邪魔しない様にするね!」
「私は為るべくラルフ様から離れないようにします。よろしくお願いしますね。」
皆やる気の様なので、盗賊からの戦利品で合う装備を選んでもらう、冒険者組には元々使っていた装備を渡してあるので、今回はそれ以外の娘に選んでもらう、女物の装備は少なかったので選ぶのにそれ程時間はかからなかった。ルナは杖をクラリッサとヨナは短剣をティナは鉄製の小手を選んでいた。
全員闇魔法の使い手になっているのだから、まぁ使う事はないだろうが、一応の用心だ。
さぁ準備も万端そろそろ出発しますか!って時だった
「・・・・ウッ・・・・・・ここは・・・・」
部屋に聞き慣れない男の声が響いたのだった・・・・
あ・・・・・・・・・・・忘れてた
突然の聞き慣れない男の声に、皆の視線は声の出元である部屋の隅に転がされた麻袋に向かう。
其処にはロープで麻袋の上からグルグル巻きにされた弓使いクライド ダーフィールドが麻袋から頭だけ出した惨めな恰好で床に転がっていた。今しがた昨日掛けていたダ-クマインドが解けて覚醒したのだろう、ゴソゴソ身体を動かして、自分の状態を確認しようとしているようだ、ただ完全にはまだ覚醒していないようで俺達には未だ気が付いていないようだ。
唖然と見知らぬ謎の男を見つめていた、彼女達の眼が俺に向けられる。
その眼は『ちゃんと説明してくださいね!』と言っていた。そりゃそうですわ。
「私知ってるよ、こういう人を屑って言うよね。」
「最低の男ですわね。」
「即死刑で良いのでは?」
「なんなら執行は私が行うか?」
「女の敵です。」
「うわ!この悪そうな顔してる。きっと一杯悪い事してるとティナは思うの!」
「うちの国では野盗に組した者は即死刑でしたわ。それでよろしいかと。」
流石にいつまでも床は少し可哀想だったので、クライドを麻袋に入れた状態で空いた椅子に座らせて皆に昨日の事を説明した。
自分の状況をある程度は理解したのだろう、少し不貞腐れた顔で大人しく座るクライドだったが、事情を聞いた家の娘さん達の反応が上記の通り・・・・まぁ過激でした。。
若干クライド君が涙目になってる気がするのは気のせいではないでしょう。
「・・・・・お前等好き勝手言いやがって!こっちにだって事情が有るんだよ!」
たまらずに反論するクライド君に更なる追い打ちが浴びせられる
「あら?どんな事情が有るか知りませんが、その事情とやらは他人を不幸にしても許されるほどのモノなのですか?」
「私達にも事情が有るので、あなたやあなたの家族には不幸になってもらいましょう。私がそう言ったらあなたはどうすんですか?」
「・・・・っく・・・・」
理論派のアイリ-ン、エイリ-ンの言葉に返す言葉も無いクライド君
「やはり死刑でよろしいのでは?盗賊は死刑この世界のじょうしきですわ。」
「うん。早く森に行きたいし。そうしよう。」
非情なヨナとどうでも良さそうなルナの声に皆頷いている。
その流れに焦った表情を浮かべるクライド君
「それだけは勘弁してくれ!何でもする!妹がいるんだよ!病気の!俺が居ないとあいつが・・・・」
「悪人は最期には大抵そうやって言い訳しますわね。子供がいる!とか年老いた両親が!そして妹が!って、大抵嘘ですけどね。」
「違う嘘じゃねぇ!信じてくれよ!」
もうクライド君半泣きだ・・・流石に少し可哀想になってきた、少し助け船を出してやるか。
「妹の名前は?」
俺に何か言いたげなアイリ-ンを視線で制する
俺に縋るような眼を向け答えるクライド
「セラって言うんだよ!たった一人の家族なんだよ!」
「そんな大事な家族が居ながら何故盗賊の手伝いなんかしていた?」
これはマジで不思議だったんだよな、こいつの腕が有れば幾らでも稼げるはずだが
「ちょっと前に・・・領主の偉いさんと揉めちまって、真面な仕事受けられなくなっちまったんだよ。それで仕事探してる時に声を掛けてきたのがあいつらだったんだ。」
「それで目出度く奴隷狩りの一味って訳か。」
「・・・・・知らなかったんだよ。あんな連中だったなんて。」
「・・・で、お前は月幾らで奴らに雇われてたんだ?」
「・・・・・金貨30枚」
マジか・・・・ゲ-ム時代俺こいつ雇うのに月金貨1000枚払っていたんだが・・・
「判った・・・月100枚で雇ってやる。」
「なっ!?本当か!」
「ちょ!ラル様本当にこんな男の言うことを・・・」
クライドは喜びの声を、女性達は反対の声を上げる、まぁ反対する気持ちも良く判るのだが、彼女達は俺と違ってマップを見る事が出来ないしクライドが将来英雄になる事も知らない。盗賊に酷い目にあってきた彼女達がクライドを許せず信用も出来ない気持ちは良く判るのだ、だけどクライドをが根っからの悪人では無く妹の病気の薬代を稼ぐ為に奴が悪事を働いていた事を本当だと知っている俺は出来る事なら奴を助けたいと思う。だから少しだけ彼女達にズルい言い方をさせて貰う。
「俺ももし身内の君達が重い病気に罹ってしまったとしたら、、その時はきっとどんな手を使ってもその病を治そうとするだろう。ひょっとしたら彼と同じ様な非道な事も行ってしまうかもしれない。もしそうなったなら君達はやっぱり僕を非難するのかな?」
「・・・・・その言い方はズルいですわラル様・・・でも確かに私もラル様や皆が病に罹ればどんな手でも使ってしまうかも知れませんね。」
「はぁ~、判りました。私も何も言いません。」
「仕方ありませんね。そこの男もし主殿を裏切ればどうなるか分かってるな?」
「ご主人様の仰せのままに。」
「私は別にどっちでもいいよ。」
「貴方様がそうおっしゃられるなら、それに従いますわ。」
「すまねぇ。きっとこの恩は返すぜ!兄貴!」
「兄貴って・・・まあいい。働きによってはもっと金を払ってやるし、何なら妹の薬代も出してやる。そういえば妹の病気はどんな病気なんだ?」
「おぉ太っ腹だな兄貴!あぁセラの病は石花病って言うんだよ、知ってるか?結構厄介な病でさ・・・」
ん?どっかで聞いた事がある病だな・・・・・・
女性達の視線が気持ちよさそうにうたた寝する一人の少女に集まる
あぁルナの罹ってた病気か、それよりルナさん静かだと思ったら爆睡ですか
「・・・・ん?どうかしやしたか?」
「いや・・・・そこの眠り姫様がつい先日まで、その石花病に罹ってたんだよ。」
「・・・まさか・・何処にも痣の跡もありませんし、さっきも元気に・・・・冗談・・・じゃない?」
「一昨日迄死にそうでしたわね・・・今は想像も出来ませんけど。」
「顔中痣だらけで手足も全く動かせませんでしたね・・・昨日から走り回ってますけど。」
「顔も手もカサカサで痣だらけだったな・・・・今はツルツルで痣一つないが。」
「まさか・・・・・・そんな薬が有るんですかい!?有るなら売ってください!金は一生かけてでも必ず払いますから!お願いします!」
ゴンッと机に額を打ち付け頭を下げるクライド、未だに麻袋に入れられて自由の利かない身体で頭を下げるとこうなるのは仕方がない
「う~~ん、薬では無いが、多分・・・・治せるな。」
ほぼ末期だったルナが治ってるんだからクライドの妹もおそらく治るだろう
俺は芋虫の様な格好でこちらを縋るような眼で見つめるクライドに眷属化について話した。
「・・・・なる程眷属化ですかい・・・・そちらの怖・・・・美人なお姉さん達も同じ紅い眼をされてたんで不思議だったんですわ。兄貴の眷属になって魔族になったってんなら確かに筋は通ります。あっしがあっさりと拘束されたのも見た事が無い魔法でした・・・ありゃ恐らく魔族が使うっていう闇魔法ですよね。」
「・・・・それで・・・どうすれば妹を兄貴の眷属に、魔族にしてもらえますか?」
「・・・そんな簡単に決めて良いのか?妹と相談も必要だろう。」
「いえ、もしセラの奴が拒否するにしてもあっしが責任を持ってセラを説得します。こんなチャンスは2度とねえはずです。多分セラの病を治すにはこの方法しか無いと思いますわ。あっしもいろいろ悪い頭で考えてたんですよ・・・」
そう言ってクライドはしみじみと語った、
段々と薬の効きが悪くなってきており、徐々に痣も増えてセラが寝込む時間が長くなってきており、恐らくセラが良くなる事はないのでは?もうセラは長くないんじゃないか?と頭の隅で考えていたことを、
その強面には涙の跡が見えた。