表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/110

第八十九章 今日は、明日のために

「ぐうぅ………この漲る力………クックッ…………この前は奴の思わぬ実力に失態を見せたが、もう負けぬ。今度こそ奴を倒し、サン・ジェルマンも、ケファノスも、あの世に葬ってくれるわ!」


新たに追加されたダークエネルギーは、バチルスに絶対の自信をもたらしていたが、それを許さない者がいる。


「あの世に行くのは貴様だ。バチルス」


漆黒の鎧に燃えるような赤い髪。


「ヴァルゼ・アーク!」


「俺を動揺させて隙を生む為、わざとセルビシエを狙ったな?」


「クックッ。だったどうだと言うんだ。結局は貴様の不甲斐なさがセルビシエを殺したのだ。慢心というヤツだ。………確か、重力と空間を司る悪魔の神だったな?己の力に慢心する辺りは、正に神と言うことか」


「黙れ。貴様ごとき烏合と、神のなんたるかを語る気はないが、そんなに神を知りたいのなら教えてやろう………」


悪魔の神は、黒い剣を手にし、


「神を怒らせた罪をなっ!」


「フン。たかだか女ひとりの命に感情を乱すような弱虫に神が務まるのなら、いっそワシが神としてこの世界に君臨してやるっ!」


セルビシエの仇討ちを。

神の心は怒りに満ちていた。










憎い演出だった。魔界を取り囲む人間とエルフの軍勢。対峙するはおびただしい数の魔族の群れ。

空は黒い雲に覆われ、所々からオレンジ色の光が見える。

緊張が熱気を呼び、クダイ達の心に決意と覚悟をねだっているようだった。


「後悔はなさいませんね?」


そう聞くダンタリオンの表情も、今日は涼しい笑みを失くしている。


「何をだ」


聞かれた方のケファノスは、いつもと変わらない表情を見せている。緊張とは無縁と言いたげな魔王は、ツンとした態度で応えた。その質問の意味を理解しながら。


「何を?ここはあなたの国です。ご自分の国が戦場になるのですよ?」


「………困る。………と言ったら戦いを止めるのか?」


無駄な質問の方こそ止めろ。と、ケファノスはダンタリオンを睨んだ。

いいわけが無い。魔族とは言え、ケファノスにとっては民。国が戦場になるのは望まぬこと。


「すみません。余計なお世話でした」


心中は察していたが、つい聞かずにはいられなかった。


「ケファノス!ダンタリオン!」


悪い空気が流れかかると、カイムがそれを掃ってくれた。


「準備はオッケーだ。いつでも号令をかけてくれ」


指揮権はダンタリオンにある。ダンタリオンがGOサインを出せば、最後の戦いが始まるのだ。


「カイム、火炎球を用意出来ますか?」


サルンガでそれを作れと頼んでいるのだ。


「りょーかい!」


カイムはサルンガの弦を引き、黒い雲のちりばめられた空へ火炎球の矢を向ける。

ダンタリオンが命じれば、それを放ち、戦いの合図になる。


「船で待機してる奴らにも一発で解るぜ!」


「ありがとうございます」


だがすぐには命じない。待っているのだ。これまでの戦いの功労者を。

それは、桐山クダイ。別世界から来たジャスティスソードに導かれし者。


「みんな」


そしてクダイは現れた。シトリー、羽竜を連れて。


「待っていましたよ」


ダンタリオンはクダイをじっと見る。


「戦いを始める前に、クダイ、私達はあなたに謝意を述べねばなりません」


「え?ぼ、僕?」


この状況で謝意を述べられるとは思わなかった。


「あなたは別世界の人間。それでいながら、ここまでよく戦ってくれました」


「そ、そんな!僕は何もしてないよ!いっつも、みんなに助けられてばっかだし………」


「そんなことはありません。あなたの存在は、私達に勇気と絆をもたらせてくれました。知らぬ者達が集まり、時に厳しく、時に楽しい旅を経て私達はここにいます。それを実現させたのは、あなたなのですよ、クダイ」


あまりの褒めっぷりに、照れるクダイを、


「ダンタリオンの言う通りだぜ。“存在”って大切なんだから、そう照れんなって」


カイムも褒めた。

次に、ダンタリオンは羽竜に、


「羽竜。あなたにもです」


「………別になんもしてねーよ」


そう言った羽竜に、ダンタリオンは首を横に振り、


「伯爵の使う、“時の秘法”のカラクリを聞き出してくれたではありませんか」


「カラクリったって、全てが明かされたとは言えないだろ。常時魔法の断ち切り方までは解ってないんだ」


「それにしてもです、黒仮面はあなただったからこそ、話したのでしょう」


「買い被んなって。クダイが聞き出したんだ。アイツはクダイの気持ちに応えたんだよ」


どうにも素直に受け入れる気はないらしいが、


「でも、羽竜がいなかったら、黒仮面も話は聞いてくれなかったよ」


クダイに言われ、むず痒いのか、ふぅと息を吐くだけだった。


「いずれにせよ、泣いても笑ってもこれが最後だ。どうせなら、笑ってまた会おう」


ケファノスが仕切直すように言った。

その言葉に、みんな頷くと、


「では」


ダンタリオンは再び魔王城を見つめ、


「世界を脅かすサン・ジェルマン伯爵を倒すのです!」


同時に、カイムが矢を放つ。

矢は雲を吹き飛ばすように爆発すると、戦いの火ぶたを切り、軍勢は一斉に魔界へなだれ込む。



サン・ジェルマン伯爵。そして時の秘法。

明かされた秘密が、クダイ達を勝利に導くとは、誰も言っていない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ