表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/110

第四章 賢者と呼ばれる男

「はて?可愛いらしいお人形さんですが、お知り合いでしたでしょうか?」


ダンタリオンは首を傾げアフロヘアの天使を見つめる。


「誰?知り合い?」


クダイは小声でケファノスに話しかける。


「若くして賢者にまで成り上がった喰えん奴だ」


若くして賢者になったことが、どうして喰えないのかはわからないが、その言い方から、仲間でないことは確かだ。


「どこかで聞いた声ですね。まさかとは思いますが………魔王ケファノス」


一見、微笑みを崩してないように見えたが、ケファノスの名を口にした時、険しい表情をした。


「なぜ貴様がここにいる」


ケファノスの口調も少し乱暴気味だ。


「なぜ?私はガーゴイルを追ってここまで来ただけです。あなたこそ、随分変わり果てたお姿ですが………イグノア様はどうなさったのです?」


「消えたよ」


「消えた?これはまたどちらへ?」


「さあな。あの世か……それとも存在すら失くなったか」


「まさかその少年が………」


クダイはダンタリオンに睨まれた。


「ぼ、僕じゃないです!ケファノスが!」


ケファノスを指差して否定した。


「猿芝居はやめたらどうだ。ジャスティスソードは使い手に災いをもたらす。そのくらい貴様が知らんわけがなかろう」


ケファノスはクダイの裏切り(?)に動じることもなく、ダンタリオンに返し言葉を放つ。


「では、イグノア様はジャスティスソードの災いのせいだとおっしゃるのですね?」


そう言って、ダンタリオンは剣を抜く。


「なんの真似だ」


「イグノア様がジャスティスソードの災いで消えたとしても、最終的にはあなたを倒せば事が済む」


「………………。」


「今のあなたなら負ける気がしません」


そのやり取りをクダイは黙って見守る。

成り行きを見守るわけではなく、黙っていれば巻き込まれずに済むと、そう思っていたのだが、


「こっちにはジャスティスソードがある。それでも殺る気か?」


ダンタリオンはまたクダイを睨む。


「フッ。彼が?ご冗談を。華奢で、まるで構えがなってない」


「そう思うか?だがこやつはジャスティスソードの災いを受けん」


「そんな話………信じるとでも?」


「嘘だと思うのなら試してみるのだな。事実、余をこのような姿にし、たった今ガーゴイルを倒した。それでもまだ存在している」


ダンタリオンが信じられないのは、ジャスティスソードは誰にでも使えるが、心に悪のある者はその代償を払わなければならない。人間である以上、いや、神であってもわずかな悪は必ずある。クダイに災いが起きないというのは、クダイの心に悪が潜んでないことになる。

それが信じられないのだ。


「………………それが本当なら、興味深い。ジャスティスソードを使いこなせる者など、どこにもいなかったのですから」


ダンタリオンは剣を鞘に収め、戦うことを諦めたようだ。


「では二人共、私と一緒に来てもらいましょう」


「え?な、なんで僕まで………」


「ジャスティスソードを持っているからですよ」


意味ありげに笑うと、ケファノスを見て、


「異論はありませんね?」


「…………よかろう」


このまま自分の城へ戻っても、部下に説明して理解させる自信はない。従った方が無難と踏んだ。


「では、参りましょう」


そう言って、ダンタリオンはディメンジョンバルブの中に入ろうとした。その時、


「いけない!」


ディメンジョンバルブが閉じ始まる。ダンタリオンは慌ててこじ開けようとするが、努力の甲斐なく閉じてしまった。


「なんてことだ………」


ケファノスが落胆の声を漏らした。

唯一の帰り道が断たれたのだ。


「あの〜………」


ダンタリオンはゆっくり振り返ると、


「今夜、泊めていただけませんか………」


気まずそうに言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ