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第三十九章 心に燈る

ケファノスに着いて行くと、向こう側から騒々しく走って来る影があった。


「ダンタリオン!」


「クダイ!」


心配したのががっかりだったくらい笑顔でいた。

がしっと抱き着かれ、意外に厚い胸板を顔に押し付けられる。


「き、気持ち悪いよ……」


でも悪い気はしなかった。

後に来たシャクス、オルマ、カイムにもどこか安心した笑顔が見えた。


「無事でなによりだ」


思いがけないことに、ケファノスは言った。


「さ、早く逃げよう」


「待てクダイ。俺達の剣を取り戻さないことにはどうにもならん」


シャクスとしては手に馴染んだ剣を置き去ることなど出来ない。

武士の魂と言ったところか。


「シャクス、剣を探す時間はない。サン・ジェルマン達が輪廻の塔を目指している」


「なんだと……!」


そしてケファノスは全員を見て、


「余の隠してある武器がある。どれもジャスティスソードに劣らぬ名具ばかりだ。それを貴様達にやる。それでいいな?」


魔王が隠すほどの武器。何を今更と言いたいところではあるが、


「いいんじゃないか?貰えるもんはもらっときゃ」


カイムの軽さが頷いてしまった。


「そうと決まれば早く!」


オルマはじっくり考えるタイプではない。方向性が決まったなら直ぐさま行動に移さないと気が済まないのだ。敵陣でのんびりするのもどうかとは思うが。

来た道をまた引き返せば衛兵達がいるだろう。もっと安全な道が無いか考えてはみたが、


「何やってる!急げ!」


いつの間にか全員が先に行っていた。シャクスが声をかけなければおいてきぼりだったろう。


「待ってよ!」


魔王の隠し武器に目が眩んだんじゃないかと疑わずにはいられないくらい素早かった。

行く手にはツヤの無い銀の甲冑達が密集して遮る。


「私に!」


数は問題にはならない。ダンタリオンの両手が電気を帯び、帯電を始める。


「気絶程度に留めますので安心して喰らって下さい」


電気は使い手の意志により放電する。ターゲット達はあらかじめマークでも付けられていたかの如く餌食になっていく。


「さっすが〜」


カイムは自分も出来るんじゃないかと手を握ったり開いたりしてみるが………結論は苦笑いで儚く終わる。


「そんな簡単にはできねーよな」


妙に期待した自分の胸に言い聞かせた。

魔法を使えるのが凄いのではなく、大勢を前に威力を均等にコントロール出来ること。暇があれば是非教えてもらいたい。


「行きましょう」


ダンタリオンが先陣を切り外へ飛び出す。

オルマ、シャクス、カイム、ケファノス、クダイの順で続き、すっかり松明たいまつで囲まれた第2ステージへと進んだ。


「そこまでだ」


ザンボル国王自らが待ち構え、罪人達を歓迎した。


「陛下………そこをお退き下さい。私達は行かねばなりません!」


「控えろダンタリオン!お前達に行くべき道は無い!」


最初から一般兵では話にならないと見通している。でなければ国王自ら“罪人”を相手にはしないだろう。


「なんとおっしゃられようとも、私達は輪廻の塔へ行く!」


「賢者の称号を得ながら、どこまでも往生際が悪い」


熱意とも決意とも取れず、ただ呆れるばかり。


「ならばいっそ、称号など棄てましょう」


それでも行かねばとシャクスが援護に出る。

戦前ではダンタリオンが援護側だが、こういう状況で確かな援護はシャクスしかいなかった。


「聖騎士シャクス………自分が何を口走ってるかわかっているのだろうな?」


「称号とは心に授かるもの。我々の心が認められぬのであれば、所詮無用の長物。棄てた方が清々する」


話して無駄なら媚びへつらうことはない。意志を貫き通すだけ。


「国王の地位にいながらダンタリオンとシャクスの心が見えぬのか?」


ふと現れたアフロヘアの小さい天使の人形に、ザンボル国王は目を丸くし、


「な………なんだ貴様はッ!?」


「魔王ケファノスだよ」


一番後ろにいたクダイが、ダンタリオンとシャクスの間を通り前に出て来た。

ザンボル国王はクダイの右手にある黄金の刃の剣を見て、


「ジャスティスソードの………こんな華奢な少年が……?」


到底戦士には見えない。シャクスが持っていた方がまだ形になっただろう。


「敢えて道を作ろうとは思わん。すんなり通してくれるのならばな」


「フ……フフ……人間が恐れた魔王がこんな小さな人形とは」


「笑いたければ笑うがいい。何も解決はせんがな」


「ならば遠慮なく笑わせてもらおう!魔王の滑稽な姿を!」


高々な国王の声に衛兵達も笑う。恐怖にもならないケファノスの姿を。

しかし、それを許せる“仲間”じゃない。


「黙れよ!」


クダイがジャスティスソードを一振りして喉を潰す勢いで言った。

声は嘲笑を消し、夜本来の静けさに戻る。


「ケファノスを笑うなら僕はジャスティスソードを振るうぞ!」


「少年、無礼極まりない言動は慎め。お前が剣を振るえば命の保証は出来んぞ」


「どうせ処刑するつもりなんだろ?だったら関係無いね!それに、仲間をバカにされて黙ってられるほど大人じゃないよ………僕は!!」


それは勇姿。ダンタリオン、シャクス、オルマ、カイムは視線を交わし頷く。


「彼に同じです。私達は命を共有しています。仲間の侮辱を許せるほど、私達は大人じゃありません」


追われる身であることが運命さだめなら、甘んじて受けてもいい。何が大切か知っているから。


「ダンタリオン………」


ザンボル国王の怒りが燈りかける。


「こういう時のあたし達は簡単には折れませんよ………陛下」


油を注ぐような言い方でオルマが嘲笑仕返した。


「種族の壁に阻まれし愚かな人間よ、己の胸に問え!自分達の行いは正義かと!」


たまにはカイムも。


「恩を着せる言い方は好きではありませんが、我々は世界の為に戦っている。それはケファノスも同じ。種族の違いと見た目だけで嘲笑うのであれば、国王であっても許されることではない!」


剣が無くても戦える。シャクスは左右の拳をぶつけ合った。


「道を開けよ」


五人に背中を押されたような気分だった。初めて芽生えた衝動は、気迫だけで閉ざされた道を開くに値した。


「戦うべき相手はサン・ジェルマンだ」


通り過ぎるケファノスは、何が正義なのか自分を嘲笑った者に見定める機会を与えた。

 その行為は人には不実過ぎる。

『赦す』。人間には永遠に巡って来ない進化なのだろうか。


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