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第十四章 悪友

城内に入る間際、クダイ達の前にサン・ジェルマンが現れた。


「伯爵……やはりあなただったか」


地獄絵図。描くには苦労しなかっただろうことは察しはつく。


「その顔を見ると、まんまと罠にかかってくれたようだな。賢者ダンタリオン」


サン・ジェルマンの視線はオルマへと移る。


「お前は確か………」


町を焼いた時、唯一立ち向かって来た女戦士。


「今度は逃がさないよ!」


サン・ジェルマンの企みよりも、今は町を焼き、住人達を殺した仇を討ちたい。


「ヨウヘイはどこだ!」


同じく、クダイにも自分の目的がある。


「彼なら城の最上階にいる。行ってみるといい」


意外にもすんなり通らせる言動を吐いたものだから、肩透かしを喰らったような感じになってしまう。


「行って下さい。伯爵は私とオルマで相手しますから」


ダンタリオンとオルマが合わせたように剣を抜く。それは偶然ではなく、洗礼された絆が成せること。


「クダイ、ここはダンタリオンに任せて最上階を目指せ」


「うん」


ケファノスに言われ、炎上する城の中へ突入して行く。

クダイのことは心配だが、オルマを一人残すわけにもいかず、ケファノスに任せた。


「では賢者どのの実力、拝見させて頂こう」










「ようこそ、我が城へ」


玉座に踏ん反り返り、王冠を頭に乗せて頬杖をつく。


「何が我が城だよ。お前、自分が何したかわかってんのか!」


友人が殺しを働いたなんて信じたくないが、やはり事実なのだろう。顔つきが違う。


「ハハハ!一回言ってみたかったんだよ。悪役ってのが好きでさ」


「だからって!」


「どうせ知らない世界の人間だろ?知ったこっちゃないよ」


こんな最低な奴だったとは思わなかった。


「伝説の剣ジャスティスソード。いいじゃないか、かかって来いよクダイ」


玉座から腰を上げ、悪びれもなく迫って来る。

サン・ジェルマンに何を吹き込まれたのかは知らないが、何事も無くとはいかない。


「相当、魔気に染まっている。本気でやらないとお前が殺られるぞ」


脅しではない。ヨウヘイの力はケファノスの想像を超えている。


「行くぜ!クダイ!」


左右の手に黒い炎を纏い、交互に放って来る。


「うわっ!」


ジャスティスソードを盾にして防ぐが、多分ヨウヘイはわざとジャスティスソードにそうしている。


「ほうら!どうしたクダイ!お前の力はそんなもんか!」


衝撃で手が痺れる。ただでさえ重いジャスティスソード。このままでいいわけがない。


「ケファノス!」


「前を見ろ。目を逸らさずしかと見るのだ」


見ろと言われても、優れた動体視力でもなければ無理な注文。


「いいかクダイ、奴は今、屍人の力に酔いしれているだけだ。言わば隙だらけの状態。刹那の時を見極め、一撃で決めろ」


「んなこと言うけど、どうしたらいいのかわかんないよ!」


剣すらまともに振るえないのだ。刹那の時がわかったとしても、ヨウヘイに一撃を与えられるかは約束出来ない。


「ジャスティスソードはお前にしか使えない。剣と心を通い合わせるのだ」


「剣と………ジャスティスソードど心を………」


無意識に目を閉じた。”見ろ”と言われた指示に反して。


(ほう………無眼の構えを無意識に………)


無意識にした行動だからこそ価値がある。ケファノスはクダイに才能を垣間見た。


「ほらほらほらほらあっ!楽しませてくれよ!」


攻撃がきつくなって来た。これ以上は腕がもたない。


(僕にしか使えないジャスティスソード………”見る”んだ、一撃の軌跡を!)


−キィィィィン−


また音が鳴った。この音が鳴った時は、ジャスティスソードが目覚める時のような気がする。


「これでも耐えられるかあっ!?」


ヨウヘイの声がしたのと同時に、目を閉じたクダイの闇にいくつか光が見える。

闇の中でもより暗い光。それはヨウヘイの魔気だろう。

小さい無数の光。これは攻撃。

そして………


「見えた!」


自分からヨウヘイに向かって伸びる光。刹那の時だ。

ジャスティスソードがぐっと軽くなる。

連続で来る攻撃も、切れ目がある。

クダイはその切れ目に反応して、光が示した軌跡を駆ける。


(なんだ……身体まで軽く感じる)


左にカーブする軌跡の上を走り、ジャスティスソードが導くままに………


「振るえっ!クダイ!!」


「うわあああっ!!」


見開いた先にヨウヘイがいる。


「しまっ………!」


ジャスティスソードの切っ先がヨウヘイの脇腹をかすめた。

ヨウヘイを目にした為に、クダイが力を抜いてしまったからだ。


「うくっ………」


強烈な痛みにヨウヘイは膝をつく。


「ぼ……僕は………」


クダイは初めて感じた不思議な感覚と、自分の意志で使ったジャスティスソードの力に驚いていた。


(詰めは甘かったが………クダイめ、ジャスティスソードに何を見たのだ)


あの動きは尋常じゃない。

剣を振るう筋力さえままならないクダイには無理な動き。

 無眼の構えもまた素人がやるものではない。


(こいつはとんでもない逸材かもしれん)


クダイとジャスティスソードの奇跡。ケファノスは間違いなくその目で見た。


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