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特章 時空に生まれた幻想

幼い頃の不思議な体験の記憶。いつしか、ものすごく不確かで曖昧な記憶へと変わっている。そんな記憶、きっとみんなもあるんだと思う。妖精を見たとか、小人を見たとか。大人になってしまえば、見間違えた程度にしか思わなくなって、海馬の奥底にでも追いやられてるんだろう。


「行ってきま〜す!」


「クダイ!どこ行くの!?」


「ヨウヘイんとこ!夕方には帰るから!」


声を上げ階段かけ降りるクダイ。それに気付きキッチンから顔を出すクダイの母親も同じようなことを考えたことがあるのだろうか?勢いよく遊びに行ったクダイに、同じ頃の自分を重ねて見ている。そんな優しい目で送っていた。

友人の下へ急ぐ足取りは、一端のアスリートにさえ見える。


「うわっ!」


曲がり角。誰かにぶつかり尻餅をつく姿が、なんとも頼りない。


「大丈夫かい」


「あ、す、すいません」


差し出された手を遠慮なく掴み、起こされ埃を払う。


「ありがとうございます」


「いいんだよ。僕も考え事しながら歩いてたから気付かなかった」


「こ、こちらこそ!ホントにすいませんでした!」


髪の長い、体格のいい男を見上げ、少し驚いたような表情で頭を下げ、また駆ける。その背中は、近いうちに大きな運命を背負うことになるのだが……。


コンクリートで造られたこの世界も、まあ悪くはない。特別嫌いだとは思わない。でも、こことは違う別の世界に魅せられてしまった。あの世界にもう一度行きたい。

ダンタリオンは言った。時間には等価交換という概念があると。ひとつの世界を犠牲にすれば、新たな世界を創造することも可能。その可能性を探れば、ひとつの世界を犠牲に、壊れてしまった世界を取り戻すことも出来るかもしれない。


「みんな………」


ジャスティスソードを手に具現化し、髪の長い男は大きく振りかぶる。


「母さん、そして僕……許して欲しい。僕にはどうしても会いたい人達がいるんだ。過去を犠牲にしてでもね。だから、ダンタリオンが成した業。それを今度は僕がやる」


ジャスティスソードがいつになく輝くのは、少ない味方のつもりだろうか。

深呼吸をして、目を閉じる。罪の意識が無いわけじゃなが、他に手段はない。


髪の長い男……そう、成長したクダイがそこにいた。

今一度、その手の中にある感触を確かめる。もしかしたら、成功しないかもしれない。そうすれば全てが終わる。

だが、躊躇するに及ばない。失くした世界と、そこに住まう者達。それらを取り戻す為に時間を渡って来たのだ。

そして、クダイはジャスティスソードで地面を叩き切った。

四つの時間構築魔法具ツールの力を吸収したジャスティスソードが、バランスブレーカーとして世界を壊し始める。


「これでいい。これでいいんだ」


世界に亀裂が入り、鏡の様に音をたてて割れる。


―後悔はしない。大好きな仲間に、大好きなシトリーに会う為に、その時間へ行く為に、僕は過去へやって来たのだから―




終末幻想伝 ジャスティスソード 〜完〜


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