4月1日
エイプリルフールはおっかない
俺は双葉柚希は、元々母子家庭だった。父さんは、俺が小さい時に家から出ていったらしくて俺自身、父親の記憶が全然ない。顔も声も何をしてもらったのかも覚えていない。
今まで父さんの事を話そうとしなかった母さんに小学生の時1度だけ聞こうと思ったことがある。だけどその時の俺は子供ながらも気を使ったんだろう。この話題を出しては行けないと思った。今まで話さなかったのは思い出したくないからだと……
小学5年の時に母さんが再婚して新しい父さんと同時に2つ下の妹が出来た。もちろん最初は戸惑った。けど今までずっと母さん1人で俺の事を育てながら仕事をして大変だっただろう。俺としては嬉しさや安心感の方が強かった。
新しい父さんはすごくいい人で仕事が休みの日とかはよく俺とテレビゲームとかをしてくれた。それを母さんが微笑ましく見守ってる。そんな幸せな時間が再婚してから流れるようになっていった。
月日は流れて今俺は高1に、妹のつむぎは中2になった。
母さんと父さんは元々違う会社で働いてたけどその会社が最近合併して海外に新しく会社を設立する事になって代表として2人が選ばれたらしく2人とも海外に行ってしまい今俺はつむぎと2人で暮らしている。
つむぎは、あまり再婚に関して乗り気ではなかったのか分からないけど未だに全然打ち解けることが出来ないでいる。日常生活に必要なこと以外全く話そうとしない。
いつまでたっても他人行儀でどこか距離があるような気がする。今だってずっと敬語で喋ってるし1回もお兄ちゃんとか一般的な妹が言うような感じの言い方じゃなくて柚希さんとさん付けで呼んでいる。
そこで俺はつむぎとの距離を縮める作戦を急遽昨日の夜考えた。今日は4月1日。エイプリルフールだ!バカバカしい作戦だけどこの冗談で距離を縮めてみせる!
リビングでスマホをいじりながらつむぎを待っていると部屋から宿題をしていたと思われるつむぎが出てきた。
よし、作戦開始だ!
「つむぎ」
「どうしたんですか?柚希さん?」
「実は俺らホントの兄妹だったらしいんだ」
「・・・・・・え?」
よしよし騙されてるな?これでエイプリルフールの嘘でした〜!とネタばらしし、その後つむぎがなんですかもぉ〜!と言ってお互い笑い合う。これが水也と考えた作戦だ!
「それってホントなんですか?」
「あぁ今まで別々で暮らしてたけど俺らが小学生の時に一緒に暮らし始めたらしい」
「え?でもお父さんが新しいお母さんだって言った気がしますけど……」
「それはその方が色々都合が良かったからだよ」
「色々?」
そんなに深く聞かないでくれ!すぐネタばらしする予定だったから深く設定考えてないんだよ!もうちょい騙してたいけど早いとこネタばらしするか
「色々は色々だよ」
「じゃあほんとに私達はホントの兄妹なんですね?」
「そういうことだ」
「・・・・・・それって、それって」
つむぎが下を向いてブツブツと何か言っている。もしかして今の会話を思い出して嘘ってことがバレた?
嘘と言われる前にネタばらしてやる!
「実は今までのは……」
「最っ高じゃないですか!!!」
「・・・・・・え?」
最高?俺と兄妹だって事が最高って事?しかもそんな嬉しそうな顔初めて見た。まさかほんとに
・・・・・・あ!わかったぞ!つむぎは俺のが嘘だとわかった上でさらに嘘をついて喜んでるのか!全くとんだ策士だな、まったく!こうなったら続けてやる!
「だろ!俺も今日知ってびっくりたんだ!」
「わたし昔から兄妹の漫画とか読んでたんです!兄にピッタリくっついて過ごしてる妹キャラにずっと憧れてたんです!」
「へ、へぇそうなんだ」
これは嘘、だよな?でもすごいマジな感じで言ってるような気が…いやいや騙されるな俺!今までそんな素振りで全然見せなかったし!すごい演技力だな!でも義兄だから今までそんなこと出来なかったのかな、俺としてはホントの兄だと思ってもらって全然構わないのに
「じゃあじゃあこれからは兄さんって呼んでいいんですよね!?」
「あぁ全然いいよ」
そろそろネタばらししていいかな?この騙し合いが終わったらきっと俺たちは打ち解けあってるはず!
「でもわかってると思うけど今まで全部嘘だよ?」
「・・・・・・え?」
「ん?」
やっぱ妹キャラだよね〜リアル妹は冷たいけど……
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