謁見の間3
カイン達は「支度に時間がかかり遅れて申し訳ありません」と言いながら入った。そしてエルムの膝の上に座るアリアを見て動きが止まった。
カ「これは私達の居ない間に何が有ったのですか?」
バ「嬢ちゃんついにやったのか?」とニヤけながら言う。
エ「アリアと出会った頃の話をしてたらこうなった」
ザ「出会った頃っていうと」
エ「ああ、あれは雨が降る午前だったなロースカ村に入る橋の下から雨音に混じって赤ん坊の泣き声がするから橋の下に行って見ると籠に入った赤ん坊の上に木片が有り(名前はアリアです、どたか育てて下さい)って書いてあったんだな。」
イ「そうねそのまま捨てておくわけにもいかず私達で育てたのよねぇ、当時は私も母乳が出なくて乳母を探すのに苦労したわねぇ、その甲斐も有ってこんなに大きくなったし、胸以外は」とアリアを見ながら微笑んで言う。途中で警告音に耐えれなくなったズフェロは眼鏡をはずしてる。バルドとザルドはウルウルとした目をしながら良かったなぁとつぶやいていた、カインは無表情だった・・・
アリアは膝から降りて二人の前に立ち「なんでいきなりそんな嘘つくんですか陛下、イスリさんも乗っかって本当に有った様なエピソード言うし、そこのバカ二人も信じちゃってるし大体ファルス伯爵家の私兵だった貴方たちとメイドだったから赤ん坊の頃を知ってるわけないでしょ」と叫んだ。
バルドとザルドは「あっ」と言うと赤面し、カインは何してんだかって感じで二人を見ていた。
エ「いやーだってさぁ詳細話すと寝室の話も出てくるしなぁ」とニヤニヤしながら言う。
ア「私が陛下の第二夫人になりました、以上」とドヤル。
カインは笑顔で両手を叩き「おめでとうございます」と言うが正装で鎧をつけてる為にパチパチじゃなくカンカンと音がなる、バルドとザルドも「おおっ」と言いながらカンカン音を出してる。
アリアは赤面しつつ膝の上に戻り「ありがとう御座います」
エ「じゃー次の謁見はカインな」
カ「えっ何をすればいいんですか?」
エ「まー取り合えず何か言ってみろよ、質問とか要望とか何でもいいぞ、叶うかどうかは別としてな。」
カインは顎に手を当てながら「では私も王妃様並に強くなりたいと思うのですが、どう修行すればいいのか見当もつかなくて。」
エ「無理、諦めろ」とバッサリ
カ「そんなぁ」と項垂れる。
イ「死ぬ気で走りこむとか?」
エ「手数を増やすとか?」
カ「死ぬ気で走りこむは分かりますが、手数を増やすってのは?」
エルムは二人に膝から降りる様に言うと立ち上がりローブを脱ぎ、その下に着ていた上着下着靴も脱ぎ始めた、その状況でアリアはエルムをガン見していて脱ぐのを手伝ったいない、脱いだものは玉座にかけ首にかかった赤いペンダントだけになると「そーいやアリアの結婚首輪を作らないとな」
と言いながら握りしめた。
カインは慌てながら「私は妻が二人もおり男色の気はありません、バルドかザルドなんか丁度いいと思います。」その言葉に二人は「おいっ!!」と怒鳴る。
エ「何言ってんだ俺も男に興味ねーよ、ファーストフォーム」と蒼い光に包まれた。
光は一秒にも満たない程でおさまり光の中心だったエルムは全身を蒼い甲冑みたいなモノで覆われ手が六本になっていた、自前の下の手は胸の前で組み、真ん中の一対は片手剣を持ち上の一対は短槍を持っていた、その剣も槍も鈍く蒼く光っていた。
カインは初めて見るその姿に驚きながら「手数を増やすって物理的にですか?」と絶叫する。
バ「陛下それってアダマンタイトですかい?」
エ「アダマンタイトとオリハルコンの合金だな、アダマンタイトだけじゃ重いし暇な時に研究した結果合金にしたら軽く強度も上がることが分かったんだ。前はミスリルで作ったけど新しく作り直したんだよ」
ザ「暇な時って・・・前のミスリルの時ってどれくらい前なんだよ陛下?」
エ「三年くらい前かな」
バ「統一前じゃねぇか、なんで使ってなかったんですかい?」
エ「いやほら俺って魔導士じゃん魔道王じゃん、物理的な感じは戦争に必要ないし、俺最強の武器も統一が終わって王竜倒した時の角で作ったホーンスタッフだし。」
バ「じゃーなんで作ったんですかい?」
エ「えっカッコいいかなと思って。」笑顔で言うとカインは神妙な顔をしながら質問をする。
カ「ファーストってコトはセカンドとかも有るんですか?」と聞くと二人も「おぉ」と唸る。
エ「セカンドフォーム」再び青い光に包まれて光が消えると馬の首部分に胡坐をかいた人馬一体の姿が現れる、しかし人の上半身は六本手で馬の脚は八本だった。
カイン、バルド、ザルド、ズフェロの四人は驚いたままだがアリアが特に驚いてないのに気付いたザルドが「なんで嬢ちゃん普通にしてんだ?」
ア「私は何度か見てるしイリスさんの最強戦闘衣と陛下のファイナルフォームの戦闘も見たし凄いとは思うけど驚く程じゃないです。」
バ「へいかぁぁぁぁ何で俺達には見せてくれねぇんですか?」と怒鳴る感じで言う。
エ「見せる機会が無かったし、アリアが見たってのもイリスとデートで草原に行ったときにメイドとして給仕に付いてきてただけだし、今見せたしいいだろ。」プイって横を向く。
カ「それで陛下と王妃の勝負はどうなったんですか?」目を輝かせて言う。
エ「20m離れたとこから初めて五秒で終わったな」
イ「その位だったわねぇ」
カ「どっちが勝ったんですか?」ワクワクしながら聞くカインにエルムはあっさりと「俺がイリスに勝てるわけが無いだろうが。」
エ「そもそも前提が間違ってるんだよ、俺がイリスに攻撃出来るわけがないんだよなんで嫁相手に攻撃しかけると思うんだよ。」
カ「それなら最初から勝負しないといいんじゃ」
エ「まーお遊びだったしな相手の胴体に触った方の勝ちだったし、勝負開始して速攻逃げたけど五秒で追いつかれてタッチされて負けたよ。」
カ「本気ならどう戦います?」再び目を輝かせながら言うと、エルムは「イリスに本気でも冗談でも攻撃出来るわけがないから俺の負け確定」イリスはニコニコしながら聞いている。
カ「王妃に攻撃出来ないのは分かりました、では例えばザルドとかが王妃と同じ実力を持っていて敵対したらどうされますか?」
エ「同じ実力かぁ、ザルドが百人居ても無理そうだけど」プっと笑いながら「さっきも出た草原で一対一の状況ならいいが、今この状況みたいに城の中だったりするとヤバイな。」と真剣に言い続けて
「ザルド以外結界で囲って転移かな草原みたいなとこに、そしてザルドと俺以外を再び転移させてタイマンの状況にして氷魔法のコキュートスで目いっぱい凍らせて倒すって感じかな。」
カ「ザルドと二人で転移では駄目なのですか?」首を傾げて言うとエルムは「イリスと同じ強さなら避けられるんだよ、だから範囲の転移じゃないと連れてけないんだよ。」
カ「王妃はそこまでですか・・・」
エルムは上の右手をカインに向けて二秒待ち何かを射出する、それはカインの体に当たると白く粘着する蜘蛛の糸みたいに拘束した。