ホームルーム
「今日からこの三年三組を担当する山崎だ、よろしくな」
僕らの担任は山崎先生になったらしい。山崎先生は普段はかなりお茶目で面白い先生だが、進路のことや真面目な話になると急に眉をひそめ、真剣な顔つきをする。受験担当の先生にはもってこいなのかもしれない。
「今年からお前たちは受験生になるわけだが、受験は一人の力だけで乗り切ろうとするとかなり厳しい道を歩むことになる。もし何か悩み事があったら家族でも先生、友達でもいい。一人だけで解決しようとしないことが大切だ。」
ごもっともである。頭がいい方のクラスだからかはわからないが、全員が真剣に先生の話を聞いている。
「あ、あとそれと志望校のことなんだけどな。これは今のうちは出来るだけ国立を目指してくれ。私大受験をあまりにも早く決めすぎると科目も絞られることになる。直前になって志望校を変えたり増やしたりすることもあるだろうから、その時に勉強しておけばよかった、とか後悔する可能性が高くなるぞ。」
さっき志望校の話で悩んでいた塚田さんはウンウンと頷いている。
「よし、じゃあ明日と明後日は実力テストだな。みんな頑張れよ、成績表も貼られるからな。」
普段であればここで「エー、嫌なんだけど」「うわー」なんて言う声が聞こえてくるんだけど、今回は全然聞こえてこない。皆んなそれぞれ自分が受験生であるという自覚は持っていると言うことなのだろう。
「よし、じゃあ言いたいことあるか?」
「せんせーい」
「お、どうした福島?」
「学級委員どうします?」
「そうだな、福島でいいんじゃないか?前年度から引き続きで」
「あ、わかりました。じゃあ僕やります。」
こんなに学級委員がすんなり決まるクラスも珍しいものだが、僕たちのクラスメイトはそこまで学級委員などに興味がない人が多い。更に三組のメンバーは基本的に受験組になるので内申点も気にしないのだ。
「よし、じゃあこれから号令は全部福島頼むな。あとは、何かあるか?」
誰も何も喋らないのを確認すると、
「よし、じゃあ福島号令」
「起立、気をつけ、礼」
「ありがとうございましたー」
十分足らずでホームルームは終わったのだった。
「あ、そういえば」
帰ろうとするみんなに先生が
「この後フェスポの集まりがあるらしいから、A団は一年一組、B団は二年一組、C団は三年一組の教室にそれぞれ行ってくれ」
と伝えた。すると今田が僕に
「よっしゃ、二年の教室行こうぜ」
「いいよ」
「そういえば今年でラストフェスポだな」
「どうでもいいよ、そこまで興味はない」
「つれないやつだな、まあいいけど」
こうして、僕と今田は二年の教室に向かうこととなったのだった。