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 夕方には、会議をしていた討伐隊のみなさまは帰られたというので、わたしとサリーさんは執務室に空になったであろう食器をさげに行った。


 ワゴンを押してサリーさんと執務室に行くと、ほかのみなさんは帰られたが、オリバーお兄様だけがまだ執務室に残っていた。


 ルーク様は窓を背にした机に座り、その隣にお兄様が立って一緒に書類を見て、何やら難しそうな話をしてしている。


 それは、13年前にも見たことのある風景で、うっかり、涙が浮かびそうになるけど、我慢だ。


 サリーさんと2人で、無言で食器を片付ける。


「なあ、侍女殿。侍女殿は、魔法の特性はなんだ?」

 不意に、片付けをしているわたし達に、オリバーお兄様が声をかけた。


 わたしはびくっとしてしまったが、サリーさんはにこやかに答える。

「わたくしは水属性です」

「ほぉ、水か。うちの母上や上の妹と同じだな。そちらの侍女殿はどうだ? 見かけない顔だが、新人か?」

 思わず、食器を片付ける手が止まる。

「わ、わたしは風でございます」


 答えて、オリバーお兄様の顔を見ると、こちらをじっと見つめていた。


「……風か。オレと同じだな。わかった。ありがとう」

 お兄様はぶっきらぼうに、そう言った。


「義兄上、なんだ? 今は侍女の属性など関係ないだろ?」

「まあ、そうなんだが。侍女殿が光属性ならいいなと思ったんだ」


 ルーク様は眉を寄せながらも、少し笑う。

「光なわけがないだろう。光属性であれば、こんなところで侍女をしているわけがない。教会で働く方が、よっぽどもいい給料をもらえる」

「おまえのところ、そんなに薄給なのか?」

「義兄上……。そういうことではないのだが……」


 2人が話している間に、すべての食器をワゴンに乗せ終える。

 サリーさんと並んで、お二人に向けて腰を折って頭を下げた。

 そうして、部屋を出ようとすると、オリバーお兄様が、まるでわたし達に言うように、こちらを向いて言葉を紡ぐ。


「光だったらいいなと思ったんだ。ルーク様と相性のいい、光の術者が必要だろ? ローゼリアとうまく連携ができないルーク様を助けてくれるような」


 ローゼリア様とルーク様は、うまく連携できていないの?


 お兄様の言葉に、思わず問いかけそうになるが、ぐっと我慢をして、サリーさんと一緒に執務室を出た。



 ワゴンを押して、廊下を歩く。

 誰も周りにいないのを見て、サリーさんは口を開けた。

「やっぱり、ルーク様と第二王女様はうまくいっていないのね」

「やっぱりって、サリーさんご存知だったんですか?」

「ええ。ここで働いているからには少しは耳に入るもの。詳しくはわからないけれど、討伐には光の術者が必要っていうのは有名な話でしょ? その訳まで知っている人は少ないけど、その理由はね、戦う時にルーク様の属性の火の剣と、光の術者の加護がうまく組み合わさると、討伐に有効な魔法が発動するらしいわ。それが、ご婚約から連携の練習をしても、一度も発動していないらしいの」

「……一度も?」

「ええ。一度も」


 発動していないって、それじゃ、ルーク様の剣の威力が魔物に及ばなくなってしまうんじゃないの?


「ど、どうして発動しないんでしょうか?」

「よくはわからないけれど、息が合わないとでも言うの? 英雄の婚約者が光の術者が望ましいと言われている所以(ゆえん)ではないかしら。お互いが信頼しあっていないとダメなのかもね」

「ローゼリア様とは、信頼しあっていない……?」


 サリーさんは寂しげに笑う。

「あんなに嫌っているのに、第二王女と信頼しあっているわけがないでしょう。……ジーナ様とだったら、きっと息も会ってうまく行っていただろうに」


 サリーさんの言葉に、わたしは身を固まらせた。

「あ、ごめんなさいね。ジーナ様というのは、ルーク様の前の婚約者様なんだけど、残念なことにお亡くなりになってね」

「そう、なんですか……」


 わたしは胸の痛みを隠して、ぎこちなくサリーさんに微笑んだ。

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