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 目を覚ますと、そこには見慣れた自分の部屋の天井が見えた。


 窓の外はまだ明るくて、きっとルーク様の家から帰ってきてそんなに時間が経っていないんだろうと思った。


 ベッドから降りて、テトテトと部屋の外に出ると、メルがわたしの姿を見つけて、大慌てで飛んでくる。

「ジーナ様、お加減はもういいのですか!?」

 背中を押してわたしを部屋へと戻すメル。

「いやあねぇ。具合が悪かったわけでじゃないこら大丈夫よ」

「それならいいんですけど……。今日は無理せず寝ていらしたらいかがですか?」

「そうね。お夕飯を食べたら早く寝るわ」

「お夕飯より先に朝食を召し上がってください」

「え?」


 わたしは窓の外を見た。

 まだ昼間だと思っていた太陽の光は、一周回って次の日の朝の光だった。


 メルに着替を手伝ってもらって、髪をとかしてもらう。

「ねぇ、メル。わたし、あの後どうしちゃったの?」

 メルは鏡の中のわたしを見て髪にリボンをあてがった。

 水色と迷っていたけど、緑にするらしい。


「お嬢様がルーク様のお部屋に入ってからずっと待機していたんですけど、いきなりルーク様が半狂乱になってお部屋から飛び出してきて、わたしもびっくりしてルーク様のお部屋に駆け込んだらお嬢様はルーク様のベッドでスヤスヤと眠っていました」

「えっ、ルーク様が半狂乱?」

「はい。すぐに執事さんがお医師を呼んでくれてお嬢様を診てくださって、眠っているだけだとわかっても、ずっと泣きそうなお顔でお嬢様を見ていましたよ」

「……そう」


 ドレッサーの前の椅子から立ち上がって、食堂へと向かう。

 そこにはお父様とお母様、お兄様とお姉様が揃って朝食を取っていた。

 わたしは少し寝坊してしまったようだ。


 お父様が心配そうにわたしを見る。

「ジーナ、もう大丈夫なのか?」

「はい。心配かけてごめんなさい」

 お兄様とお姉様もわたしに声をかける。

「まったく。ルーク様のところで倒れたと聞いてびっくりしたよ」

「そうよ、それなのに眠っていただけなんて。一体、何をしたの?お母様なんて、夜中ずっとあなたについていて心配なさっていたのよ」

 お母様の顔を見ると、うっすらと目の下にくまがある。

「お母様、ごめんなさい」

 お母様はにっこりと微笑む。

「いいの。顔色も悪くはなかったし、眠っているだけとわかっていたのだし。それより、どうしてルーク様のお宅で眠ってしまったの?」


 みんなが顔をわたしに向ける。

「ルーク様の火傷を治そうと思ったの。全魔力を集中してルーク様に向けたら、ほんのちょびっとだけ火傷の跡は消えたんだけど、消えたのを見たら、なんだか体中の力が抜けちゃって……」


 お兄様が目を丸くしてわたしを見る。

「ルーク様の火傷って、魔獣につけられたヤツだろ? 光の最高位の魔術師が治療にあたっても消えなかったって聞いてるぞ。それを消したのか?」

「うん。でも、ほんのちょっぴり過ぎて、消したって言えないくらいなの」


 わたしが小さくなってそう言うと、お父様は難しい顔をしていた。

 そして、お兄様が少し怒ったようにわたしに言う。

「ジーナ、魔法はまだ習っていないだろう?学校へ通うようになってから習うはずだ。使い方もよくわからないものを使うのは、とても危ないんだ」

「……はい。ごめんなさい。手を見て集中してみたら、なんだかできそうだったので、ルーク様が苦しんでいるなら治してあげたかったんです」


 お父様はお兄様のように怒ってはいなかったけど、やっぱりわたしを注意する。

「ジーナ、まだ魔力の制御ができない子どもは、魔法を無闇に使ってはいけないよ。ルーク様が困っているのを助けたいと言う気持ちは、とても尊ばれるものだが、自分の身も大事にしてあげなさい」

「……はい。本当にごめんなさい」

「もういいから食べなさい。今日は夕飯も食べずに寝てしまったからね。そして、食べ終わったら、お父様と一緒に神殿に行ってみよう」

 お父様は微笑んでそう言った。


 神殿へ連れて行かれる理由がわからなくて、いろいろ考えながらモソモソとごはんを食べて、食べ終わったらすぐによそ行きのドレスを着せられて、お父様と二人、お城へ行く馬車に乗せられた。



「お父様、どうして神殿に行くの?」

 お父様はわたしの目を見て優しく言う。

「ジーナは光の魔法を使ったよね? でもね、まだ子どもだから、たくさんの魔法が使えるわけではないはずなんだ。それが、ルーク様の火傷跡を治すことができたと言っただろう? それが、どういうことなのか、もう一度見てもらおうと思うんだ。それと、こんなに小さいうちに魔法を使って、何か問題があったらいけないからね。それも聞いておきたい」

「ふーん」


 わたしはわかったようなわからなかったようなそんな気分だったけど、おとなしく馬車に揺られた。


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