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3

 少し低い温度でお茶を入れる。

 熱さで口が火傷しそうなお茶もいいけど、少しぬるいほうが疲れてる時にはいい。


 長椅子に腰掛けているルーク様に、お茶を出す。

 ルーク様は、ゆっくりと口をつけた。


「ふ、ぅー……。ああ、胃に染み渡って疲れが取れるようだな」

「ふふ。良かったです。今日は早く寝てくださいね」


 わたしが笑ってそう言うと、ルーク様はわたしの顔を見てじっと見た。


「……? なんですか?」

 わたしが首を傾げると、ルーク様もふっと笑った。

「オレも現金なものだな。胃が緩んだら、腹が減ってきた。食事は要らないと言ってしまったからなあ」


 ルーク様は時計を見る。

 もう、メイドは下がっている時間だ。

「あ、あの。簡単なもので良ければ、わたし作りましょうか?」


 ルーク様が目を丸くして、わたしの顔をじっとみる。

「おまえ、サンドイッチの他にも、作れるものがあるのか?」

「えっ?」

 わたしはまたサンドイッチを作ろうと思っていたので、ルーク様の期待に満ちた目に、なんて答えたらいいか、戸惑う。


「えーっと、出てきてからのお楽しみで……」

 わたしは笑って誤魔化して、ルーク様の部屋を出た。


 わたしの前世は貴族令嬢だったし、現世は裕福な商家の娘だ。

 料理なんてあまりやったことはない。


 サンドイッチはくらいは作れたが、他にレパートリーはなかった。


 うーん。

 どうしよう……。

 お菓子なら少し作れるんだけどな。


 あ! ホットケーキなら作れる!


 厨房の中を探して、材料を揃える。

 あまり甘すぎないように、注意して材料を計る。


 そして、焦げないように気をつけて両面を焼いて、急いでルーク様のところに戻った。


「ルーク様! お待たせしました」

 わたしはルーク様の前に、ホットケーキとナイフ、フォーク、それにバターと蜂蜜を置いた。

「あまり甘くなり過ぎないようにしてありますが、甘味が足りなければ蜂蜜を多めに掛けてくださいね」


 わたしがどうぞと促しても、ルーク様はじっとホットケーキを見つめるだけだ。

 あれ? ホットケーキ、嫌いなのかな……。

 子どもの頃は召し上がってらしたと思うけど……。


「ルーク様?」

 わたしはお盆を抱えて、不安になってルーク様に声を掛けた。

 はっと、わたしが不安そうに見ていると気がついたルーク様は、すぐにナイフとフォークを持って、最初に何も掛けずにホットケーキを一口食べた。

 その後、バターと蜂蜜を掛けて食べてから、またわたしの顔を見た。


 ……味見はしたはずなんだけど、お口に合わなかったのかな……。


「あの、どうかなさいましたか?」

「いや、……なんでもない」

「あの、まずかった…ですか?」

「いや、美味いよ。あの頃と同じように美味い」


 わたしはホッとした。

 ホットケーキだけに。なんちゃって。


 ニコニコとルーク様が食べ終わるのを待って、食器を片付ける。

「お風呂はすぐ入られますか? お支度しましょうか?」

 ルーク様は疲れた顔で少し笑った。

「おまえ、もう帰れ。風呂の支度もサリーがしてくれてある。オレもすぐに済ませて寝るから」


 わたしは食器をワゴンに乗せた。

「はい。ルーク様」

 そして、ワゴンを押してルーク様のお部屋を出る。


「ルーク様、おやすみなさいませ」

「ああ、ニーナ。おやすみ」


 パタン。

 わたしはドアを閉めた。

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