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「腕なんて見てどうするんだよ。顔と同じで醜いぞ」

「いいからいいから」

 わたしは無理矢理ルーク様の腕を掴んで、左腕の袖をまくった。


 ルーク様の腕は、肩から肘の部分に掛けて、広範囲で火傷の跡があった。

 ケロイド状の腕は、裏側はそんなに火傷をしていなかった。

 広範囲に見えるけど、実際は見た目よりも範囲は広くないかも……。


 わたしは右手でルーク様の腕を持つ。そして、左手の人差し指と中指で火傷の一番外側をぐっと押さえた。

「なんだ?」

「ルーク様、うるさい。ちょっと静かにしてて」

 わたしは意識を集中した。


 あまりに酷いルーク様の火傷。

 赤ちゃんの時に襲われてできたものだと言う。

 何も知らない赤ちゃんが、こんな酷い火傷をするなんて。

 きっとルーク様は泣いただろう。


 ルーク様を思って、意識を火傷へ集める。

 強く、強く。

 ルーク様を想う……。


「ふぅ……」

 わたしは指をどけてみた。


「ジーナ……火傷が消えてる……」

 ルーク様はわたしが手を退けた後の自分の腕を見て、目を丸くした。

 わたしも見てみるけど、ルーク様と違ってわたしはガッカリした。


 思ったよりも消えていなかった。

 消えた火傷はわたしの小指の先ほどで、パッと見さっきまでと変わりないように思えるほど小さかった。

「ごめんなさい、ルーク様。これが限界みたいです」

「いや、ジーナ、すごいぞ。今までいろんな光の術者が治療に当たったが、火傷を消せたものはいなかった」


 光の術者はとても少ない。

 ただでさえ、4つに分けられる属性の中、光の術者だけ生まれる割合が少ないからだ。

 1/4より少ない確率で生まれる光の術者は、癒しの能力を買われて協会に属することが多い。

 魔力が少ないとできないけれど、癒しの力は他人の悪いところを治せるから。

 魔力の多い人は教会に属し、病気や怪我人の治療にあたる。

 ただ、いくら魔力が多くてもできることは限られていて、傷なら擦り傷、病気ならほんの少し痛みを和らげることくらいしかできない。


「火傷を治そうとしてくれた光の術者はどんな風にやったの?」

「ジーナがやったように、火傷の上に手を置いて祈ってた」

「それでも消えなかったんだ……」

 わたしの場合、火傷を全部消そうとは思っていなかったのが良かったのかも……。

 狭い範囲に集中して力を加えた。

「ルーク様、わたしはなるべくルーク様に会いにきます。少しずつ、消して行きましょう。お顔から消して行った方が良かったですかね?」

「いや、腕からでいい。剣がうまく振れないと、使命が果たせない」

「そうですか」


 バケツまで被らされたのに、使命を果たすために腕からの治療を選ぶなんて。

 わたしはルーク様を尊敬します。


「でも、ルーク様、ごめんなさい。なんかもう、立てないです……」

 わたしは集中し過ぎて疲れたのか、魔力を使い過ぎて疲れたのかわからないけど、疲れ果ててルーク様のベッドにそのまま横になった。

「えっ、ジーナ? おい! ジーナ!!」


 ルーク様のベッド、フカフカで気持ちいい……。


 その感想を最後に、わたしの意識は途絶えた。


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