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 チャイムと共に、30代くらいの眼鏡をかけた教師らしき男の人が入ってきた。

 白いブラウスにサスペンダーが清潔そうに見えるが、ヒゲはボウボウ伸びていて、無精なんだか清潔なんだかわからない先生だ。


 先生は教壇に立ち、口を開く。

「あー、席について。今日から君たちはAクラスの生徒となった。クラスは一年ごとにテストの結果で変わっていくので、なるべくなら卒業までこのクラスに居られるよう、努力するように」


 そうか。成績が落ちると、クラスも落ちちゃうのか。

 がんばらないと。


 先生はしゃべりながら、何やらプリントを配り歩く。

 わたしの手元にも来たので、内容を確認すると、週ごとの時間割と、1年間のカリキュラムが書かれていた。


「みんな手元にプリントは行き渡ったな。見て分かるように、だいたいはこのクラスで勉強をしていくが、週2回の魔法学科だけは種類別の授業になる。火、水、風の生徒はそれぞれ集まって授業を受けるように。このクラスには、光の種別の生徒が2人いるが、光の魔法だけは全学年まとめたクラスで授業をやるので、特別室へ行くように。光の生徒は10人にも満たないくらいしかおらんから、仲良くしろよ。あとは、男女別になる剣術とマナー学科は全学年合同でおこなう。以上、何か質問はあるか?」


「はい」

 後ろから女生徒の声がする。

「あー、モニカ・フリークか。なんだ?」

 先生の言った言葉にびっくりして後ろを振り返ると、モニカ様が手を挙げていた。

「魔法は学園に入ってから学ぶことになっていますよね? その決まりを破って、先に魔法を使っている人はずるいと思います。魔法学科も成績がつきますよね? そんな人には、ペナルティが必要ではないですか?」

 モニカ様は嫌な笑いを浮かべてこちらを見た。


 これはわたしのことだ。

 確かに、魔法は学園で習うと言われていたが、わたしはちゃんと神殿で、ルーク様の治療は続けてもいいと言われている。


 反論してクラスの注目を浴びるのも嫌だし、どうしようかと思っていると、先生がモニカ様の問いに答えた。

「別に禁止されている訳でもないからいいだろう。だいたい、なんで学園に入るまで魔法を教えられないかと言うと、それだけ魔法が使えるということは重いからだ。たとえば、モニカ嬢の言う先に魔法を使った者も、ハイリスクな状況で魔法を使ったはずだ。ちゃんと操れない魔法は凶器だ。

 火の魔法は暴走すればあたり一面が火の海になるし、水の魔法も水害を起こせる。風の魔法も竜巻を起こせるくらいは大きなものになる。暴走させれば、術者は衰弱する。

 魔法は使ったらその分疲れるんだよ。それが暴走したらどうなるか。運が悪けりゃ死ぬな。

 それでも、フライングして魔法を使いたいなら、人様の迷惑にならないところでやってくれ」


 先生は黒板に寄りかかり、腕を組んだ。

「でも、先生。光の魔法は暴走しても怪我や病気が癒されるだけではないですか。本人が疲れるくらい、ハイリスクとは言えないのではないでしょうか」


 先生はため息をつき、教卓に両手をついた。

「何が言いたいのかわからんが、モニカ嬢は光の術者なら光の魔法の勉強くらいしてこい。光の魔法がなんであるかくらいは、勉強してもいいんだぞ」

「……どう言う意味でしょうか」


「光の魔法は、他人を癒せる。それがどう意味か、考えたことはないのかね」

 モニカ様は不服そうに「ないです」と答えた。


「光の魔法を間違って使えば、おのれの命を縮めるんだ。他の魔法と違い、自分の命を魔法に変えるとこになる。光の魔法の暴走は、術者の死を意味する。モニカ嬢、君はきちんと魔法学科を勉強するように」


 モニカ様は、悔しそうに俯いて「はい」とだけ答えた。

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