議会にて
王宮に到着して、意気揚々と馬車から降りるルーク様を見て、申し訳ない気持ちになる。
すまん! ルーク様。
おそらく、ルーク様は離職することは叶わないだろう。
オレひとり、王宮を去ることを許してくれ。
オレはこのまま王宮で働くことはできないんだ。
猫の額ほどではあるが、領民の生活がオレにかかっている。……はず。
オレが子爵家の仕事をしていない今は、父上が雇った家令が領主補佐として、本来オレがやるはずだった仕事をしている。
父上も教会のボランティアをしている時間があるから、どうしても実務は手伝ってもらう必要があり、元々の家令の他に、家令補佐を雇ってなんとかやっている。
それも、議会を辞めればオレが家令補佐の仕事ができるから、父上はもう少し楽になるはずだ。
父上は報告書をくまなく読み、帳簿と差異がないかきちんとチェックしている。
今まで苦労してきた分、父上には早く楽をさせてあげたいと思う。
オレが急に討伐隊に入りたいと言った時、父上はびっくりしたようであったが、何も言わずにすぐ許可をくれた。
問い詰めようとした母上を止めてくれた。
それが、オレにとってはとてもありがたかったのだ。
ルーク様とふたり、大広間会議室へと足を運ぶ。
討伐会議に使っていたところより、大きな会議室だ。
オレたちは、いつものように末席に腰を下ろそうとすると、会議室へ案内してきた侍従がストップをかけた。
「デイヴィス卿とミラー卿はあちらの席になります」
「? いつもここに座っていたが?」
「議員が一新されましたので序列に従うと、上が抜けた分デイヴィス卿とミラー卿の席順が上がるのです」
王族の嫌がらせにより、侯爵家なのにルーク様は末席に座っていたが、王族がいなくなったのをきっかけに、普通の席順に戻ったのだろう。
トコロテン式に新入りは末席から入り、古株は押されていく感じか?
別に椅子なんてどれも同じだ。
どこに座ってもいいだろうと、オレたちは素直に侍従の案内にしたがった。
定刻になり、第一回目の議会が開かれる。
長方形にならべられた席の真ん中に座るのは、今回の混乱の中、推薦と実積を鑑みて据えられた代表だ。
見かけは若々しく、30代になりたてといった印象だが、実年齢は40歳近いらしい。
柔らかな紅茶色の赤毛が、より一層若々しさを演出している。
彼は立ち上がり、議員全員に挨拶を述べた。
「初めましての方も多いと思いますが、ジュリアン・ラーケンです。おそらく、父が宰相をやっていた関係で、この一番大変な時期の首相を押し付けられたと思っています。しかし、やるからには結果を出して、必ずや王政時代よりも良い新時代を築きたいと思っていますので、よろしくお願いします」
ジュリアン・ラーケンは、爽やかに笑って頭を下げた。
すると、わっと拍手が巻き起こった。
謙虚さもあり、芯も強そうだ。
これなら国政は大丈夫だろう。
オレも、安心して領地経営に専念できる。
「拍手ありがとございます。まだ決まっていない議員の席もありますが、ひとまず進めさせていただきます」
ジュリアン・ラーケンが座った所で、オレとルーク様は目線で合図を送り、挙手をした。
「ジュリアン代表。ここからは新政権での会議になりますので、わたしとミラー卿はここで失礼させていただきたいと思います。一応、議会に名を連ねた者として、離職願いをしたためておりますのでご査収くださいますよう、お願い致します」
ルーク様が立ち上がり、離職願いをジュリアン代表の前に置いたのを見計らって、オレも同じように離職願いを提出した。
会議室内がザワザワと騒めき始める。
そりゃそうだろう。
オレはともかく、ルーク様は議会に残って然るべき人間だ。
その騒めきを受け、ルーク様は大臣達の座る席に向き直る。
「合わせて、わたしルーク・デイヴィスは侯爵家後継者の座を弟アロンに託し、貴族籍から離籍するため、離籍届も提出致します」
ルーク様はオレが置いた離職願いの上に、重ねて離籍届を置いた。
ジュリアン代表は慌てたように出された3通の書類に目を通した。
その間に、ルーク様とオレは席に戻る。
退席するために身の回りの荷物などを片付けていると、案の定ジュリアン代表から待ったの声が掛かった。
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さて、長い間続いてきたこのお話しですが、間も無く最終回となる予定です。
ついつい余計なエピソードを挿入してしまうため、思っていたよりも長くなってしまいました。
お待ちいただいたみなさまには、大変申し訳ございませんが、今しばらくお付き合いくださいませ。
最終回は4/19を予定しております。
もうしばらく、ニーナ&ルークにお付き合いくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。




