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「あら、失礼致しました。気付きませんで申し訳ございませんでした。モニカ様」

 お姉様は席を立ち、上座を譲った。


 侯爵令嬢であるモニカ様が、子爵以下の身分のテーブルに着くのは珍しい。

 エマお姉様は、モニカ様が話しやすいように、話題を選んで振る。

「今、もうすぐ入学になるわたくし達の寮生活について話しをしておりましたの。モニカ様もわたくし達と同じ年にご入学ですわよね? ご自宅から通われますの? 寮に入られますの?」


 お姉様の問いかけに、にこやかにモニカ様はお話しになる。

「そうですわね。わたくしはタウンハウスが学園から遠くございませんので、タウンハウスから通いますわ」


 おおー。

 さすが侯爵家だ。タウンハウスが王都の中心地にあるなんて、お金持ちだ。

 それより、そろそろケーキを食べてもいいかしら……。


 わたしには関係ない話題だと思い、どのケーキを食べようかバレないように視線をテーブルに巡らせながら、何かがわたしの中で引っかかった。


 お金持ち?

 フリーク侯爵家は、侯爵様の賭け事の失敗で火の車だとさっきお母様が言ってなかったかしら。

 でも、モニカ様は豪華なドレスに身を包み、そんなことは微塵も感じさせない。

 噂だけで、そんなには被害がなかったのかもしれないわ。


 10才組みのよくわからない話には入らず、わたしとアンリエル様は微笑み合って、ケーキに手を伸ばそうとした。


 不意に、モニカ様にわたしは声をかけられる。

「ところで、ジーナ様。わたくし、一度ジーナ様とお話ししてみたいと思っておりましたの。まだ学園にも入っていらっしゃらないというのに、もう魔法が使えるんですよね? 同じ光の魔力持ち同士、親交を深めたいと考えておりましたのよ」

「は、はぁ」

 身分が上のモニカ様から話しかけられて、ケーキに手を伸ばせるほど、わたしは社交を知らないわけでもなかった。

 知らなかったけど、モニカ様も光の魔法持ちだったんだ……。


 くーっ。アンリエル様いいなあ。

 いちごのミルフィーユは、私も狙ってたのに。


 モニカ様からのお話しを待っていると、モニカ様は優雅に口元に扇子を充ててわたしを見た。

「ジーナ様は、小さな頃から魔法の練習をなさっていたの?」

「いえ、みなさまと同じですわ。生まれてすぐに教会で洗礼を受けて、その時に魔力測定で光の魔力があるとわかってからも、そのまま何もしておりません。だって、魔法の使い方を学ぶのは、学園に入ってからですもの」

「……そうよね。では、ルーク様の火傷の治療はどうしてできるようになったのかしら」


 ……来た。

 これはいろんなところで訊かれていることだけど。

「特に、魔法を使おうと思って使ったわけではありません。現に、他の魔法は習っていないので使えませんし」

「では、特別に何かを習ってできるようになったわけではありませんのね?」

「……ええ、まあ、そうですけど……」


 なんか、引っかかる言い方だなあ。

 実際、特別に何か修行をしたわけではないからいいんだけど。


 モニカ様は、幸せそうににっこり笑った。

「そう。教えてくれてありがとう。親交を深めるために、少し二人で庭を散歩いたしませんこと?」


 え?

 わたし、まだケーキ食べてませんけど?


 断りたいけど、侯爵令嬢から誘われて断るわけにはいかない。

「ええ。ぜひ」

 わたしは心にもないことを言って、席を立った。


 わたしが歩き出そうとすると、エマお姉様がわたしに耳打ちをした。

「なるべく、屋敷の使用人の目の届くところで話すのよ。遠くても、見えるところで」

 わたしは黙って頷いた。




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