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「ジーナ、どういうことだ?」

「多分、わたしの中に、ニーナとジーナの記憶があるので、魔法属性もニーナとジーナ両方の属性がわたしについてしまったんだと思います」


 お兄様は口元に手をあてて、考え込んだ。

「そんなことがあるのか……。いや、確かに生まれ変わりというものが本当にあるんだから無いとも言い切れないが」

「わたしが生まれた時に測定されたのは風の魔法だけです。光の魔法は測定されずに、後でその属性があることがわかったんです」

「それは誰かに言ったのか?」

 わたしは静かに首を振る。

「いいえ、誰にも。お兄様が初めてです」

「……そうか」


 お兄様は腕を組んで何やら難しいお顔をなさっていた。


 まあ、考え込むのは当然だろう。

 なんと言っても、死んだはずの妹が戻ってきたばかりか、普通は一つの属性しか持てない魔法を、二属性持っていると告白されたのだ。


「お兄様、わたしも二属性がわかった時には考えました。教会に名乗り出て、光の属性を認めてもらおうかと。でも」

「そうだな。黙っていたというその判断は正しい。教会や王家が、二属性への可能性を知ってしまったら、ニーナは捕らえられ研究材料(モルモット)にされるだろう」


 モルモット……。


「やっぱりそうですか」

「そりゃそうだろう。魔物と対峙するのが決まっている今、光の術者はどれだけ居ても邪魔にならないどころか、歓迎されるだろう。それが、もし、二属性持ちの人間を増やすことができれば、人員不足も解消される。元より光の術者は少ないんだし」


 お兄様は険しいお顔をされて続ける。


「そして、王家はおまえが思うよりも非情だ。前世ジーナの時に国王には会っていると思うが、優しそうな笑顔の裏では、人を人とも思わないような考えを持っていて、その息子である王太子も爽やかな笑顔の裏は、残酷に民を切り捨てられる王と同じだ」

「……お兄様。ローゼリア様を見ていて、なんとなくそうではないかと思っていました」

「そうだな。あんなに苛烈な姫ができるような、そんな家族なんだろうな」


 どう考えても、教会に行くことはできず、光の魔法を教えてもらう伝手はなかった。


「ひとまず、独学でやっていくしかないだろう。ジーナは時間があればうちに来い。うちの庭を貸してやる。魔法の暴発が怖くて、他では練習できないだろう?」


 そうよ!

 そうなんです、お兄様!

 デイヴィス家のお庭で何かあったらいけないし、他の人に見られてもいけないし、練習場所に悩んでいたんです!!


「でも、ミラー家の庭だって、庭師さんが一生懸命手入れしている庭なのに、いいんですか?」

「かまわん。風の魔法なら暴発しても突風が吹くくらいだ。花は落ちるかもしれないが、来年また咲くだろう。それに」

「それに?」


 わたしが首を傾げると、お兄様がそれを見て微笑む。


「可愛いジーナが帰ってきたんだ。オレにもちょくちょく会いにきてくれ。体は違えど、おまえがここに居ることが嬉しい。墓標の冷たい土の中に、おまえが居るわけじゃないことが嬉しいからな」

「お兄様!」


 わたしはまた、お兄様に抱きついた。


 生まれ変わっても、こっそりと見ているしかできないと思ってた。

 わたしがジーナであると、認めてもらえる訳はないと思っていた。

 荒唐無稽で、有り得ないような話を、お兄様が信じてくれることが嬉しい。


 そして、あの頃と変わらず、こうして頭を撫でてもらえるなんて、信じられないくらい、幸せだ。


 ぎゅーっと、手に力を入れると、ドアがガタンと音を立てるのがわかった。


 わたしとお兄様が振り向くと、そこにはお母様が立っていて、わなわなと震えていらっしゃった。


「オ、オリバー。あなた、結婚もせずフラフラしていると思ったら、まさかこんな……。しかも、ジーナの部屋で一体何をしているの。こんな、年端もいかない他所様のお嬢さんをこんなところに連れ込んで……。あ……」


 わたしとお兄様が茫然とお母様を見ていると、お母様はその場にずるずると座り込み、気を失った。

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