その駅では名前の無い幽霊が現れると聞きました
駅に纏わる怪談と言えば、駅で亡くなった方の幽霊を目撃する話が思い浮かびます。
それは自殺だったとも事故だったとも言われています。死者二名の列車事故。
特急に飛び込んだ男性は、一瞬で亡くなったのです。バラバラになった死体の首はホームを飛び、別の男性に直撃したと聞きました。
その駅で目撃される幽霊は、スーツ姿の男性だという話です。
さて、その幽霊はどちらの方なんでしょう。
特急に飛び込んだ方でしょうか。それとも巻き添えになった方でしょうか。
何処の地方の何という駅なのか、特に知りたいとは思いません。
そういう話もあるんだろうな、と思うだけです。
幽霊は、最終電車が出た後、乗り遅れた乗客に目撃されると言います。
何故、乗客なんでしょうか。
そんな田舎の駅なのに、毎日どれだけの人が最終電車に乗り遅れるというんでしょうか?
ええ、特急が「通過」してしまう田舎の駅ですよ。
飛び込んだ方を一瞬でバラバラにしてしまう通過列車がある駅。
けど無人駅では無いんだそうです。駅員さんもいる駅なんです。
けれど、駅員は幽霊を目撃しない。
何故なんでしょう。
一人、最終電車の去ったホームに立ち、虚ろな目で線路を眺めている幽霊。
少し酔いの回った乗客が、そのなんとも言えない薄気味悪さから目を離せずにいると、その男は、ゆっくりとこちらを振り返るんだそうです。
最初は、酒の酔いもあり、自分と同じように電車に乗り遅れてしまったんだろうな、と同情とも連帯感とも言えぬ妙な気持ちでいるんです。
でも、振り返るんです、その男。
振り返るのが怖いかって?
怖いらしいですよ。
何故かって?
わからないです。でも、恐ろしいそうです。
そもそも誰に聞いたって?
ええ、まあ、誰というか、その人に、というか。
ただ・・・
その幽霊は、最終電車に乗ることが出来ない。
いや、そうじゃない。
彼は永久に家に帰れない。
だってそこで、彼の人生は終わったわけだから。死んだんだから。
冷静に考えれば、最終電車に乗り遅れる乗客よりも、最終電車から降りた乗客の方がたくさんいる。
けれど、目撃するのは最終電車に乗れなかった人だけなんだそうです。
どうしてなんでしょうね。不可解です。