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白夜 極夜

極夜 続・白夜

作者: 山目 広介

 白夜という話が前提です。

 運よく予約が取れ、またここに来ていた。

 今回は一人だ。

 オーロラ観光もタイミングよく初日に見ることが出来た。

 今はもうすぐ正午という時間。外で南の星空を眺めている。

 南の空が白じむ中、それでも陽が昇らないという現実を噛み締めるための儀式だ。


 ◇◆◇


 あのあと救助されて病院に搬入され、日本に帰り、何故か早々に裁判が行われた。

 アキラの裁判だ。民事ではなく刑事だ。

 用意されていた、いくつもの証拠。

 証言の録音やタマキに至っては遺体がもはや証拠そのもの。

 被害者という形で傍聴席から聴いていた。

 暴露される真実。

 何故殺したのか。死にたいと思っていた者の思い。その状況。

 リークされていたのか記者もいた。


「異議あり」


 という有名なセリフも原告でもないものたちには発言できない。

 騒がしくして邪魔しようとし、暴れたが追い出される始末。

 それを利用して逃げたやつも。

 2回目からは傍聴席には他の『被害者の家族』たちは来なかった。

 シノブの場合は会社だったが、経営者が親族だったようだ。

 多少ニュースにもなったが、それだけだ。

 もしかしたら嫌がらせとか受けたかも知れない。だが分からない。

 そして、また別のニュースに埋もれていった。


 ◇◆◇


 結局アキラは死刑になった。

 まだ執行されてはいない。

 この光景の写真とともに手紙を送ろうと思う。

 ユズルたちとの写真もあのあと回収していた。

 皆との思い出。

 これは本当にアタリだったのだろうか。

 一人残されるこれが幸福だとはとても思えなかった。

 新たな人生を歩むためには何か初めなければならないのだろう。

 どうするか。

 そうだな。次は亡くさないように助けられる計画で考えるか。

 アキラにもアイデアがないか手紙に書いて相談しよう。

 一人じゃ悲しすぎる。

 以前は一人でも問題なかった。

 だが友人が出来て、それを失って、孤独という言葉が初めて理解した。

 あんなちょっとだけの、傷の舐めあいのような関係でも楽しかったんだ。

 嬉しかったんだ。仲間と呼べる人たちが。

 もっと別の計画だったなら……

 日本人らしく無神論者だったが今なら少しは宗教も悪くはないのかも知れない、と思いつつ。

 それでも宗教に逃げ込めない。

 強いのか弱いのか。

 逃げられない者たちの捜索でも始めよう。

 少しでも助けられるように。

 逃げられるように。

 生きられるように。

 明日が怖くないように。

 少しでも希望を分けられるように。

 白夜のように極夜のように。

 陽がまた昇らないという絶望の中の希望の光のように。


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