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車庫を振り返る。煙が空高く昇ってる。窓にフタをすればよかった。と今さら気づく。後ろ髪を引かれながらも出来るだけ早く遠くへ。


それでも松浦はかなり元気になった。身体が驚くほどに軽い。早足で道路を歩き続けた。

三十分程で高速道路から降りる道が見えた。が車の跡はまっすぐ向かっていた。

松浦もまっすぐ歩く。

お腹が空いてくるがお湯を沸かす道具と燃やす物が見つからない。

カップ麺とゴーグル以外何も持ってこれなかった。ライターだけは何個か絶えずポケットにある。高速道路から下へ降りられる場所もあるがどれも危険過ぎる。滑り落ちる事は出来るのだが登るのがほとんど不可能。せめてロープだけでも持ってくれば。せめて鍋だけでも。せめてツツラ突きだけでも。


サービスエリアまで十五キロの看板。

太陽で時間を判断する。おそらく昼過ぎ

。松浦はため息をついたが足は止めなかった。長靴と雨ガッパで身体が暑い。脱ぐと寒い。ジャンバーにすればよかった。と後悔の数だけが増えていく。減っていくのは体力。

それでもひたすら歩き続ける。軽く感じたカップ麺の袋が重く感じてくる。がこれだけは大切にしないといけない。

車の跡を見ながら、俺も車に乗りたいと恨めしく思う。どこまで続いてるのか。ひょっとしたらただ通り過ぎてくだけかもしれない。ガソリンが尽きるまで何キロ先だ?佐々木達は俺を死んだものだと思って諦めてるかもしれない。なら別に佐々木達を追いかける必要もない。一人の方が気楽だ。カップ麺もこれだけあれば冬は凌げる。こんな苦しまなくてもいいんじゃないか?

何度も挫ける。だがそのたびにアユミやユウキ、佐々木の顔が浮かんでくる。一緒に食べたい。熱いカップ麺を皆で食べる。きっと皆笑う。喜ぶ。


食料以上に佐々木達が大事だと松浦は思った。


もし殺されていたら。瞬時に殺意が沸く。もしアユミが病気のせいで死んでいたら。俺は元に戻りあの連中を殺す。本気でそう思った。殺す方法を考えながら歩く。あの町を燃やす。商店街を燃やす。多分地下鉄に住んでいるのだろう。地下鉄を塞いでやる。燃やし尽くしてやる。

悪態をつきながら歩く。怒りに任せて腹が減ってるのを誤魔化す。





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