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物音はしない。聞こえてこない。
佐々木達の方に向かってるのか。焦りで起き上がる。
慎重に移動する。商店街だけあって家屋は密接しているので危ないながらも移動できていく。
二人組を見つける。まだ探しているのか。やり過ごす事は出来るが殺すべきか。向こうはこちらに全く気付いていない。二人組は武器も待っていない。ナイフか包丁か。
いや、違う。リュックを背負ってる。風が止んだから表に出て来たのか?もしくは移動中の人間か。ヤツらとは全く関係ない人間。
松浦は少し悩むも声をかけた。
[おい。おい。おーい]
少しずつ声を上げる。二人組が見上げる。
[この辺りは人間狩りをしてる奴らがいる。気をつけろ。足跡で必ず見つかるぞ]
男の一人が拳銃を向けた。松浦は隠れる。多分、威嚇だ。無駄撃ちはしないはず。出来ないはず。
[とにかく気をつけろ]
松浦は怒鳴った。沈黙が続く。ゆっくり覗くと二人組は居なかった。
多分、これで撹乱出来る。ヤツらが二人組の方に向かってくれると助かる。
屋根の移動が無理になり仕方なく地面に降りる。足跡が付くが仕方ない。なるべく細い道や家屋の隙間を通り、隠れ家に着いた。
道路に雪の足跡は無い。佐々木達はおそらく裏から廻って入ったのだろう。松浦は裏手に行く。足跡が山の方に続いてる。三つの足跡。佐々木とユウキとアユミは移動出来たのだ。
安心しながら一応、家に入る。やはり誰も居ない。風呂場にノート。英語の羅列。Pという文字に印。パーキングエリアの事と察する。
アユミの具合は大丈夫なのか?急いで佐々木達の跡を追う。