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向こうの方からも笛の音が聞こえた。罠だった。

佐々木は山ちゃんを殴り松浦とユウキに、逃げろ。と叫ぶ。


[騙したな]

松浦は逃げずに静かに言った。

[仕方ねえんだよ。こうしないと生きていけねぇ]

うずくまったまま山ちゃんは言った。松浦は手にしたバッドを振り上げた。松浦の中では山ちゃんは既に死んでいた。

[まさか、殺す事はしねぇよな]

松浦はバッドを力いっぱい振り下ろした。俺一人だけ騙すのなら殺さなかった。だが佐々木やユウキまで騙した。危険な目にあわせた。絶対に許せなかった。


[馬鹿やろう。早く逃げるぞ]

佐々木の怒鳴り声。既に佐々木達は走ってく。松浦は我に帰りバッドを捨てて走り始めた。

佐々木とユウキの姿が見えなくなった。が足跡が残ってる。当然、追いかけて来るヤツにも分かる。


途中で足跡が二つに別れてた。佐々木とユウキは別々の道を行ったのだろう。松浦は迷った。

店舗と店舗の路地に向かう。途中の階段から二階へ。屋根に飛び移る。滑りやすい。屋上に登る。それだけで息切れ。

遠くからかすかに声が聞こえる。


松浦は、自分のせいだと思った。山ちゃんを疑うべきだった。

看板の一文字の板を引きちぎり、声のする方へ思い切り投げる。他に何か投げる物がないか探す。

ベランダへ飛び降りる。危うく落ちるところだった。

ベランダにあった酒瓶を遠くへ投げる。割れた音が聞こえる。違う方へも何個か投げる。


投げる物がなくなる。ベランダから屋根へ。屋根からベランダへ。

アーケードの日差しから隣のベランダへ。

息が切れる。何回も深呼吸するが整わない。ウィスキーの瓶。違う方向へ投げる。

何かが転がって大きな音が聞こえた。


誰もが上を探すだろう。時間稼ぎだ。

何人居るのか聞き耳を立てる。自分の荒い呼吸しか聞こえない。喉が乾く。雪を口に入れる。低体温症になる可能性がある。が構わなかった。自分が囮になる時点で、自分は既に死んだものと決めていた。


……別れろ。

というかすかに聞こえた声。バラバラに別れて探すらしい。少なくとも三手か。いや二手か。


果たしてしつこく探すだろうか。山ちゃんの価値は低い。だからああいう役目しか出来ない。

殺された山ちゃんの為に探す。労力に見合わない。


松浦は何人かでも殺そうと決めていた考えを変えた。このまま隠れ潜む。


違う方向に瓶を投げる。何も音がしない。再び投げる。何かに当たった音。


なるべく高い建物を探す。そこに行こうと考えたが、追いかけてくるヤツらも同じ事を考えると思い辞めた。



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