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[もしこの冬が無事に過ごしきれたら裸でお風呂に入るわ]
アユミの言葉にユウキが顔を見た。
[ホント?]
アユミのうなづきに、ユウキの顔が明るくなる。
[松浦さんとも?]
[もちろん。四人でまた入ろう]
アユミは笑った。
[石鹸やシャンプーがあったらオッパイも触っていいわよ]
アユミは頭をかしげてイタズラな目で笑い見る。こういうバカ話はお手の物だ。
[知らないと思うけどユウキが思ってる以上にオッパイって柔らかいんだよー。女の私もたまに他の女の子のオッパイ触るもんね。ね、どっちのオッパイ触りたい?]
[え?両方じゃないの?]
[当然よ。どっちかよ。片方は松浦]
男をからかうのは楽しい。佐々木も笑ってる。
[えー。どっちがいいかなぁ]
ユウキの真剣な問いに佐々木が声をあげて笑った。
どっちも同じだわ。アユミは思いながら、
[どっちが柔らかいかな]
アユミは服の上から自分の胸を揉んでみせた。
[今はダメなの?]
[生き延びてお風呂でね。なにより服の上からじゃ全く分からないわよ]
それからアユミは笑顔を消して真面目に言った。
[だから皆して元気に生き延びようね]
シンミリな空気になる前に佐々木がそれを打ち消す。
[男のエロパワーをナメるなよ]
佐々木が言った。
[そんなのイヤ程知ってるわよ]
アユミは声を出して笑った。
肌は寒く、身体は冷たいが心はあったかくなる。
佐々木はアユミをみつめながらコップを掲げた。アユミもコップを持ち上げ乾杯の仕草をした。
佐々木がソリに荷物を載せたり整理をし始める。いつでも移動出来るように。
アユミは車で休むと言い車内に入る。
ユウキも横になっとけ。と佐々木の言葉にユウキは従う。
風と雪は強くならず、でも弱くもならない。
アユミは凄くイヤな予感がした。間に合えばいいが。とにかく寝て体力の回復を。と目を瞑った。