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それでも四人は冬に耐えた。他の人間に比べたらはるかにマシな生活なはずだった。
おそらく布団に入りっぱなしの生活だろう。外に出るメリットが無い。かといって部屋で何かをやる事もない。余計な行動はお腹を減らすだけだ。
まともな人間ほど、そのうち思考は朦朧とし、朝か夜かの時間の概念がなくなる。そして悲観的になる。餓死や寒さで死ぬよりも、自殺の死が多かった。
佐々木がそう言った。
生きてるより死んだ方がマシ。
生きていてもいい事がないからだ。
一年、二年目は生きるのに必死で、希望もまだ残っていた。それが三年も変わらない生活だと希望も消え、必死さもなくなる。産み出ててくるのは絶望感。
独りは気楽だ。だがその分全てを自分で背負いこむ強さが必要となる。
ある真夜中、大きな地響きと共に建物が揺れた。四人慌てて起き出す。佐々木がたくさん上着を着込み外に出る。物凄い風と雪。まともに立つ事すら出来ない。
聞こえてきたのは裏側。佐々木は滅多につけない懐中電灯を頼りに裏側へ周る。足元がぬかるむ。雪崩だった。建物に寄り添うように木々が倒れおぶさっている。
向こう側にライトを当てるも吹雪の雪が反射して分からない。何回も懐中電灯の雪を拭きながら当てるも分からない。
佐々木は諦めて戻る。
三人心配と不安の顔で中から覗いてる。
冷たい雪と風と共に佐々木が中に入る。アユミが熱いお茶を渡しユウキが雪を払う。
[雪崩だ。程度は分からん。建物の壁を調べるんだ]
佐々木はお茶も飲まずに言った。
[アユミは持っていける荷物の用意を]
言いながら佐々木も食堂や飲食スペースの壁を見に行く。
飲食スペースの角側に亀裂。そこから少し風が出ている。他は大丈夫そうに見える。
[明るくなるまで何にも出来ない。着込めるだけ着とくんだ]
佐々木は言った。最悪、すぐに建物から出なければならなくなった。
外は暗闇。そして物凄い風の音が鳴り止まないでいる。