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[今まで一緒だったメンバーはどこもギスギスしてたわ。特に女が数人いると最悪ね。嫉妬されて大変だったわ。もちろん男にも…]
アユミは最期の台詞を少し強めに言葉を濁し石を拾い遠くに投げた。
[ねぇ、佐々木はずっと二人だったの?]
佐々木はアユミの問いにうなづく。嫁は亡くなったのだろう。
松浦がその事に察してくれたらいいが。とアユミは思いながら言った。
松浦だけが辛い思いをしたわけじゃない。
[さっ、暗い話はこれでおしまい。何すればいい?]
アユミは声質を高めて言った。いつまでもこんな茶番を続けても仕方ない。過去は変えられないのだ。
アユミは、不幸話はそれより少し大きめの不幸話をする事で、かき消える事を知っていた。
[まずは探索だな。使える物の把握と選別。きちんとした寝床。俺とユウキは松浦の言ってた降りられる場所へ行ってみるよ。できれば食料も]
佐々木は立ち上がり、夕方には帰る。と言った。
アユミと松浦は施設内に入り、ゆっくりながらも店内を物色する。店内は泥とホコリまみれだったが異臭はしない。腐敗する物が無い事という事。
松浦は棚を調べながら、自分が見捨てられない事に安堵を感じていた。別に一人になっても困る事はないのだが、寂しくなるのが辛い。アユミが、このメンバーはいい。と言った。そこに俺も入ってる。それが嬉しかった。役に立つ事は地の利が詳しい事くらいだ。あとは自分一人だけならなんとか生き延びる知恵くらい。それも隠れながらの。
重い荷物を運ぶカートを見つけそこに使えそうな物を乗せて表に運ぶ。その繰り返しで夕方になった。
水は飲めそうだった。この町は天然水の美味しい町と言われるだけあって水源だけは豊富だ。このパーキングエリアでも目玉の一つとして水質やら水の説明の看板が掛かってる。