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朝方に松浦が目覚めた時には誰もが目を覚ましていた。ちょうど皆も起きたところよ。とアユミが言った。
まだ施設内から黒い煙が出続けている。
風向き次第で表の方に煙が来る可能性がある。いつまでも屋上にいる訳にはいかなくない。
いつもの場所から降りて佐々木が少しドアを触る。ドアが少し熱くなっている。という。
[バックファイヤーの可能性もある]と佐々木は言った。
ドアを開けると酸素が入り勢いよく火が出るらしい。
ホースから出る水では役に立たない。
松浦と佐々木は川のイケスから魚をたくさん捕りアユミは木切れを拾う。
ユウキは物干し竿にビニールシートを被せて煙避けと日除けにする。
魚を片っ端から焼いていく。
誰もが汚れてる。一昨日までと天と地がひっくり返ったような姿をしている。
アユミと松浦の足は血豆が破れて酷い有り様。佐々木に、もう動くな。と言われる。
水と魚しかないが食料。そしていっときだが安全な場所は確保できた。だが見えない不安が覆う。
誰も、どうする?とは言わない。
それぞれ物思いに耽っている。
昼に風向きが変わり煙が屋上を包んだ。下にはゾンビが集まってるが降りないと一酸化炭素中毒で死んでしまう。
アユミが痛くて歩けないと泣き言を言った。
でもどうする事も出来ない。
ビニールシートに包まり水をそばにおけばなんとかなるが、暑くて気を失う。
扉を開けてみる。と松浦が言い出す。
佐々木が煙突の出てる窓ガラスの方を覗く。黒煙が吹き出て中の様子が分からない。
薄いプラスチックを取り、ドアノブにロープを結び隙間にプラスチックを挟む。ドアノブを回してから、佐々木は離れる。それから思い切りロープを引っ張った。炎がドアから吹き出た。
松浦はあけなくて良かった。と呟いた。
空気が入ったせいで更に中は燃えた。
中の物はもう使えないだろう。中から物が割れる音が聞こえる。
ゾンビがこっちへ来る。とユウキが言う。
山の上へ行くしかなかった。
焼いた魚と水。ロープ、ビニールシートだけ持っていく。