.19
その日の夕方に施設から出た。
途中の廃屋に大きな鉄のカゴ。壊れたクーラーやテレビを運んでた滑車のついた頑丈な鉄の箱。松浦がそこに隠していた。
松浦は滑車に潤滑油を塗った。
ゴロゴロと音をさせながら移動。
一時間程歩きようやく民家が現れた。一軒一軒調べていく。
アユミは食料の他に石鹸や洗剤を探しす。
探索は松浦よりもアユミの方が手早かった。松浦はいちいち、家族の写真を見たり読みたい本を選んでいた。
アユミは、ゆっくりと物色している松浦を見て、もう少し男手が欲しいと思った。
なにぶん松浦だけでは頼りない。
でもあの屈強だった三人は松浦に結局、殺された。そのギャップがまだアユミの脳裏に焼き付いている。
あの施設内に居るのは安全。だが確証された安心さは無い。せめてもう一人。
[ねぇ、あの焼却炉からは絶対に出られないの?]
何気なく松浦に聞いた。
松浦は手を止めジッとアユミを見つめた。アユミはミスをしたと思った。松浦は口を動かさない。しばし気まずい沈黙。我慢比べ。アユミはミスを顔に出さない。根負けしたのは松浦。
[一応、出られる]
それだけ言った。
[ねぇ、聞いたらいけなかった?怒ってる?]
アユミは答えにまるで興味なかったように、問い詰めるように言った。強引に主導権を握りたかった。
[い、いや、なんでかな?と思って。急にそんな話題になったから]
松浦は普通に答えた。
[ただ、なんとなく思い付いたから]
アユミは答える。事実だし、本当の事をいう時は本当に聞こえてるはずだ。松浦はどうやって出られるのかは話さなかった。
[ねぇ、なんか聞きたい事はないの?外の事とか]
アユミは言った。松浦は物色しながら聞いた。
[外はどうなの?]
松浦の素っ気ない言葉で、一瞬、やっぱり怒ってんだ。と思ったが松浦の雰囲気は変わってない。
アユミはあの三人の男を相手した時の雰囲気を何故かまた見たかった。
アユミは話し出した。
[人間はバラバラで隠れてるし、ゾンビはたくさん居るのよ。特に都会はね。それに人間同士のイザコザもよく見かけたわ]
松浦は再び物色し始めた。多分、松浦はさほど外の世界に興味がないのだ。