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長い風呂から出た後のアユミは元の雰囲気に戻っていた。松浦は安堵した。
松浦が屋上に上がる時だけアユミは一緒で、それ以外は滅多に一緒に居なかった。ほとんど松浦が部屋に閉じこもっていたからだ。アユミは部屋に居たり廊下に居たり屋上にいたり、お風呂に入ったりウロウロしていた。
男三人が死んだのはそれから五日後。松浦は落とした時から死人と思ってた。アユミは考えないようにし無関心を装った。
その夜に、施設内のゾンビを追い出して鉄板を二人で引き上げようとしたが無理で諦めた。
また寝るか本を読むかの日々が続く。
日に日に気温は下がり寒くなってくがアユミは血色が良くなっていく。
松浦とアユミの会話はほとんど無かった。
冬晴れの日、アユミが食料の調達しないの?と松浦に聞いた。松浦は春に行こう。と引き延ばす事を考えていた。
一日では調達出来ない。それに行くなら自分一人と決めていた。
春にしたい為に、その事をアユミに言ったがアユミは、私も行くから。と言い出す。
松浦はてっきりアユミは行かないつもりと決め付けていたので少し驚いた。
二人居た方が早いし倍の量を持てる。と言うアユミの意見に反対する理由が思いつかない。
危ないから。と言い返すが、ずっと生き抜いてたから大丈夫。と返され、松浦はそれ以上、言い返せなかった。
松浦は、いつの日に行こうかと考えたがアユミに、持ち物は?と聞かれ、今日の今すぐ行くのだと気付いた。
アユミは退屈だったのもあるが、このままでは心も身体も鈍ってしまうと思っていた。それにこんな安全な日々が落ち着かない。寝る場所の確保も食料の備蓄もある生活に慣れていなかった。