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8話:帰り道での異変

日が昇り、目を覚ます。隣を見るとリリーが俺のことを見つめていた。


「おはようございます。とても可愛らしい寝顔でした」


「おはよう」


情事をしなかったり激しくしなかったりした次の日の朝は、たいていリリーの方が先に起きて、このように俺の寝顔を見つめたり朝食の準備をしたりする。


今日は、ランデリオン家なので朝食の準備をする必要がないからずっと俺の寝顔を見ていたようだ。恥ずかしい。





ベッドから下りて、貸してもらった寝間着を着替え、部屋を出るとメイドに出くわした。メイドに朝食の場所へと案内してもらうとランカが待っていた。

挨拶を交わしてリリーとランカと朝食を食べだ後に、俺達の準備が出来次第、城門に来るようランカに告げられた。了解の意を伝え、客室に戻り準備をした。












リリーと共に門へとたどり着くとポタンさんと執事のヤジマさんが居た。

「おはようございます。昨晩は美味しい夕食と楽しいお話ををありがとうございました」


そう言って頭を下げる。


「ああ、おはよう。こちらこそ昨晩は楽しかった。改めて礼を言おう」

ランカが来るまでの間、立話をして時間を潰した。











「お待たせ!さあ行くわよ!」


話が一区切りがついた頃、後ろから声がした。振り向くと準備万端意気揚々のランカが居た。


ポタンさんにお別れの挨拶をしてナリトの街を出発した。








ナリトの街から俺たちの住むデスンの街までは3日ほどかかる。2日目までは道中特に問題も無く終了した。


だが、異変は3日目に起きた。


いつもと同じく馬車を進めていると、突如前方から獣の雄叫びのような音がした。俺たちは即座に馬車を降りて、前方を確認する。


すると大将クラスの大きさのオーガが目に入った。

だがおかしいことにすぐ気が付く。通常オーガの皮膚は赤い。だか前方のオーガの皮膚は真っ黒だ。


そしてさらに目を凝らすと、よりおかしいことに気が付く。黒いオーガが違う種の魔獣を引き連れているのだ。そして引き連れている魔獣も漏れなく全て黒い。


通常違う種の魔獣同士が群れることはない。にもかかわらず、オーガがオーク、ブラッドウルフと言ったBランクに相当する魔獣をそれぞれ10体近く引き連れている姿は異様だ。


「リリー!俺が先行して雷槍を放つ!後から続いてくれ!ランカも魔法の準備が出来次第、ぶっ放してくれ!」


2人は頷いて準備を始める。数瞬の後魔獣達も俺達に気が付いたようで、雄叫びを上げながら近づいて来る。


俺は体内に魔力を循環させ走り出しながら、雷槍を創り出す。それをブラッドウルフへと向けて射出する。


「雷槍!」


Bランクであるブラッドウルフには通常これで十分なまでの威力を発揮する。


だが、ブラッドウルフは前足の爪て雷槍を弾いた。

(なっ!)


内心驚きながらも、走りを止めずに群れへと近づいていく。


群れにたどり着いた俺は後ろにいるリリー達が狙われないよう、雷槍で牽制して俺に気を引きつける。


「レア様、準備出来ました!お下がりください!」


その言葉を聞き、後ろに跳んで魔獣達から離れる。


「氷麗陣!」


リリーが最も得意とする氷属性の魔法だ。地面から氷麗が生え、オーク達の腹を貫通する。攻撃範囲が広い為に、ほとんどのオークが絶命した。


「大炎弾!」


次いでランカがブラッドウルフへと10発の炎魔法を放った。命中し、魔法が弾ける。だが、ブラッドウルフにはあまりダメージを負わせることは出来ていないようだ。


「嘘!ブラッドウルフならこれで倒せるはずじゃ」


この黒い魔獣達はどうやら通常の魔獣よりも強いらしい。それを悟った俺は、今度は10本の雷槍を創り出す。1本1本が通常の雷槍の5倍近い威力を持つものだ。それをブラッドウルフへと放つ。


「蒼天雷槍!」


全てのブラッドウルフを屠り、残るは大将クラスの黒いオーガだけとなった。


俺は黒オーガに向かうも今は剣を持っていないために中距離から雷槍を繰り出して様子を見る。が、命中しても全く傷をつけることができない。


「レア様!私がトドメをさします!」


「了解!」


俺が下がったのを確認してから、リリーは天へと翳した手を振り下ろす。


「氷天隕石!」


氷でできた巨大な結晶がオーガへと落ちてくる。これで決まったと、俺たちの誰もが安堵した瞬間、黒オーガが雄叫びを上げ、棍棒を振り下ろす。


凄まじい音と同時にリリーの魔法が砕け散った。


「なっ!この魔法をオーガが!」


リリーが驚愕に目を見開き、俺とランカも少なからず呆然とする。だがそんなことはお構い無しに黒オーガが突撃してくる。


オーガとは思えない速さで近づいてきた黒オーガは、俺に狙いを定めたようで棍棒を横に一閃する。リリーの氷天隕石を砕くほどの一撃を防御する自信はなかったので躱そうとするも、躱し切れずに左肩に直撃する。


「ガハッ!!」


血を吐き吹っ飛ばされる俺を見て、リリーは悲痛な声をあげる。


「レア様!!」


黒オーガは、次にリリーに狙いを定め走り出す。


「火炎十字弾!」


ランカが炎魔法を放つも、オーガは意にも介さずリリーへと走り続ける。


「氷結弾!」


氷の粒が黒オーガに直撃する。しかしそれもオーガを傷つけることは叶わない。リリーは典型的な遠距離型魔法使いのために、短時間でこの黒いオーガにダメージを与えられるような魔法を作れない。


痛む左肩を抑えつつ立ち上がった俺は、魔力を練り上げる。 黒オーガはリリーのところまで辿り着くと、棍棒を振り上げる。

(くっ!間に合わない)


「リリー!」


「氷壁!」


黒オーガが棍棒を振り下ろした瞬間にリリーは咄嗟に氷壁を作るも粉々に砕かれ、棍棒がリリーに直撃した。リリーが後ろにとばされるのを見て、怒りが湧く。


(でもこれで今はオーガの周りには誰もいない)


たっぷりと練り上げた魔力を使って、雷槍を創り出す。今度の雷槍は、俺の魔力を半分近く使った雷槍だ。


「これで終わりだ。よくもリリーに傷をつけたな」


俺の魔法に気付いたオーガが棍棒を構えた。


「くらえ!蒼穹超雷槍!!」


腕を振り抜いて、射出させる。オーガの知覚を超えた蒼穹超雷槍は、オーガに着弾すると同時に弾ける。

轟音を立て、周囲を巻き込んた大爆発が起こる。砂煙が収まり爆発跡を見ると、黒オーガが跡形もなく吹き飛んでいた。


「ふう、なんとか倒せたな」


「オーバーキルでしたね」


リリーは咄嗟に体内に魔力を循環させて身体能力を上げたようで、大きな傷を負わずに済んだようだ。リリーが無事で安堵する。


「うん、ただ相手の生態や能力が分からなかった以上仕方ないよ」


「やはり強い魔獣と戦うときは前衛がいればもっと楽に倒せそうですね」


リリーが遠距離型、俺が場合に応じた遊撃だとやはりどうしても前衛が薄く突破されてしまう。近接戦に特化した前衛型の人間がいれば戦い方にもっと幅が広がる。


「まあいないものはしょうがないよ。黒魔獣の強さは、その個体の通常の種のランクの1ランク上に相当することが分かったから次からはもっと上手くできるよ」


相手の強さや特性を把握することは大切だ。今回は黒魔獣の強さが分かっただけでも収穫と言えよう。


「そういやランカは?」


「ここにいるわ」


後ろを見ると下を向いて悔しそうにしているランカがいた。


「また私は何もできなかった」


「そんなこともあるさ。この経験を次に活かせるよう努力すればいい。生き残れたんだからさ」


そう。生き残れたのだ。次があることを喜び、次のために努力をする。どんなことにおいてもそれは変わらない。何も諦めることはないのだ。


そう励ますとランカは涙ぐみながらも、懸命に頷いた。



その後は特になんの問題もなくデスンの街に到着した。




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