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1話:領主からの依頼

「領主の城まで来て欲しい?」


俺ことレア・パディフィールドは、夕食時メイドのリリーが発した言葉をうまく飲み込めずにそう聞き返した。ちなみにランカは一心不乱に料理を食べている。


(あれ、ランカってそんな食いしん坊キャラだっけ?)


うちに居候して早2ヶ月が立つランカであるが、どんどん貴族としてのメッキが剥がれている気がする。

そんな脱線していた思考をリリーの言葉で元に戻される。


「はい。このデスンの街の領主貴族が、私達が遭遇した黒い魔獣についての詳細が聞きたいと」


「そういえばレアがオーガ討伐の報酬をもらう時に、ついでにそんなことをギルドに報告してたわね」


「なるほどね。それをギルドの職員が領主に伝えたのか。それでいつ来て欲しいって?」


「明日だそうです」


あまりにも急だが、領主に呼ばれてしまったものは仕方がない。

領主に謁見できるような服を持ってたかな?なんてことを考えながら夕食を食べた。












翌日、リリーと共に領主の住む城まで向かう。呼ばれてもいないのにランカまでついて来た。友達もいないし、きっと暇なんだろう。


「そういえば、領主は5年前に代替わりしていますね」


5年前、このデスンの街が属するアンスリウム王国は、隣国のクロサンドラ皇国と大規模な戦争をした。結果は両者共に疲弊し切って痛み分けとなったが。


もちろん貴族は国の有事の際には働かなければならない。デスンの街の前領主もその戦争に参加したが、結果命を落としてしまった。当然次代の領主には、前領主の息子がなったというわけだ。

ちなみに俺の両親もその戦争で命を落とした。


「確かまだ30歳前後の若い人だったな」


「なかなか頭の切れそうな感じの人だったわね」


「会ったことがあるの?」


「ええ、1度だけ。貴族の社交パーティーでね」


3人で領主の情報を一通り確認し終わると、ちょうど領主の城に着いた。門番にギルドカードを見せて事情を説明するとすんなりと通してもらえた。









城の中に入ると領主がいるという部屋まで通された。中に入ると机やテーブル、ソファーなど必要最低限のものだけが置いてあるといった印象だ。

そしてその机にはいかにも好青年といった茶髪の男性が座っていた。きっと彼が領主だろう。


「いやあよく来てくれたね。私はこの街の領主、マーブル・デスン。まあとりあえず座ってくれたまえ」


自己紹介を返して俺とランカはソファーに座る。礼儀なんて知らないのでほとんどが適当だ。

一応立場上はメイドであるリリーは俺の後ろに控えている。


「あれ?ランデリオン家の令嬢がどうしてここに?」


「彼を家庭教師として雇ったんです。ここへはまあ、成り行きで」


ランカは多少気まずそうにしながらも質問に答える。


「なるほど、まあいい。ところで今回君達を呼んだ理由は知っているかな?」


「黒い魔獣について詳しく知りたいから、と聞いてます」


「そうだ、まああくまでそれは理由の半分なんだがね。それは後にしよう。君達が出会ったという黒い魔獣ばどうだった?」


「どうって、普通の個体よりも強くて、違う種同士で群れてるってことくらいですかね」


「そう、奴らは明らかにおかしい」


その口振りはまるであの黒い魔獣の事をよく知っているかのようだ。


「黒い魔獣を知っているんですか?」


「知っているというほどではないが。最近あの黒い魔獣がアンスリウム王国の各地で現れているんだ。幸い群れは1つという規模だからまだ大きな被害は出ていないがね」


それを聞いた俺はぞっとする。黒い魔獣は通常の種よりもギルドランク1つ分は強い。そんなものが頻繁に現れていてはいずれ大きな被害が出るのは目に見えている。


「君はクロサンドラ皇国を知っているかね?」


唐突に話題を変えられた俺は怪訝そうにしながらも頷く。


「5年前に我が国が大戦争をした相手だ。共に疲弊しきった両国は停戦協定を結んだ。内容は10年間の領土不可侵というものだ」


「もちろんです。俺の両親もその戦争で命を落としました。でもその話が黒い魔獣と何の関係が?」


「最近の黒魔獣騒動は、そのクロサンドラ皇国の仕業ではないかと考えられている」


「なっ!でも10年間は領土不可侵のはずよ!まだ停戦してから5年しか経ってないわ!」


「これは王都の考えなんだ。近頃クロサンドラ皇国に不審な動きがある、と。魔獣しかり勇者召喚しかりとね。秘密裏にやっているようだが皇国に忍ばせた間者からの確かな情報らしい」


「皇国が不審な動きをしているっていうのは分かりましたけど、どうしてマーブルさんがそんなことを知ってるんですか?」


そう聞いた俺に、マーブルさんはフッと優しく微笑む。なかなか画になっている。


「今からそれを話そう。それは君達を呼んだもう1つの理由に関係している。実は王都から魔獣騒動を調べるよう命令が下ってね。君達にはそれをお願いしたくて呼んだというわけだ」


マーブルさんの言葉を聞いた俺を色々と疑問が湧いてくる。なぜ王都は魔獣調査をマーブルさんに調べるよう命令したのか?どうしてマーブルさんはそれを俺達に依頼するのか?ということなどだ。


「君がいろいろと疑問に思うのは最もだ。王都がなぜ私に命令したかというと、まあ一言で言うならば政治的な理由からだ。私は比較的王家に近い血筋の貴族でね。いろいろな策謀に巻き込まれてしまうわけさ」


そう言うとマーブルさんは苦笑して、紅茶を飲んだ。どうやらあまり貴族的なしがらみは好きではないらしい。


「そして今度はなぜ私が君達に魔獣調査を依頼するかというとだね、5年前の戦争でデスンの私兵団の精鋭もかなり消耗してしまってね。あまり余裕がないんだ」


貴族の私兵団とは通常、ほとんどが領地に住んでいる農民だ。彼らは普段は農業をしているが、有事の際には兵役義務がある。


だがほとんどが農民といってもそれでは兵団が成り立たないのできちんとした職業軍人が存在する。そのうちの1つが騎士で俺の両親もそれに該当する。精鋭とはその職業軍人を指しているのだろう。


「つまりうちお抱えの騎士や魔法使いを調査に出してしまうと、もし有事の際に民を守るものがいなくなってしまうということだ。そこで、この街でギルドランクが高い君達にお願いしたというわけだ。引き受けてくれるかな?」


そう問われた俺はリリーを見るた。目でどうするべきかを相談した。


(どうする?リリー)


(領主は今のところ嘘は言っていないかと。ここは引き受けた方が後々のために良いと私は思います)


(なるほど、じゃあ引き受けよう)


考えのまとまった俺はマーブルさんへと向き直る。彼は目で相談し合う俺達を見て、特に何を言わなかった。そして今も俺が喋り出すの待っている。


「その依頼を引き受けます。ただ調査といってもどこを調査すれば?」


俺の答えにマーブルさんは嬉しそうな笑みを浮かべた。


「ふむ、ありがとう。調査はデスンの街から北に5日程行ったところにある国境付近を調べて欲しい。王都の諜報機関によると、黒魔獣が現れた時に近くにいた怪しい者がここに入って行くのを突き止めたらしい」


「分かりました。それで、報酬の方は?」


「ふむ。もちろんの相談だ。報酬は相応の金額を先払いしよう」


「先払いでいいんですか?」


「ああ。私はギルドランクの高い君達を信用しているし、申し訳ないが今日すぐにデスンの街を出発してほしいということの詫びだ。それに金を受け取って逃走してもその先に未来はないだろう?」


なるほど、金を受け取って逃走すればギルドで依頼を受けることは出来なくなるだろし、先払いで信用しているところを見せればこれから先も俺達をいろいろと利用できるというわけだ。やはりランカの言う通り頭は切れるのかもしれない。

というか今日出発するなんて本当にに急だ。


「分かりました。では失礼します」


そう言ってその場を後にしようとしたが、マーブルさんの言葉で立ち止まる。


「ああ、それと今回の依頼はもう1人ギルドのAランク冒険者に頼んでいるんだ。合流して依頼に当たってほしい」


わかまりましたと頷いて今度こそ部屋を出た。


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