1話:幼き頃の決意
「うおぉぉぉお!」
俺は雄叫びを上げながらゴブリンへと剣を振り下ろした。しかしゴブリンは俺の攻撃を避け、振り下ろした態勢で隙だらけになっている俺に棍棒を振り回した。
「うわあああ!」
「氷結弾!」
だが間一髪で当たるかというところに飛んできた氷の魔法によってゴブリンは絶命した。
「ありがとう助かったよリリー」
俺は、助けてくれた銀髪の絶世の美女に感謝の言葉を告げた。
彼女の名前はリリー・カミーリア。
銀色の長い髪はサラサラとしていて、つり目で凛とした顔は可愛いというよりも綺麗という言葉が似合う。13歳でありながらスタイルは抜群で、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。まさに非の打ち所がない美の女神のようなその人は俺のメイドでもある。
♢♢♢
「はあー、今日もダメだったよリリー」
ゴブリンをリリーが全滅させた後、俺は銀髪メイドと並んで腕を組みながら帰路についている。
「昨日よりも進歩していましたよ」
リリーはそう言って肩にもたれかかってきた。
(ああ、いい匂いだなあ。)
「でもいつまでたってもゴブリンすらも倒せるようにならないよ。やっぱりダメなのかな」
「才能が無くても強くなることを諦めないと決めたのでしょう?」
そう、俺ことレア・パディフィールドには目標がある。それは、強くなるということだ。だが、俺には才能が無かった。それでも諦めることが出来ずに今迄努力を重ねてきた。
強くなることを目標にし努力して5年、現在10歳の俺はいまだに努力の成果が現れていない。
「うん、諦めないって決めたよ。でもやっぱりこのままでいいのか不安なんだ」
帰路についてる途中足を止め、俺はそう不安をリリーに吐露した。
「諦めないと決めたからって迷ってもいいのです。これで良いのか、そう試行錯誤しながらも進み続けましょう。いつかその努力が身を開くこと、不肖この私リリーは確信しています」
腕を組むのをやめ、正面に立ったリリーは俺の目をしっかりと見てそう言った。
リリーにそう言われるとなぜだか力が湧いてくる。今日がダメだったならまた明日頑張ろう。
新たにそう決心し、俺はまた努力を続けた。
そして5年後、強くなることへ未だ道半ばではあるが、確実にその成果は現れたのだった。