第2夜 時系列
「こっちとこっちが繋がるか…」
一抱えもある段ボール8個から出てきた大量の物語は
ある程度まとめられているものの、継ぎ足された「設定」が膨大な物になっていた。
バインダーを順に床に並べただけなのに部屋を埋め尽くしてもまだ足りない
カルディシアとリップルが、部屋の隅で苦笑いをしている
各バインダーの中から見えるのは、今の時代のイラストレーターにはとても見せられない下手な絵と
A4サイズの用紙にびっしりと手書きで書かれた大量の「文字」という「設定資料」
それはTRPGから始まり
ファンタジーの王道を通過し
そして宇宙に向かって羽ばたき出していた
時系列に並べるだけでも一苦労な量だが
それが惑星単位で行われていると、宇宙を作っている神様の気分になる
いや、散らかった本を並べ直す司書か
もっとも背表紙に番号がないので、記憶を頼りに並べるしかないのだが…
「スタート地点はどこだっけ?」
いや、「どの星だっけ?」が正しいか…
8つの段ボールから次々と出てくる「資料」と格闘すること3時間
やっと「最初の星」にたどり着く
直径20万㎞に及ぶ「雲海に覆われた星」
リアルで言う「木星」のような星だ
とある事件によって「星ゆく船たち」がこの星から飛び立っていくのが、
ほぼ全ての物語のはじまりだったようだ
13番目の船「スヴェニール」の出発を最後に、この星は消滅している
消滅しているのだ…
「その世界はまだ、『本当の再会を果たしていなかった…』」
思わず口から出た記憶の言葉に、
私の作業を見守っていたカルディシアが寂しそうな顔をした
「カルディシア」には大きな役目を与えてある
その相棒の「リップル」も同じ役目に準じている
この役目を持っているキャラクターは、ほぼ全ての世界に「共通して存在している」
そうするようにしたのだ
我ながら、今考えればなんとも残酷な設定だと思う…
私は時系列と戦いながら「星」を床に配置していった
大量に分岐した「時系列」が、曼荼羅のような複雑な模様を描き出す
「さて、本当の再会を果たす旅に出ようか」
壁際にいた2人
リップルとカルディシアの瞳が輝き始めた