4話
みなさんこんにちは、西条です。
天球 《スカイ 》に転移してから、早3週間…僕は元気に修行という名のシゴキを受けてます。
というか、最初の野原にまだ居ます、早くナンパ…じゃない冒険がしたいです!!
街に行きたいです!可愛い女の子が見たいです!!!酒場で朝まで呑んで騒ぎたいです!!心が叫びたがっているんです!!
欲求不満を抱えたまま、先輩お得意の謎空間から出されたキャンピングカーの中でゴロゴロと転がりながら悶絶していると、車体の外から何かが這いよってくるような気配を感
じた。
この気配は……来る! 今日も無駄に元気な先輩が!
ニコニコしながらやってくる!
いやだ! たぁーすけぇーてド○エモぉぉぉぉぉん!!
逃走経路を探すべく、こっそりと車窓からそとを伺おうとした瞬間だった。
「さーて、寝起きの特訓はじまるよー!!」
いきなり目の前に先輩のドアップ!
ぎゃあぁぁぁ、出たぁぁぁぁぁ!!
そして僕は、今日も先輩の愛に満ちたお目覚めコールで目を覚ます
ここ、3週間にしたことを説明すると、
朝5時起床、ラジオ体操+柔軟体操で1時間、
負荷を掛けながら真面目にラジオ体操するってのが地味に効く。
軽くマラソン1時間、と言っても、遠くに行けないのでキャンピングカーを中心に
視認出来る距離でグルグルと回ってます。
それから朝食と休憩を取る、ここまではいい。
そのあと剣を使った型の稽古+先輩相手の模擬訓練。
これが辛いんだ……お願い先輩。 せめて木刀にしてください。
『チートの力は無理だが、最低マクロ化はさせる!!』
と意味の分からない事ながら言っ真剣で殴られたり(切りあうとはあえて言わない)
良い感じに切り付けれたらドヤ顔で「残念、それは残像だ!!」とか、
瞬間移動して後ろに回り込んで剣先でお尻をツンツンされたりと、
心の中がいろいろと削られます。
そして午後からは近隣で魔獣か亜人狩り。
3時ぐらいになったら、その時間までにあげた狩りの成果を元に『売れる素材作り講座』と言う名のスプラッタショーを実演。
ちなみにおやつはありません。
魔獣狩りも最初はビビりました。
だって生き物を殺すって、まず現代日本じゃ経験しないからね。
でも、この世界では必須な事。
地球のようにスーパーで切り身が売ってる訳では無いんだし。
先輩の『慣れろ、慣れるまで戦え!!解体しろ!!』との先輩の指導の下、考える暇を与えられず死闘を繰り返しましたよ。
なる・ほど。さい・あく・だ! みたいな調子で一週間が過ぎ、お蔭で六肢熊も今では簡単に狩れるようになりました!
ちなみに素材を駄目にする倒し方すると、先輩からのご褒美お酒が貰えなくなるのです。
なので必死に覚えました。
背中が大事デス。 一発デ首ヲ狙ウのガ大事デス。
おっと、少々先輩の調教……じゃなくて指導の暗黒面に飲まれかかったよ。
あぶないあぶない。
最後は、5時からの各種『技能』の座学を2時間。
眠気に襲われるのを除けば、これが一番楽かな?
そして終われば自由時間である。 ヒャッホゥ!!
……とまぁ、ちょっとどころじゃなくてハードなスケジュールだけど、がんばれば先輩から地球産や天球産の色々なお酒がご褒美に貰えます!!
これがまた美味いんだ! さすが先輩のご推薦。お酒呑めないのに銘酒を揃えてる!!
夜は何時に寝ても良いのですが、大体は深酒で気が付いたら朝です。
しょっちゅうドッキリを仕掛けてくるので、ドアのロックは欠かせません。
まぁ、どうせ簡単に鍵を外してくるんですけどね。
気休めでも、しておいたほうが気が休まるんです。
しかし、今かんがえると会社で働いていた時は朝6時出社で午前様が毎度だったよな。
考えたら今の方が楽で良いのかもしれない。
というか、3日目まではキツかったのに1週間経ったら、少し物足りなくなってきた謎。
意外とマゾの素質があるのかもしれないと、最近ちょっぴり不安です。
しかも、運動不足と先輩に連れて行かれた旨い飯屋によって、転勤以降に20キロもご成長あそばされた我が腹が! 今では大分スリムに成りました!!
先輩に感謝を伝えたら、運動量を倍にされました。 解せぬ。
しかも、その時のコメントが、
「転勤したての頃のシュッとした西条ちゃんになってきたねぇ」
……って、そんなに太って居たたのか!
ヤバかったな僕。
先輩の話によると、なんでも地球育ちは天球に来ると体が鍛え易くなるらしい。
運動と食事が直ぐ身になるので、『今のボーナス期間は、絶対に逃せないからスパルタで行くぞ!!』って、お手柔らかにお願いしますよ、ほんと。
てなわけで、今日も先輩の苦労話を聞きながら、黙々と体を鍛えています。
因みに今の運動量と魔獣討伐ノルマは当初の3倍です……って考えてみると鬼のようだな。
とまぁ、日々成長の毎日ではあるのたけど、特殊技能『ギフト』はまだ確認できていない。
種族技能は初級を取れたんだけどね。
あ、種族技能っていうのは、RPGで特定の職についたキャラであれば使えるスキルみたいなモノの事。
……先輩曰く、呼び方、発動、触媒が違うだけで基本も結果も一緒なのだそうだ。
ほんと、ゲームのスキルみたいだよね。
詳しく言うと、ゲームなんかで出てくる魔法使いの技が『魔法』、僧侶とか賢者が使うのが『聖法』。
実を言うとこの二つ、使い手によって呼び方が違うだけなんだけど、ごっちゃにすると両方から怒られるみたい。
暖簾わけした後の有名ラーメン屋みたいだよな。
あとは自然の力を借りる精霊術ってのもあるけど、前の二つと何が違うのかな?
結論から言うと、3つ共あっさり出来たけど。
彼らによると、それぞれの術は『オド』とか『マナ』とかを消費するみたいだけど、それが何なのかは先輩にも良く判ってないらしい。
でも使えるから良いじゃん……って軽いな。
まぁ、僕ら技術者は研究者じゃないから、自分の使う技術の原理にはわりと無頓着である。
大事なのはその技術を使って何をするか……何をしてもそんな感じだ。
波○拳とかカメハ○波とか気を放出して戦うのが気功術、オーラを纏って戦えば闘牙術、これも大体一緒な感覚だよね、この世界の人間っていろいろと難しく分類しすぎだと思う。
逆に難しかったのが異能術、有体に言えば超能力です。
ってか、サイコキネシスで衝撃波とかパイロキネシスで火や稲妻って被りまくりだし
先輩の実演の『目からビーム!!』単純に大笑いしました。
鬼人が使う変身術は体質なんかが前提条件なので基本的に習得できないみたい。
アレンジした武闘術という短時間だけブースト出来る技も憶えたけど、そこまで必要になる場面がどれだけあるんだろうか?
。
龍人のブレスは全く出来ませんでした、先輩は「毒ブレス」「酸ブレス」が使えるが、
飯が不味くなるから使いたくないって、毒なら何時も吐いてるような…主の言語の方面で。
人族用のアレンジ技は先輩の義兄が考案したらしいです。
魔・聖法を混合して精霊術を足した法術の他、
気功術と闘牙術に変身術を混ぜた武闘術、剣や槍、盾の戦闘術を作って伝えたそうなんだけど、過去の歴史文化は文明度が高くなると冥人族が襲って遺失するからそのうち失伝するんじゃないかと危惧しているみたい。
しかし、文明度が高くなると冥人族が襲ってくるって、彼らの文化には人間の収穫祭でもあるのですか?
なお、覚えた戦闘術は熟練度や威力でクラスが判れていて、『初級』『中級』『上級』『師範』『聖王級』『至高級』と上がるらしい。
例えは。剣だと初級・中級で剣仕、上級なら剣士、師範で剣師、剣聖、剣至とランクアップするのだとか。
街に入ったことも無いので、そんな奴見たこともないけどね。
剣の他、槍士、盾士、斧士、弓士、闘士、気士と武器と戦い方によって色々あるそうなんだけど、鈍器の鈍士とか、鞭士ってなんか笑えるよね。
ちなみに、これらの獲得した技能は『マスター』と呼ばれる戸籍にデータが乗り、端末カードが一般市民なら誰でも持っているらしいです。
カードは情報端末。 スマホみたいにホストデータとリンクして勝手に書き換わり偽造出来ないらしいって……それも先輩が開発したんじゃないですか?
なんかいろいろと現代人臭いですよ、そのシステム。
で、先輩がどうやって偽造する気でいるのかを聞いてみたら、既に自分のカードの他に偽造したカード10枚持っていました。
あのですね、モラルって言葉知ってます? 知っているけど意味は無い? さよですか。
ちなみに書き換え用の機械は持っていないし、最新版の機械を使わないとバレる可能性もあるので、王国のツテを頼るらしいです……この手の技術って、天球でもイ
タチごっこなのね。
取敢えず現状を報告すると、僕の習得できた種族技能は5つ。
内訳を並べると、『剣士』『盾士』『法仕』『異能仕』『武闘仕』である。
使った感触ではアレンジ技の方が僕には使い易かった、異能仕は何となく恰好良いから覚えてみた。
武器系統は剣と盾を基準に上級を目指し、先輩は僕を上位職である『騎士』にする予定らしい。
そのため、『騎士』になるために必要な槍や棍等の種族技能取得を目指すスパルタが……
ちなみに、上級持ちは上級までの技術を指導・伝授出来るそうだが、クラスアップの認定は出来ないらしい。
師範以上になると下位のクラスのクラスアップの認定が出来るらしいが、そのやり方を具体的に知る前に日本に戻されたのだそうだ。
まぁ、どうせ偽造するんだから、クラスアップの認定なんて必要ないんだけどね。
そしてクラスアップをすると『マスター』へと情報が送られて、カードにその内容が反映される。
つまり、もっている技能は公共機関には筒抜けってことだ。
ちなみに先輩はいくつ技能を持っているのか聞いたら「内緒♪」って可愛く言われた。
にゃんこ先輩だから許した。
戸籍に関しては、国……というか、地域を統括してる王国・連合国家・帝国、場合によってはその地域を統治している部族が、それぞれ自分たちの民のデータを管理している。
それゆえ、『マスター』の管理は国じゃ無く、ギルドという管理団体が運営していた。。
でも、ギルドもかなり苦労しているみたい。
基本的に人類は南大陸を一つの統一国家としてみなしているけど、種族・文化・文明の違う北大陸からの移民が入り込んだせいで社会的にまだいろいろと混乱しているみたい。
やっぱり異世界も色々と民族問題が絶えないみたいですよ。
ただ、共通の天敵である冥人族が居るので、何かあれば迅速に纏まり、これを迎え撃つ必要があるので、そういがみ合う事はないみたいだ。
南大陸最北端には聖都という人類最大都市にして最前線の防衛拠点が存在していて、聖人族の聖教皇って宗教のお偉いさんが、現在の人類代表としていろいろとがんばっている
らしいです。
各国も大使を聖都に軍隊を各国の運営する衛星都市に駐留させているそうだけど……かえって争いの火種になったりしないのだろうか?
ちなみに先輩の予想だと、会社の皆は多分聖都に居るだろうなって話だけど、ここからだと結構遠いし道中の危険もあるだろうから、今は体を鍛えるのが先なんだそうだ。
聖都への旅はまだ先の話になりそうだね。
う~ん、福ちゃんはこういう世界が好きそうだし、梓ちゃんは…
二人とも元気にしてるのかなぁ、白戸さんも無事だと良いが。
こんな感じで3週間、頑張って居ました…。