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3話

食事を食べ終わったら食後のエスプレッソが出て来た。

ネコがボールにじゃれてるラテアートだった。

 大技から小技まで、無駄に色々隠し玉が多い人だ。


 先輩、そんな目をしてもツッコミはいれませんよ?

 何かを期待するようなキラキラした目を向けてくる先輩を無視して、

僕はタバコを吸いつつ今後の事を話し続けて行くことにした。


「先輩、取敢えずこれから何して行くんですか?」

 一瞬、ものすごい失望した目を向けられたが、無視だ無視。


「うむ、先ずは福ちゃんや梓ちゃん、白戸さんもこっちに来てるだろうから、

探して出して保護だな。

 クソガキ3人と所長、あとは課長もスルーしたいけど、どうする?」

「その考えに賛成です。 てか、そうしましょう」


 さて、せっかくなので僕の会社仲間を簡単に紹介しておこう。


 まずは、福ちゃんこと福南 剛……僕より1歳年上で、プログラマー職。

 愛嬌のある顔とプクプクなお腹だがトレードマークで、とても頭が良い。

 普段はかなり人見知りするんだけど、お酒を飲むと大胆になるんだよね。

 そして間違い無くオタク。 本人は隠してるつもりらしい。


 続いて梓ちゃんこと北嶋 梓……僕と同い年のWEBデザイナー職。

 一見しておしとやかで美人、だけど中身はおっさんという残念な人だ。

 だが、僕や先輩以外はその本性を知らない。

 先輩から聞いた話だと、なんでも元ミス何とからしい。

 ちなみに彼氏持ち。

 所長が口説いているが、無理だろって周囲も思ってる。

 ちな福南さんも恋慕しているのだが、こちらも今のところ芽が出る気配は無い。

 ついでに先輩は何とか福南さんとくっ付けたいらしいが、その理由は……

曰く『笑えるから』。 なんとも先輩らしい理由だ。

 僕に恋人が出来たとしても、先輩にだけは言わないでおこう。

 たぶん隠すのは無理だと思うけど。


 ここまでが主に自分と親しい人間だ。

 残りも簡単に紹介すると、

中本所長……絶対に『お前じつはコミュ障だろ!』って位、報連相が滅茶苦茶でダブスタな人。一応役職的には『部長』って事に成って居る。

 発田課長、所長のおべんちゃら係だが、能力はある不思議な人。

 白戸主任、システム営業職で何時も手柄を所長に奪われる幸薄い人。、


 後、事務所には今年の入社で研修終わって『余された』伊萬里、筒井、宗谷の3人が配属されている。

 実際、この数か月で『出入り禁止』を25件、修理に行って破壊したのは数知れずという素晴らしい業績を残すお子様達だ。

 こんな貧乏くじを押し付けられるとか、何やったんだ所長?


 僕が予想する限り、あの時に事務所に居たと思われるのはこの10人だけだ。

 少なくとも、他の営業さんや事務職、倉庫係の人があの深夜の時刻に居るとは思えない。


「じゃあ、特に問題も見つからなければその方向で行こう。

 でだ、さらに話を煮詰める前にこの世界の概要も説明しとくわ」


 先輩はその辺で拾ってきた木の枝で地面に地図を描きつつ、僕にこの世界の社会を簡単に説明してくれた。

 その内容をさらに掻い摘むと、こんな感じだろうか……



 まず、今居るのは南大陸。

 南アメリカとアフリカが合体したような大きさで、殆どの人類はここに住んで居る。


 10年前までは北大陸(ユーラシア大陸の2倍)全域にも住んで居たが、絶滅戦争で壊滅状態となり、生き残りも南の大陸に移住したので今は多分無人となっているらしい。

 他にも大陸が有るらしいが、先輩は行ったことが無いので知らないのだとか。


 結局、先輩もこの世界のことよくわかってないんじゃないですかと突っ込んだら、

「この世界が広すぎるんだよ、お前だって行った事無い国は知らんだろ?」と返された。

なんでも、天球 《スカイ 》は地球の2倍の大きさがあるらしい。

確かに僕も、地球で他の国って余り知らないし日本だって隅々まで知らない。

 1日の長さは地球と同じ24時間。

気候に関しては、極地や高地以外は大体温暖なんだけど……

この天球 《スカイ 》の周囲を周る環と月が魔法的な作用してるからだとか。

 うん、よくわからん。


 24時間とか地球見たいだなっと思ったら『他の世界も24時間だ、理由は知らない』との事。

 他にも地球と天球 《スカイ 》以外に世界が幾つか有って、過去には行き来が有ったらしい。

 ただ、戦争で資料が遺失してるから詳しくは知らないそうな。


 そのあたりは先輩も理不尽に感じているらしく、『割と納得がいかないが納得しとけ、深く考えるな』と言われた。

先輩自体、誰かに聞いたのを思いだしながら話してる感じだ。


「あと、ファンタジー世界らしく人間以外の種類の知的生命体もいるぞ」

 なんでも、初めは『神族』という生物しか知的生命体はいなかったらしいのだが、そのDNA的な物が特化したり劣化して他の種族が生まれたらしい。

 代表的なものをあげると、龍の形質を持つ『龍人族』、精霊術を操るエルフなポジションの『霊人族』、魔法と言う力を持ち人の頭に角を生やしたような姿をした『魔人族


』、気功術や闘牙術といった技術に長けるケモナーな『獣人族』、

そして神族の直系を名乗り聖法と呼ばれる技術を使う『聖人族』。

 最後に全てが劣化して一番弱いにもかかわらず、数としては一番多い『人族』。


 他にも『鬼人族』とか『魚人族』、『天人族』等もいるらしいのだが、

とても一度に憶えきれない。

 というより、ここまで知識を詰め込むならメモを取らせてほしかった。

 ちなみに地球人も神族の直系の末裔で、分類的には神族なんだってさ。


 あと、これを種族と言ってよいのかはわからないが『亜人』と呼ばれる存在も居るのだが、それが何かと尋ねたら、先にコアについて説明が必要だといわれた。


 この世界の全ての生き物には体内にコアと呼ばれる力の源があり、魔法や聖法なんて代物もこの核を元に発動するらしいのだが……なんでも、この核を奪うことで相手の

力を自分の力にしたり出来るらしい。

 そんなシステムがあったら、殺し合いが絶えないだろうな……と思う。

 なんとも便利で残酷な世界だ。


 ちなみにコアにはその性質に従いいくつも種類が定められていて、龍人が龍核、魔法を使える種族は魔核、聖法使いは聖核、獣人は獣核……って感じらしい。

 なんでも、その核の持ち主が使える技能で呼び方が変り、ついでに核の色も違うんだって。

 神族は全部使えるから神核って言うチート種族だそうです。


 ただ、この核は暴走する事があり、核を暴走させてしまうと別の生物のような姿になる。

 これが亜人だ。


 亜人化したあとの形状は元になった存在の種族によってさまざまで、人族だと小鬼ゴブリンとか豚鬼オークの様なものになり、鬼人族なら大鬼オーガになるら


しいのだが……

 大鬼オーガと鬼人族って何が違うのだろう?

 ちなみに一度亜人になってしまうと、二度と人には戻れないらしい。


 あと、動物に関しても大きくわけて二つの種別があるらしい。

 ただの野生動物と、魔獣だ。

 その区別についてたずねたら、『コアが無いのは野生動物、コアが有れば魔獣。 襲ってきたら敵で襲わなかったら襲え』ってどっちにしろ戦うのか。

 先輩曰く、『この世は焼肉定食だ』って何時の時代のギャグですか?


コアをそのまま放置したりすると、周囲から力を得て魔獣が発生したり、野生動物に寄生したりする事もあるそうで、時々災害が起きている。

現在の北大陸が無人なのは絶滅戦争の時に大量に核が散乱して魔獣が跋扈しているからだ。



 そのあとの説明は、『絶滅戦争』という先輩が呼ばれた原因になった事件に及んだ。

 それは、北大陸のどこかから定期的に発生する冥人族率いる冥獣の襲撃である。

 この戦いで北大陸全土と南大陸の半分以上が奪われ、多くの文化が破壊された。


 残った人類は起死回生に全ての術と法を組み合わせ、各異世界の中でも最も血の濃い神族召喚したのである。

 その結果が『勇者』であり、召喚時に偶々隣に居て巻き込まれたのが先輩だった。

何処かで聞いた話だなぁ・・・偶々隣に居たなんて。


 戦いは5年に及び、ついに南大陸を奪還。

 北大陸の中南部で50以上の冥人族の部族を駆逐し、結界を各所に築き侵入防止、更には冥人族の王を打ち取ったらしい。

 冥人族は1部族500人程、部族単位で移動生活しているから、ざっと25000以上の敵を討ち取ったことになる。

しかも、冥人族の兵士一人を倒すのに人族ではほぼ無理、餌にしかならないから人類の混線部隊100人以上で戦ってギリギリ倒せるそうです。

何と言う強さってどうやって倒してたのだろう?と聞いたら、

「突然変異は何処にでもいる、変態の様に強いのがチラホラと湧いてきてな、切磋琢磨したんだよ、まぁ性格も変態だがな。」と。


 ちなみにその時の変態集団が先輩含めて冥王突撃メンバーで26人で、後に26傑と呼ばれるようになったらしい。

 そして、26傑を城へ送る為に戦った人類最後の軍50万人は「決死部隊」と呼ばれているのだとか。


 そして26傑は全員生き残り決死部隊は1000人程が生き残った……って50万人死んだ!?

 って言ったら、

「人類は50億以上は死んでる、生き残り10億位だしな、南大陸だけでも広すぎるわ」

 との事だった。

 ……スケールが違うな異世界。




 あと、今の場所からすぐ近くに友人が収める国があって、取敢えずそこを目指すらしい。

 なんでも、26傑の一人で王女様と結婚した人なのだそうな。


 さらにその国で僕の戸籍を偽造する為らしい……僕、この世界じゃ戸籍がないからね。

 あと、先輩も帰還がばれたら面倒になるから変装する……って言って、生々しい猫の仮面を付けた。

 ハリウッドCGも真っ青な、リアルな虎縞猫なプリティ先輩が目の前でお茶飲んでます。

 肉球と尻尾までバッチリです。

 どんだけ猫が好きなんですか先輩! あえて突っ込みはいれませんよ!


 それから先輩は、この世界で活動するのに言葉がわからないと不自由だろうと言って『認識』という法術を掛けてくれた。

 これは言葉の学習能力を超人レベルま引き上げる魔術で、相手と話すだけで、その相手の言葉や文字を簡単に習得できるという。

 先輩が英語やドイツ語とか5か国語イケルって、こういうカラクリだったのですね。


 だが、この世界で10年の間に変わった事、起こった事は流石に分からないらしく、10年前に普通だった革鎧風防具を戦闘服の上から着せて貰った。

 案外軽いので何の革か聞いたら、地球で作った新素材と中身は天球 《スカイ 》でも希少な謎金属だそうで、近距離からの50口径の直撃にも衝撃含めて耐えれる自慢の逸品と

言われた。

 もう意味すら解らない。


 その後は猫耳先輩からさっき熊を真っ二つにした剣も貰い、3時間ほど剣の練習。

 剣も軽いです 本当に謎金属って何なんでしょうか?

 電柱ぐらいの木がスパスパ簡単に切れます。 不思議です。



「さて、西条ちゃんよ!」

「はい、にゃんこ先輩!!」

 残念なことに、先輩からの突っ込みはこなかった。

 もしかして、あのアニメ知らないのかな?


「遅くなったし、移動明日にするべ、腹減った、実技で魔獣狩って焼肉だ」


 こうして、僕の冒険初日は特訓という名のシゴキに費やされて行くのであった。


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