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ナビゲーター  作者: 楠瀬 和裄
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事の始まり

「契約と外れる業務内容とはなるんですが、

 ゲーム内のナビゲートもやって欲しいのです。」

「はい? 

 そのゲームのサポートブースを立ち上げるだけ

 と言うお話ではなかったのですか?」

「そうなんですが、

 いまいちまだMMORPGなるものの魅力を

 わかっていただけるような方は少なくてですね」

「まぁ確かにそうですね、

 いいところ国内では少人数での協力戦闘で、

 しかも携帯ゲーム機がメインですね

 PCでMMORPGやるとなると英語が必須でしたから

 日本人には敷居が高かったですし」

「大型タイトルなだけに「失敗」を避けたいのはゲーム会社もそうですが、

 認証サーバを提供している会社も

 ライバルである協力プロパイダなんですよ

 ただ、うちもそうなんですが、

 どこのプロパイダも

 技術班は接続サポートやサポートOS周りに特化しておりまして

 広く、コンピューターに詳しいものが少ないんですよ。」

「期待するところは分かりましたが、なぜ私に?」

「しいて言えば、

 過日のサポート対象外のOSユーザーに対応できる臨機応変さですかね

 それから初対面の人とのコミュニケーションと能力と人選眼

 サポートするゲームの情報収集や躓きそうな部分への対処法マニュアル

 現時点でのゲームの問題点洗い出しと対応マニュアル化などの行動を見て

 失礼とは思ったんですが、

 派遣元に業務経歴確認をさせていただきました。

 その上での事前交渉です」

「業務に関わるあれこれの一部ですから、

 集めておいて損にはならない情報かと

 このプロパイダ経由でゲームを始めたら

 こちらに問い合わせが来るのは分かっている事ですし。

 でもプロパイダでそれ仕掛けちゃっていいんですかね?

 ゲーム・マスター達との業務範囲は?」

「一応、了解はとってあります

 もともと協力プロパイダには

 βテストからのテストアカウントがありまして

 それをどう利用するかは問われていないのです。

 「基本的には一緒に遊んで体験してもらう」ということです。

 なのでゲーム・マスター案件はあちらに振るで了解を得ていますし

 それが「ゲームを遊ぶ」という事でも有りますから」

「そうですね、「一緒に遊ぶ、楽しんでいただく」という趣旨は

 了解しました、

 ただし問題点がひとつありまして、

 「テストアカウントで遊んでいる」と

 他のブースからやっかみが来ないかです。」

「その辺は他社さんからの派遣なので攻撃対象になりうる事象ですね。

 受けていただければ会議での周知は致しますが、

 一般オペレーターの理解を得るのはちょっと難しそうですね」

「その辺のコントロールも含めてバイザー業務ではあるんですが

 ま~それが出来なければ

 使えない名前だけのバイザーとしか評価できませんしね。

 受けるのは構いません、

 万が一、この業務が原因で私がここを辞める事になった場合、

 現状のブースメンバーの契約継続か、

 マニュアルの買取は書面にていただきたいところですね

 担当営業にその辺は対応してもらいますが

 多分、他社さんも「独占」したいという思惑も有ると思うので

 そこは譲れませんね

 過日の臨機応変さで感謝よりも敵意を感じましたし

 こちらから言わせれば、

 そんな事も想定できないのかって呆れましたけど」

「結構、辛らつですね。」

「えぇ仮にも接続サポート部門ですから

 「サポート外OSだから出来ません・分かりません」でクレーム発展で

 「担当外のそれも立ち上げ中の他部署に対応を投げる」って

 バイザーとしてはNGだと思います。

 挙句に嫉妬と敵意ですよ? 情けないというか呆れるというか

 個人事業主の私から言わせていただくと

 系列子会社での契約にあぐらをかいているようにしか見えません」

「えと、それは」

「当然調べました、他のブースとうまくやるのには

 どこから派遣されているのか知るのも必要な事ですから

 程度も分かりますし、得意分野も分かりますから

 ちなみに、契約促進営業担当も、あちらの会社ですよね?

 尻拭い料くらい欲しいもんですが?」

「はぁ」

「と、言う事で正式な依頼は営業担当にお願いします。

 私からも報告はあげておきます。」

 それとどの辺りまでご一緒すれば良いんでしょうか?

 調べておかなければならない事はたくさん有るので

 まだ公式攻略本も出ておりませんし。」

「騎乗生物クエストが受けられる位までと私たちは考えています。

 世界の広さを感じていただけるようになれば

 十分その先は進んでいけるかと」

「その後の継続的なサポートは?」

「クエストの糸口くらいはサポート範囲かと思っています」

「わかりました

 個人的にはご依頼受けたまりましょう

 正式なものについては先ほどのとおりで。

 了承済みと言う旨は伝えていただいてかまいません

 こちらはゴーサイン待ちと言うことで報告いたします。」

「それから業務に関してもうひとつ、お願いが」

「何でしょうか?」

「出来れば「女性キャラ」でお願いしたいのです

 ボイスチャット機能はないですから問題ないと思うのですが」

「分かりました、私がやるときは女性キャラを使いましょう

 ただし、私が休みのときは男性キャラを使用という事でよろしいですか?

 ゲーマーであるという人選はしましたがこういう想定はしておらず、

 ロールプレイが出来き、姫キャラにならない人選はしておりませんので」

「「姫キャラ」って何でしょうか?」

「えと、その説明からですか?

 例えが古いですが、

 アッシー君、メッシー君、ミツグ君がいる女の子といえば

 分かるでしょうか?

 MMORPGの中では女性ユーザーは少ないので

 ちやほやされ易いのです。

 ゲームの中なので基本はミツグ君になるわけですが。

 女性キャラ=女性ユーザーではない事も

 MMORPGを渡り歩いているユーザーなら知っているとは思うのですが

 多分、その辺の免疫がない方も入ってくるのでしょう?

 意図的にやるユーザーも居ます、勝手に祭り上げられるユーザーも居ます

 中の人の性別限らずにです。

 ナビゲート役とはいえ、親切キャラですから誤解を招くでしょう。

 なので、女性キャラを安易に用いるのは

 悪手ではないかと思うわけです。」

「わかりました、その条件飲みましょう

 というか助かります、そういう知識が足らなくて

 コンパニオン的な発想で考えていたものですから」

「ふぅ~とりあえず女性キャラと男性キャラの二面でいいですね。」

「ちょっと呆れてます?」

「えぇ」


そんなこんなで草鞋何足はいてるのやらという状態になりました。


再確認すると

サポートするゲームタイトルは現状、

家庭用ゲーム機で日本でのみのサービス提供、

1年後は北米と西欧でのサービス提供予定しており

その時点で家庭用ゲーム機とPCでのサービス提供に拡大。

海外に関してはPCのみサービス提供。

言語別サーバにはしない予定である。

ユーザーイベントは禁止されていない。

スタートエリアごとに初期種族ボーナスがある。

転職は自由だが前職のボーナスは無い。

ただし、習得した武器のスキルは使用が許可されていれば

基本そのまま引き継がれる。

生産系の職業も別途扱いで一定のスキルまではすべての生産が可能。

専用の個室が与えられ、アイテム保管が出来る事。

個室の出口は最初はひとつ、入った所から出るしか選択できないが

クエストによって街のどのエリアにも出られるようになる。

ユーザーの比率については未公開。

この辺を勘案すると1年以内の業務なのかなと推測。


とりあえず、課題は

スタートエリアから騎乗生物取得クエストが受けられる街へ

安全に案内が出来るレベルを確保。

名声システムがあるので

複数あるスタートエリアでの実装済みクエストを基本はフルクリア。

すべての街の構造、NPCの配置の把握もあるか。

クエスト攻略はゲーム会社とゲーム雑誌が

どのくらい提携してくれるかによるか。


すでにやる気満々じゃないかって?


私が所属しているところはベンチャーだから

食い込みたいだろうと考えるわけですよ。

元々掛け持ち出向で、ブース運営が軌道に乗ったら戻る約束でしたしね。


とりあえずやらんと話にならないのでキャラメイク。

女性キャラは万人受けしやすい清楚な感じのキャラで

男性キャラは頼りがいの有りそうな巨躯の種族と保護者系のキャラで。

スタートエリアごとに種族ボーナスがあるのが

ちょっと厄介かな~とは思ったがさくさく作る。

こうしてナビゲーターキャラは産み落とされた。


そして

「弊社プロパイダ経由で契約していただき、

指定のサーバを選択していただくと冒険のナビゲート致します」

という付帯サービス付きでの営業も始まった。


そして私の冒険兼バスガイド生活が始まったのである。

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