戻ってきた日常⑪
雄ちゃんはそれからなんか
考え込んでるみたいで
あんまりしゃべらなかった。
変なの・・・って思いながら
思い当たるのは裕司くんのことだけ。
店員さんとしゃべったお客さん
ってだけだったでしょ?
ちょっとしゃべっただけだし。
べつに裕司くんとは
つき合ってたわけでもないし。
あたし、なんか悪いことした?
って、振り返ってみても
特に悪くないと思うんだけど・・・
んー、雄ちゃん、怒ってるわけではなさそう。
機嫌は悪くないみたい。
何をそんなに考え込んでるんだ?
ご飯が出来ても雄ちゃんってば上の空。
「雄ちゃん。おーい!起きてるかぁー?」
あたしが呼びかけて、
やっとご飯が出来てることに気付いたらしく
「え?あ!いただきます・・・」
って、もぐもぐ・・・
なんだか、機械的に食べてる・・・
やっぱり変・・・
かたんとお箸を置いて雄ちゃんはあたしに
「なあ・・・」
って、なんか言いかけて止まってしまった。
「どーしたの?」
「ん・・・俺さー、今まで一回もお前のこと
『あかね』って呼んだこと無かったよな・・・」
「そうだねぇ。」
「あかね・・・」
「なに?急に。」
「よし!決めた!俺今から、
お前のことあかねって名前で呼ぶから!」
何を突然言い出すかと思えば・・・
「いいけど、何で急に?」
「いいから!あかね!」
「なに?」
「・・・・・・」
呼んでみたかっただけらしい。
裕司くんの『あかね』に、対抗してんのね。
呼びながら、何だか変な感じ。
メッチャぎこちないの。
無理して呼ばなくても・・・
っておもうと笑ってしまった。
「何で笑うんだよー!」
「何でもないですー。」
それから雄ちゃんは、あたしのことを
名前で呼ぶようになった。
最初はお互い照れもあって変な感じだったけど
しばらくすると慣れてきた。
「なんであかねってよぼうと思ったの?」
あたしは雄ちゃんに聞いたことがある。
そしたら・・・
「もっと、お前の近くにいるために。」
って、よく分からない返事。
「分からなくていいから。男心は複雑なの!」
雄ちゃんは、そう言ってあたしのおでこをつついた。
「はいはい、さようですか。」
雄ちゃん、それってやきもちだったんですか?




