戻ってきた日常⑥
子どもたちを帰した後
雄ちゃんはすぐにやってきた。
「ごめんな。多分すっごい心配しただろ?」
やっぱり元気がない。
「どうしたの?昨日から変だよ。」
「実は・・・・」
雄ちゃんの話によると
昨日の放課後、川上先生が教室で泣いてる所に
たまたま雄ちゃんが通りがかった。
何があったのか聞いてみると、
学年会計が全く合わなくてどうしょうもなくなったらしい。
いくら考えてもどうしても会計が合わない。
一週間後に監査を控え、合わないではすまされない。
仕方ないから同じ学年の雄ちゃんは一緒に会計簿のチェックを
してみた。だけど、やったこと無い物がいくら考えてみても
当然の事ながらちんぷんかんぷん。
川上先生の落ち込みはすさまじく
雄ちゃんもどうしたらいいか分からず
他の先生に言うことも出来ず困ってるらしい。
「なんで、学年の先生に助けてもらわないの?」
「それは、川上がじぶんでやります!って言ってしまったから
あらそう?じゃ、お願いね、って言われたんだって。」
バカだ・・・
出来ないくせに助けてもらわないなんて・・・
じゃ、なんで雄ちゃんには助けてもらおうとすんのよ!
もー!!!
ちょっと腹立ったけど・・・
「雄ちゃん、その会計簿と通帳、領収書、請求書、納品書、
それから、学年通信今までのやつ音楽室に持ってきて。」
「どうすんだよ。」
「いいから、早く!」
「わ、分かった。」
「持ってきたぞ・・・」
あたしはまず収入の計算をして通帳と合わせた。
未納のままの子も確認して純粋に今ある分を確認。
あーあ、ここからすでに川上先生間違ってるじゃん。
ノートに収入金額と人数を書き込んでいく。
支出は、買った物の確認。
それを次々ノートに書き出していく。
支払った分は赤で書き込みをしていき
まだ払ってない分がいくらか分かるようにしていく。
さらに返金のある所を書き出して
お金の流れを見えやすくする。
通帳と照らし合わせてお金の出し入れの確認。
ここまでの所要時間約2時間。
帳簿に書き込みをしていき、付せんを付けて
収入と支出の合わないところは未納者があることを
分かるようにしていく。
やがて、通帳の残高と、
計算した会計簿の残高がぴったり合った。
「すげー!あってる・・・」
「どう?見直した?」
「もちろん。尊敬するぜ。」
「このバイト代高いよ!」
「まかせとけ!ほんとサンキュー」
雄ちゃんは心底ほっとしたように言ってくれた。
「さ、それ片づけて、もう帰ろう!今日は一緒に帰ってね。」
「了解!」
実は、あたしは前の学校では会計の責任者だった。
学校の会計なんて学年のとは比べられないくらい
めんどくさくてややこしい。
会計報告なんてやり慣れたら何でもないんだけど
なれない人はややこしくなってしまう。
雄ちゃん達が何時間かかかっても出来ないことでも
あたしには、大したことないことだった。
だから世の皆さん、分からないことは素直に聞くもんです。
「川上先生にも伝えておいた?会計簿出来たこと。」
車で帰りながらあたしが聞くと
「もちろん。びっくりしてたぜ。あした、お礼言っとけって
言っておいたから。」
「別にお礼なんて言ってもらわなくても・・・」
あたしは雄ちゃんのためにやっただけ。
「じゃ、俺からお礼な。」
信号待ちの間に雄ちゃんがCHU!
「これで終わり?」
あたしが冗談交じりに笑いながら言うと
「あわてるなって。ちゃんとお礼するからぁ」
甘えるように雄ちゃんが言った。
「さあ、どんなお礼してもらおっかなー」
あたしは、そう言って雄ちゃんを見つめた。




