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出会い⑧

のどかな昼休み。


音楽室から出ると


ろうかに6年生の男の子が2人。


「何してんの?」


あたしが尋ねると


「いや、別に・・・・・」


と、運動場を見ている。


その視線の先にはドッヂボールをしている


何人かの男の子と雄ちゃん先生。


「あれ、本気で投げて無いなあ


先生が本気で投げるとカーブかかるんや」


うらやましそうに運動場を見ながら言った。


「へーそうなんだ。一緒にやってきたらいいのに」


「いや、いいんや・・・」


そう言いながらもじっと見ている。


去年も雄ちゃん先生は5年生の担任だったから


この子達は去年ああやって遊んでもらってたんだな。


君たちも雄ちゃん先生が大好きなんだね。


ん?君たちも?いやんあたしったら・・・


一人で赤くなってしまった。





職員室に帰ってきた雄ちゃん先生に


「音楽室の前の廊下から


6年生が懐かしそうにドッヂボールしてたのを見てたよ」


って教えてあげると


雄ちゃん先生はニコッて笑って


「そうかー。かわいい奴ら。」






それから、そっと耳元で


「お前もな」


な、なんてことを・・・


あたしは一人真っ赤になってしまった。


それを見てまた笑って雄ちゃん先生は


教室へと去っていった。





そんなのどかな昼休みが終わって


5時間目


事件は起こった。





つまんないことでふざけてたはずが


日頃の鬱憤も手伝って殴り合いが始まった。


「やめなさい!」


あたしがいくら放そうとしても離れない。


そのうち殴り合ってたゲンコツが


あたしの顔に直撃!


その勢いで後ろに倒れてしまった。


また、場所が悪かった。


倒れた後ろは・・・机があった。


しかも頭の位置はちょうど角。


ウッ、いったぁ・・・・


授業始まってんのに・・・と思いながら


なんだか意識がもうろうと・・・





あたしが頭を打ったのを見て


みんな固まった。


「何やってんだ!」


騒ぎを聞きつけて雄ちゃん先生が飛んできた。


あたしを見るなり雄ちゃん先生は青ざめた。


そして


あたしは、首筋に血が流れているのに気付いた。


なんだか頭がクラクラしてきた。


「みんな、教室に戻って静かに座ってろ!」


そう言うなり、ワッと一瞬ざわめいたのを気にもせず


あたしを抱きかかえると


保健室へと運んでいった。





「こういうときは動かしちゃダメ!分かった?」


「そっか、先生呼んでくれば良かったんだ」


雄ちゃん先生と保健の先生の話を


小学生の会話かい!と思いながら聞いていた。


保健室であたしは傷の手当てを受け


「病院に行かないといけないね」


という保健の先生の言葉にギョッとした。


「もしかして縫うんですか?」


「そりゃそうでしょ、これだけ切れてたら」


「俺が連れて行く!ちょっと待ってろ!」


雄ちゃん先生は風のように教室へ。


あっという間に子どもたちを下校させ


校長先生に報告をし、


自分のクラスの子が怪我をさせてしまったからと


ちゃっかり病院搬送係を承認してもらい


「さあいくか!」


と保健室に戻ってきた。






「大丈夫か?たてるか?おぶっていこうか?」


心配そうに言う雄ちゃん先生と


ちょっぴり恥ずかしそうにしてるあたしを見ながら


保健の先生は


「若いっていいねえ、」


と笑ってた。





病院では8針縫われた。


恐くて恐くてどんどん固まってくあたしに


「ごめんな。替わってやれなくて。


俺もついてるからさ、手握っててやるから」


と雄ちゃん先生は心配そうに言う。


「だんなさんがついててくれたら


大丈夫でしょ」


と看護士さんがニコッとして言った。


あたしたちは思わず顔を見合わせた。


そして、


真っ赤になった。


それからは・・・・


なんか知らない間に診察は終わっていた。





すっかり暗くなった道を学校に帰りながら


雄ちゃん先生はポツリと言った。


「俺、責任取るからな」


「何の?」


雄ちゃん先生はハンドルを握って


黙って前を向いたまま。


麻酔が切れてきて、頭はズキズキしてくるし


顔はゲンコツが当たったとこ腫れてきたし


思考停止状態。


雄ちゃん先生の言葉なんて


このとき


全く意味が理解できなかった。


後で思えば信じられないけど・・・・


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