出会い⑦
昨日はびっくりした。
あれから学校は大騒ぎ。
噂はあっという間に校内を駆けめぐり
あたしと雄ちゃん先生は
校長室にお呼び出し。
「大丈夫だから おまえ しゃべるなよ」
雄ちゃん先生はあたしに言う。
「分かった・・・でも・・・」
「でもでも言うな!なんとかなっからっさ」
「まさかとは思うが、えらく噂になってるからね」
と校長先生はあたし達を見ていった。
「説明してもらえるかな?」
「はい!」
とにっこりほほえんで雄ちゃん先生は話し始めた。
「この先生の顔にまつげがくっついてたので
ふーーーーーって吹き飛ばしました!」
一瞬沈黙。
「こんなふうに・・・」
って雄ちゃん先生はあたしに近づいて
顔を近づけ、フーーって息を吹きかけた。
校長先生は びっくり。
で。
納得。
「今度からは教えてあげるだけにしておきなさい」
というと解放してくれた。
「な、どうにかなったろ?」
にこって笑う雄ちゃん先生
あたしはこの笑顔をまともに食らってよろけてしまった。
「大丈夫か?心配しなくてもいいのに」
心配のあまりよろけたのではありません。
あなたのせいです・・・・
「校長はあれでいいとして
あとはおちびちゃん達だな。」
雄ちゃん先生は
「ちょっとつきあえ!」
とあたしの手を引っ張っていく。
目指すは教室?
えーーーーーー。なんで?
手を引っ張ったまま教室につくと
勢いよくガラッと戸を開けた。
一斉に冷やかしの声が飛ぶ。
「うるせーーー!しずかにしろ!」
いつも優しい雄ちゃん先生の怒鳴り声に
一瞬で教室の空気が凍り付いた。
「ヤンクミ困らせるヤツは俺が許さねえからな!」
シーンとしてみんなあたし達を見てる。
しかしなんで雄ちゃん先生まで
ヤンクミなんだぁ?
「返事はーー?!聞こえねーぞ!」
「はい・・・」
「聞いてんのか?返事がちいせー!」
「はい!」
「よし!」
「なんかあったら、俺がどーにかするから、な?」
「・・・・・うん」
あーびっくりした。
雄ちゃん先生ってすごいな。
あたしにはあんな事できないや・・・
と、音楽室でほ・・・・っとしてたら
・・・・・ダダダダダダダっと足音がしたかと思うと
雄ちゃん先生がきた。
「一つ忘れ物してさぁ」
え、何を?
「おまえにお礼もらうの忘れてた」
「あ、さっきはありがとう」
「それだけじゃだーーめ!」
困ったなあ・・
お菓子は持ってないし
授業中にお茶入れに行けないし
・・・・・
困ってたら、
準備室に引っ張って行かれて
「今度は見えないだろ?」
って有無を言わせず・・・・・・
もう・・・・仕方ないなあ・・・・
でも・・・・・・・
こんなお礼ならいくらでも・・・・
目を閉じたまま甘ーい時間に身を任せた。
頭の隅に
「確か今 まだ3時間目の途中・・・」
って浮かんだけど
雄ちゃん先生に支配された時間は
逃げようがないくらい
強くって
甘くて
切なかった。
「さて、そろそろテスト済んだかな」
と雄ちゃん先生は教室に帰っていった。
「じゃあな!」
という一言と
とろけるような笑顔を残して。
なんだか仕事する気にならなくなるなあ
こんなの普通、あり得ないでしょ