秋の嵐⑫
「あんなこといって大丈夫?」
帰りの車の中であたしは心配になって
雄ちゃんに尋ねた。
「大丈夫だろ。きっと。あいつはざるだから。」
???
「何言われても適当に聞き流すってこと。」
そうなんだ・・・
「お前だったらめちゃくちゃ落ち込むんだろ?」
「もちろん。」
「だと思う。」
・・・・・
どこを見てそう思うんだろう・・・
「そんなことより、どうして俺に相談したんだ?
あんなに俺が関わるのを嫌がってたくせに。」
関わるのを嫌がってた訳じゃありません。
必要以上の親密さが嫌だったんです。
「仕事ですから。それに、太一がかわいそうだし」
「お?良の次は太一か?」
「何訳わからんこと言ってんの?」
とにかく、落ち着いて授業が出来るように
なってくれればいいけど・・・
「もう勤務時間は終わりだぞ。
学校のことはもう置いといて、
今日の晩飯どうする?」
・・・・・
「居酒屋に行きたい!」
あたしが言うと、雄ちゃんはえ?って顔した。
「おっさんみたいだな。」
あたしは居酒屋も行った事がない。
どんなメニューがあるのかも、
どんな飲み物があるのかも
正直知らない。
「居酒屋も行った事がないのか?
どんな学生生活送ってたんだ?」
雄ちゃんが本気でびっくりしてる。
そんなこといったって・・・
バイトに明け暮れ、遊ぶ時間なんて
全くなかった。
それも、家庭教師と塾の講師限定。
驚くことに、家庭教師のバイトにいたっては
父親の送迎付き。
「どんだけ箱入り娘なんだよ・・・」
あっけにとられる雄ちゃん。
「信じられねーくらいお嬢じゃん。」
「そうかなあ・・・」
・・・・・
「じゃ、居酒屋初体験ということで。」
話は決まったが、問題が一つ。
車をどうしよう・・・
「一回置きに戻ってから行くか。」
ということで電車に乗り換えて、
あたしんちの近所の居酒屋へ。
初めての居酒屋は結構新鮮で楽しかった。
とり軟骨なんて初めて食べたし。
冷酒がおいしいことも初めて知った。
「そんなに飲んで、大丈夫か?」
「これ甘いね。いくらでも飲めそう。」
このときは本気でそう思ってた。
ところがこれが大きな間違いだった。
お店を出て、あれれ?
なんか、グルグルする・・・




