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秋の嵐⑪

太一は思い出しても腹立つらしく


近くの机をけっ飛ばしながら言った。


「あいつさ、俺に


『学校に来なきゃいいのに』って言ったんだぜ。


普通先生が言うか?お前がくんな!て思ったよ。」


・・・・・・


太一が怒るのも無理はない。


それがほんとならそりゃひどすぎる。


一緒に悪口言うわけにもいかず


かといって太一を諭す必要も感じず


「じゃ、俺、行くわ。」


と、帰っていく太一の背中を黙って見送った。





雄ちゃんは気付いていた。


川上先生のクラスが荒れてることに。


「どうしたんだろうとは思ってたけど・・・」


放課後、気になって太一の話を職員室で雄ちゃんにした。


川上先生は、そう言えば最近職員室にあまりいない。


あたしは、5年生の教室へ。


「おい!どこ行くんだ?」


雄ちゃんが廊下まで追いかけてきた。


昨日の今日だから心配らしい。


「先生より太一ちゃん達が心配だから。」


あたしはそう言って、


「大丈夫。なんかあったら雄ちゃん、また助けてね。」


小さい声でそっとささやくと


一緒に行こうとする雄ちゃんを止めて


一人で川上先生の所へ行った。





川上先生は、暗くなりかけた教室で


テストの○つけをしていた。


「ちょっと話があるんだけどいい?」


あたしは、精一杯明るい声で話しかけた。


太一の悔しそうな顔がなけりゃ


絶対話しかけたりなんかしないのに・・・


って思いながら。


「なんですか?」


暗い声の川上先生。


「実は、最近この組の子落ち着いてないこと無い?


って気になってるんだけど。」


あたしが言うと、


「別に・・・・気にならないけど。」


という返事。


「太一くん、落ち着いて勉強してる?」


内心くそって思いながらも笑顔で聞き返す。


「あの子勉強する気なんか最初っからありませんよ。」


そんなことないだろーーー。


太一は計算は得意だし、頭の回転は速い。


音楽の時間も意欲的に考え、活動する。


「だって、授業中ずっとしゃべってるしふざけてるし。」


・・・・・・・・・・・


「私のクラスのことですから、ほっといてください。」


ダメだこれじゃ・・・


「困るようだったら、相談に乗るから言ってね。」


あたしは、やっとそれだけ言うと職員室へ戻った。





職員室では雄ちゃんが心配そうに待っていた。


「どうだった?」


あたしは、教室でのやり取りを簡単に話した。


「お前、昨日のやり取りの後なのに偉いなぁ。」


雄ちゃんが心配してたのはそこだったのね。


ま、確かに自分でもよくやれると思う。


でもね、悔しい顔した太一を見るのはつらいじゃん。





次の日、さりげなく雄ちゃんは3組を気にしていた。


3組は太一の組。


算数の時間、やっぱり何人かは席を立っていた。


「こら!授業中だろ!座れ!」


いきなりガラッとドアを開けて雄ちゃんが一喝した。


渋々みんな席に座る。


それを見て雄ちゃんは一言。


「太一。あかね先生が心配してたぞ。ちゃんと勉強しろよ。」





その日の昼休み。


5年3組の女の子が音楽室にやってきて


「先生知ってる?今日の算数の時間のことーーー」


と、にぎやかに報告しに来てくれた。


「なんかあったの?」


あたしが聞くと、


「雄ちゃん先生が来てね、遊んでた男子に


座れって。で、先生が心配してるって。」


って、あたしを指さして言う。


「え?あたし?」


「そうそう。昨日太一と何か話してたでしょ。


先生が雄ちゃん先生に言ってくれたんでしょ?」


「今日はずっと雄ちゃん先生教室見に来てたもん。」


そうだったのか。


「だから、今日は川上先生、あんまり怒らなかったよ。」


「いっつもよく怒るの?」


「すぐ怒ってる。あたしらは何で怒ってるか分かんないけど。」


そりゃあかんやろ。


ちゃんと伝えなきゃ。


何がいけないか伝わってないのはあかんでしょ。





雄ちゃんはそれからしばらく


ずっと隣の組を気にしてみていた。


そのせいで、何で太一達がこうなったかが


だんだん見えてきた。


「先生のやり方間違ってるぜ。」


雄ちゃんは川上先生にそう言った。


「先生は偉い人なんかじゃねーぞ。


押しつけたり命令したりそんなんが先生じゃねーんだぞ。


もっと、子どもの気持ちをきいてやんなきゃ。」





教室で先生と子どもがうまくいかないなんて


悲劇です。


雄ちゃんはそれを川上先生に伝えていた。


二人で話してることもいっぱいだったけど


不思議と目の前で見てても


やきもち妬くことはなかった。


先生としての雄ちゃんの気持ちはよく分かってたから。


先生が変われば子どももきっと変わる。


太一達が早く落ち着いて過ごせるといいなって


心底思った。



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