秋の嵐②
太鼓の音と共に威勢のいいかけ声が近づいてくる。
アナウンスが入って屋台の到着を知らせる。
「本物はやっぱりいいよなー!」
雄ちゃんは目をキラキラさせて
屋台練りを見つめている。
かけ声と共に屋台が捧げられ、空中に舞い上がる。
乗り子が元気良く太鼓を叩く。
屋台が揺れるのに合わせて
鮮やかな乗り子の衣装が揺れる。
「お、あれ、良だ。」
雄ちゃんが後ろの屋台を見て言った。
ここの祭りの乗り子の衣装はものすごくきれい。
着物の上に名前の刺繍が入ったたすきを掛ける。
宮入りした後、肩車をしてもらって
乗り子達は移動させてもらう。
その時初めて顔が見えた。
「かっこいいーー・・・」
あたしが感心してぽそっというと、
雄ちゃんが
「そりゃ無いぜ。俺の前で他の男見てかっこいいなんて!」
って、からかった。
「だって、あんな良初めて見たもん。」
昔から『馬子にも衣装』って言うもんね。
祭りの衣装は、ほんとにかっこいいと思う。
祭りの太鼓と人のざわめきは
テンションをどんどんあげていく。
次々と入ってくる屋台を見ているうちに
みんなが押し合いになってきた。
「きゃっ。」
後ろから押されてこけそうになった。
「あぶねー!」
雄ちゃんはあたしの腕を掴んで支えてくれた。
「人が多くなってきたな。そろそろ帰るか。」
腕章を返しに行き、神社から出ようとした。
人が多すぎて動けない・・・
「付いてこい!」
雄ちゃんは強行突破を開始。
人混みを上手にかき分けていく。
あたしは・・・
そんな芸当出来ますかいな・・・
あたしには無理だと悟った雄ちゃんは
黙ってあたしの手を取るとぐいぐい引っ張って
人混みを抜けていった。
うまい・・・
辺りはもう真っ暗になった。
神社のにぎわいはまだまだ続いている。
人のざわめきから少し離れたあぜ道を歩きながら
なんだかまだドキドキ。
一気に人混みを抜けたせいか、
ぎゅっとつながれた手のせいか・・・
気が付けば、雄ちゃんはまだあたしの手を
しっかり握ったまま・・・
「雄ちゃん、手・・・」
何も言わずに雄ちゃんは振り向きもせず
歩き続ける。なんで?
「きゃっ!」
辺りが暗いので、何かにけつまずいた。
こけるかと思ったら・・・
勢いよく雄ちゃんに引っ張り上げられ
そのまま、・・・雄ちゃん?ちょっと?
「誰か見てたらどうすんの?」
「暗くて誰も見えやしねーよ。」
ぎゅっと抱きしめたまま雄ちゃんが言う。
「どうしたの?」
「わかんねーけど・・・
お前を捕まえときたくなった。」
真っ暗な中で太鼓の音だけが響いている。
あたしのドキドキも大きくなった。
いろんな意味で。
誰か来たらどうすんのよ・・・ほんとに。
「帰ろっか・・・」
「うん。」
祭りの熱気は、何だかあたし達にも移ったみたい。
その日、あたし達はつないだ手を離さずに帰った。
誰が見てるか分からないのに・・・・




