音楽会の季節⑯
買い物を済ませておなべの用意もばっちり。
今日はトリ鍋。
お野菜と鶏肉などを準備して
コンロの上でぐつぐつ。
味噌仕立てにしてみた。
「いいにおいーーー。」
雄ちゃんが後ろからのぞきに来る。
「もう少しで出来るからね。」
振り向いてにこって笑うと
「その顔、見たかったんだよな・・・」
雄ちゃんがぽそっと言った。
なんか胸がキュンってなった。
「ごめんね・・・」
あたしはくるっと後ろを向くと
雄ちゃんを思いっきり抱きしめた。
いつしかいい具合に鍋も煮えた。
取り皿にとって雄ちゃんに渡す。
なんか、何でもないことなのかもしれないけど
とても幸せなひと時。
一緒に食べるのも久しぶりだなあ。
「おいしい?」
「すげーうまいよ。お前、きっといい嫁さんになるよ。」
「ありがとう。」
湯気をはさんであたしたちは笑顔になった。
「こんなん毎日食えたら幸せだろーな。」
「だったら、お嫁さんになってあげてもいいよ。」
半分冗談で言ったら、雄ちゃん真面目な顔して
「さっきの言葉、絶対忘れんなよ。」
う、ドキドキするではないか・・・・
深い意味はないのに・・・
お腹いっぱいになって
片づけも済んだ。
「そろそろ帰ろうかな・・・」
時計を見ながら言ったあたしに
「何言ってんの?」
って、雄ちゃんはあきれ顔。
「俺の話、聞いてねーのか?」
「え?あれ、冗談でしょ?」
「マジ。」
・・・・・・・・
「お前がすねてる間、
どんだけ心配したと思ってんだよ・・・
やっと取り戻したのに
そんなに簡単に帰せるかよ・・・」
「だけど・・・」
「だーーめ!」
そう言って雄ちゃんは
そっとあたしの唇を塞いだ。
そしてそのまましばらく
甘い時間を過ごしてしまったあたしは
今までの空白を埋めるまで
心も体も、雄ちゃんから
はなれられなくなってしまって
結局、雄ちゃんのプレゼントは
その夜、袖を通すことになったのだった。




