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音楽会の季節⑮

抱きしめられたままじっとしてると


じわっと涙がにじんできた。


寂しかった。


悲しかった。


何か置き去りにされた気分だった。


ただただ悲しかった。


・・・・・封印されてた感情が戻ってきた。


静かにただ涙を流してるあたしを


雄ちゃんはずっと抱きしめてくれた。


「ごめんな・・・つらい思いさせちまって・・・」





凍っていた心が一気に溶け始めたように


あたしは今まで抑えていたものが抑えきれなくなった。


雄ちゃんにぎゅっとしがみつくと


「あんな話、聞きたくなかったよ!」


って言うと、止まらなくなって


わーーーって泣き出してしまった。


「きっと聞きたくないだろうなと思って


気を付けてたんだけどな・・・ゴメン。」


子どもみたいにわーわー泣いてるあたしに


雄ちゃんは何度も


「ゴメンな・・・」


って繰りかえした。





かなり長いこと泣いてたけどやっと少し泣きやむことが出来た。


雄ちゃんが顔をのぞき込む。


「大丈夫か?」


って。


あたしはタオルを取りに行って顔を押さえた。


だって・・・


目は腫れて、鼻は真っ赤。


恥ずかしいという感覚が戻ってきたら


こんな顔見られたくないし・・・





顔を押さえてしまったあたしに雄ちゃんは


「どうしたんだよ。」


って、顔を見ようとする。


「恥ずかしいから、イヤ!」


あたしが逃げると


「何言ってんだよ。ちゃんと俺を見て!」


って、両腕をつかまえられた。


おそるおそる雄ちゃんの顔を見た。


ああ、ずいぶん久しぶり・・・


「頼むから、逃げないでくれ。な。」


真剣な顔して雄ちゃんが言う。


「ちゃんと向き合わなきゃ、誤解は解けねーだろ?」


誤解・・・か?・・・





「でも、普通、雄輔って呼ばないでしょ?・・・違う?」


「それはな、同じクラブで活動してる仲間だったから


みんな俺のことそう呼ぶの。」


「クラブ?」


「そう。バトミントン。」


「雄ちゃん、バトミントンもやってるの?」


「人数足りないときは、よくかり出される。」


「江藤先生も?」


「そう。」


・・・・・・知らなかった・・・


「でも、お前とつき合いだしてから行ってないけどな。」


聞いたこと無かったもんなぁ。


「さあ、仲直りしよーぜ。もう怒るなよ。」


そう言うと雄ちゃんは


ポケットからiいつかあたしが外してしまった指輪を出して


また、左手の薬指にはめてくれた。


「もう外すんじゃねーぞ。約束な。」


そう言って、優しくキスしてくれた。





「さあ、飯でも食いに行くか!」


元気よく雄ちゃんは言って、あたしを見た。


「それとも、何か作ってくれる?」


「うん。何が食べたい?」


「鍋!」


ちょっと季節的には早いけど・・・


「じゃ、買い物いくぞー!」


嬉しそうに車を飛ばして近所のお店に。


で、食料品売り場には目もくれず


雄ちゃんが行ったところは・・・


「さあ、好きなやつ選べよ。俺がプレゼントするからさ。」


え?パジャマ売り場?


びっくりしてるあたしに


雄ちゃんは耳元で囁いた。


「俺んちに帰って、ご飯食べたら着替えるんだぞ!」


「えー、パジャマ着て帰るの?」


いや、分かってて言ったんだけど・・・


「ボケッ。」


雄ちゃんはあたしにデコピンして


「帰してやんねー。さんざん待たされたからな。」


って笑った。



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